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二時間だけのバカンス

2020/07/19の虚行通信です。私達のエスケープ。

ケロロの正月回で、ケロロがお年玉を貰うために一月一日の時間を引き延ばす装置を作った回があった。

私はあの回が非常に大好きだが、今回は内容ではなく時間の話をしたい。
その話の中で、夏美が晩御飯の支度をしようとするとまだ午前の11時ごろ(時間の流れがゆっくりだから)だったという描写がある。

まあこれはケロロ達の仕業で本当に時間がゆっくりになっているわけなんだが、現実でも割とこういうことってあるな、と思った。
例えば寝過ぎた!と思って飛び起きたらまだ全然寝てていい時間だった。とか、反対にゲームしてたらあっという間に何時間も過ぎてた!!!みたいな事もある。

これらは人間の中に時間を明確に認識する機能が存在しないために起こる。
まあでも時間なんてものは人間が勝手に作った本来世界に存在しない概念だから当たり前の話ではあるのだが。

そして、これまたオタク的な話になってしまうのだが、キノの旅というライトノベルがある。これはラノベでは珍しく短編集のような構成になっていて、その中の一編にこんな話がある。

とある国の話なんだが、その国には時計があるが、時間がない。なので旅人であるキノが街の人に商店の開く時間を尋ねても「開店時間ってなんだい?」みたいな事になる。
その国の人たちは、私たちの祖先のように、太陽が沈んだら寝て、陽が出たら起きるみたいな生活リズムをもって生きている。

この話のオチは、その国の住人がしている時計はその人が生まれた時から現在までの”時間”をしめしているものだった。というものだ。
そしてキノに「みんな共通の、一日の流れを示す時間はないのか」みたいな事を聞かれたその国の住人はこんなことを言う。

だいたい、もしそんなのがあったら毎日大変じゃないかい?例えば、何時の何分に、決められた何かをやるというのかい?
その度にいちいち時計を見て、『急がなきゃ』とか、『間に合わない』とか、思うのかい?
———————————————キノの旅 ⅩⅤⅡ 第三話 「時計の国」より

で、なんでこんな話をしたかという話になるわけだが、
今日、部屋の時計が二時間遅れていること位に気づいたことに関連がある。

気づいたきっかけはiPhoneの時計と時間がずれていることだった。
そこで、ふと思いつきで便宜上”正しい”とされている時間を見ずに生活することにしてみた。
すると非常に心が楽になった。

さっきまで「あ~11時に起きてしまった~怠惰の極み~」とか言ってたのがいきなり9時である。
そこからダラダラと音楽を聴きながら物思いにふけったり、風のにおいを嗅いだり、日の光を浴びたりなどした。
結局時間というデバイスを使っていることに変わりはないのだが、なぜかそこに時間という概念がないように感じた。
ありていに言えばこころのつかえがとれたように思えた。
そして”正しくない時間”で12時まで過ごした。


前述のキノの旅では、時間という概念そのものが存在しない国の話をした。
確かに日が出たら起き、日が沈んだら寝床につくような時に囚われない生活は非常に理想的であると思うが、この現代社会を生きる私にはとても無理な話である。
私が時間を意識せずとも、他人は勝手に時を刻んで時間に沿って行動をしている。その歯車に巻き込まれている以上、時間という概念に目を背けることはできないのである。なんとも生きづらい世の中だ。

しかし、これまた前述したケロロ軍曹のエピソードのように、また今日の私のように遅れた時間の中を生活するというのは結構ありなんじゃないかな、と思った。
今日正しくない時間を過ごしたとき、私の中には確実に”余裕”があった。

正しくない時間で過ごした世界は普段とは比べ物にならないくらい充実していた。たった二時間遅れただけの世界はいつもとは違うものに見えた。
なぜかは分からない。
普段は聞き流しているような鳥のさえずりに耳を傾けたり、家の天井をぼんやり見たりというような無駄な(ある意味では必要な)時間を過ごすことは最近は少なくなっていた、そのようなことに合理性を見いだせなかったからだ。

私は今まで意味のあることに囚われすぎていたのかもしれない。
口ではてきとーだのふわふわだのと言っておきながら内心は意味を求めていた。
時間という正確なものを意識して生活するあまり無意識化にすべてを合理的に考えようと意識していたのだ。

だからといってこれから私の合理主義的な価値観がそうそう変わるとは思えないが、たまには無駄なことをやってみるのもよいのかもなと思った。
ただ、私の思う”意味のある事”は大抵の人間にとって”意味のない事”であるという事実にはいったん目を背ける。

とまあそんなこんなで本日の虚行通信は終わりにしたいと思う。また明日。


オマケ

Exactly.

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