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内心複雑な気持ちでもあるわけで…

CCM上山田ラウンド
ME1 13位(25出走 5分02秒差)

89年のスポーツカー世界選手権のこと。
あの年は前年覇者のジャガーのニューマシンが振るわず、最終戦のメキシコシティで前年型のマシンを投入した回があった。
ニューマシンはV6ツインターボのエンジンで、旧型はV12自然吸気のエンジン。
メキシコシティは標高が高く、海抜1300m近くありこの標高では自然吸気のエンジンは出力低下は免れない、ターボエンジン優位なコースなのに、それでも旧型の自然吸気エンジンを投入したジャガー陣営は、どれだけ不振が深刻な事態だったか想像がつくと思う。

基本的に機材のロールバックは、あまりポジティブな変更ではないのが定説だ。
ディスクブレーキ車が常識のシクロクロスにおいて、旧型のカンチブレーキ車へのロールバックは、かなり勇気のいることだった。
まして、今使ってる機材の改善にかなりのお金を注ぎ込んでいると、ロールバックはその投資を否定することになる。
それでも何か、今の不振の原因に機材差やなにかきっかけや違いを見つけられたらと思い、以前使っていたバイクを投入する事を決めて準備を進めた。

2年前にME1昇格を決めた時のバイク、東洋フレームのCX-Sだ。

ただ、ホイールだけは刷新して、ボントレガーのチューブラーを新たに用意をした。
今シーズンここまで、体はよく動いているのにペースの良さが感じられず、いろいろ試してみるも、なかなか上昇のきっかけが掴めず、出た6レースのうち3レースでノーポイント、80〜90%の順位が続き、もう考えられる今できることと言えば、機材を変えることだった。

▲チームメイトの西川さんの出走

CCM上山田ラウンドは初体験のコースだったが、チームメイトの西川さんから、比較的平坦で、乗車率の高いスピードコースと伺っていた。同じ日に猪苗代ジンギスクロスやJCXワールドネイチャープラザがあったが、高低差の激しいジンギスクロスは得意なコースではなかったし、JCX戦はここまで全くポイントが取れてないので、選択肢として上山田で気持ちを切り替えてリスタートしたい気持ちもあった。準備が手間取り、朝の試走はなし、午後の試走の後すぐのレースとなった。スタート時刻は13時。10時までに朝食を終え、1130にグランフォンドジェルを補給、12時までに500mlのスピードウォーターを飲み干した。

タイヤはFMBのスプリントチューブラー
砂コース向けの低いサイドノブが心許ないが、試走した感じとにかくバイクが軽く「いいな、問題ないな」というか印象だった。
ハイスピードなレースをイメージして、前1.75、後1.80の空気圧にセットした。

久しぶりに乗った東洋フレームは快適だったが、一旦コースを離れるととても不安定で、素面で跨ると乗りにくい自転車であった。

CCMは富士山ラウンドにも出走した都合、思ったよりも前のゼッケンがもらえ、2列目からのスタートとなった。
スタート前心拍は120前半と体調も悪くなく、心地よいレベルの緊張感。
ホイッスルが鳴ってのスタートは、前の人が酷いスタートで、それに付き合わされ、やや遅れてのポジション取りに。
そのままズルズルといつものように順位を下げてしまい、またいつものかと思ったものの、今日はパックについて行くのがそれほど難しく感じず、なんとか知り合いの野田さんのいるパックの後方にしがみつくことができた。

▲序盤から脱落せず、パックで走ることができた

しかし、今日は序盤から前から落ちてきたライバルを抜く走りができて、2周目、3周目と周回を重ねるごとに走りに自信が満ちてくるようだった。
直線は速くはなかったが、なんとか突き放されず粘れたし、低速のスラロームコーナーでは積極的に前のライバルに仕掛けられたし、高速コーナーでは、飛ぶような勢いで一気に前との差を詰めて行けるスピードがあった。

▲コース中盤の難しいターン、足をついて処理が良さそうだった

バイクが軽く、リズミカルにコーナーを抜けられる。
思うようなラインで右から左から、どこからも自在に攻めていける。
そして何より踏むと驚くほどバイクが前に出る、速い…まるで悪魔のような速さだ。
体もよく動いてくれていて、20分30分経っても、ファイトを失わず、前を追いかけられた。
レースが楽しいと久々に感じられた。

20番手くらいのスタートから少しづつ順位を上げていき、そして久々のフルラップヘ。

レース前にJCXのトップコンテンダーの鈴木来人君と話したが、彼にはラップされるだろうと思っていたから「抜かされる時は邪魔しないようにするよ!」と話したものの、今日は抜かされることなく最終ラップへ。
「よっしゃー!フルラップだ!」と思わず声にしてしまった。

レース中盤以降はスワコレーシングの山田選手の背中が見えるか見えないかなところで、なんとか追いつきたかったが、なかなか差が詰められず。
しかし後方の信州大学の井上選手とも差をキープしたまま、久しぶりの1時間フルラップ走り切りゴールとなった。

今まで、自転車競技は「結局は脚だろ?」と思っているところがあった。

だから機材は正しい調整と整備ができていれば、ある程度はなんとでもなると思っていたが、機材差は確実にあると今日のレースを通して痛感せざる得なかった。
要は速いバイクはあるし、遅いバイクもある。
その差はME1だと看破できない差だし、その差が隙になって、レースではそこにつけ込まれるということだ。
ロードバイクは散々いろんなバイクに試乗して、ある程度それが見えていたのだが、ライダースキルやレーススピードの速くないシクロクロスは、機材差はそれほどではないだろうと思っていたわけだが、今回のレースでその考えは改める必要がありそうだ。

レース後は久々に戦い抜いた実感があり、応援してくれていたチームメイトの西川さんとは思わずハグをして喜びあった。
ME1に上がって以降ずっと不振に喘いでいたが、ようやく長いトンネルを抜けた気持ちだった。

次戦は松伏をスキップして茨城シクロクロス城里ステージ。
東洋フレームのバイクはタイヤがハードパック向けしかない上に、城里は高低差の激しいコース、ディスクブレーキのメリットが勝るのもあって、従来のSvecluckでの参戦か迷うところではあるが…

(お写真は大森様、西川さんより)

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