心の源流を探しに
※この記事は23年11月に書かれたものを12月現在に公開しています
みなかみは紅葉シーズン真っ盛り(11月時点)。
私が働く谷川岳では天気の良い日は多くの観光客や登山者で賑わいました。
そんな中、同じ町内なのかとびっくりするほど人気(ひとけ)が無く静かな「上ノ原」でリトリートを体験してきました。
ここは「入会の森」と呼ばれ毎年野焼きを行っており、育てたススキは茨城などの県外で茅葺き屋根に使われているそう。
ススキが生える場所は放っておけば段々と森林に変わっていく場所であり、人の手が入っているからこそ保たれている風景と言えます。
この日はまず初めに参加者の皆で輪になって座り、参加動機などを含めて自己紹介をしました。
そしてリトリートのガイドの柳沼さんから本日のテーマや、自然の感じ方などについてガイダンスを受けます。
その中で印象に残ったのが、「自分が疑問を持って森に入ると、自然の方からそっとヒントを教えてくれるかも」という言葉。
今まで何となくそういうことを思っていたことがあるのですが、この言葉を聞いてやっぱりな~分かるな~と納得する自分がいました。
美味しい湧き水を汲んだら、いよいよ散策スタート。
森の手入れの話などガイドを聞きながら、もともと薪炭林として使われ、今も人の手が程よく入った森の中を歩きます。
途中クロモジの香りを嗅いだり、葉の落ちる音に耳を傾けたり、五感を使って森を感じます。
その後は30分の個人タイム。
自分の好きな場所を見つけて、好きなように過ごします。
私が見つけたのはここ。
真っ赤なカエデの木の下に座りました。
目を閉じて、葉が落ちる音や秋の匂い、通り抜ける風を楽しみます。
仕事や趣味で山に行くことは多いけど、こうやって1人で自然の中で座って何もせずに時間を過ごすことは意外と無いことに気が付きます。
そして最近心の中でずっともやもやしていた考え事に向き合ってみる。
なんでみなかみに来たんだっけ?自分がやりたいことってなんだっけ?
風に揺られるカエデが「楽しんで~!」と言ってくれた気がしました。
あーすっきりした。
リトリートの最後は、湧き水とクロモジの枝で入れたクロモジ茶を飲みながら、参加者それぞれがテーマについて絵や言葉で自由に発表します。
普段の会話じゃ出てこないような、自分の深いところまでさらけ出して、それを優しく受け入れてもらえる、そんな場であるように感じました。
初対面の人も多い中、たった数時間でそこまで開放的になれるのは自然の力なのかもしれません。
お昼は参加者みんなで、みなかみ町の水の恵を活かしたおにぎり弁当を頂きました。
午後は「平出藤原湖畔公園」へ。
公園にある蛇口から湧き水を汲んで…
公園の蛇口から出る水といえば、変な味がして美味しくないイメージを持ってたのですが、ここのお水はちゃんと美味しい!
のでもちろんコーヒーも美味しい!!
この周辺の水道水は上州武尊山系の湧き水が水源となっているそうで、なんとも贅沢。さすが源流の町、みなかみです。
その後は宝川温泉へ。
ツアーに一緒に参加していた、スペイン生まれの女の子2人と一緒に入りました。
温泉の入り方って日本人には当たり前かもしれないけど、海外の方からすると色々難しいし、困惑するんだなと気づきました。
最初はちょっと緊張していたのですが、私のカタコト英語でも力になれたようで、とっても嬉しかったです。
川がすぐ横に流れる露天風呂に2人とも大興奮。
そんな二人を見ていて私は誇らしく、幸せな気持ちになりました。
見渡すと他にも海外のお客さんがたくさんいて、改めて温泉の魅力は国境を超えるんだなぁと実感しました。
みなかみ町の水にたっぷりお世話になった一日。
町の水や自然が豊かなことが、豊かな時間を過ごせるきっかけになっていることに感謝です。
そして日本に留まらず、海外の人から見ても魅力的に映る場所に住んでいることも誇らしく、また一段とみなかみのことが好きになった一日となりました。
参考:環境省 生物多様性保全上重要な里地里山
みなかみ町観光協会 MINAKAMI Oasis
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◎文・写真:ななえ(谷川岳インフォメーションセンター職員)
◎写真(一部):佐川航大