まだ恋しい。相変わらずメソメソ
酔っ払うたび
メソメソしてる
おじさんを思い出しては
あれだけ泣きはらしたと思った涙は
いつの間にかチャージされていて
待ってましたとばかりに溢れ出る
写真を見るたびに
おじさんの感触が思い出される
顔の大きさや
毛の太さや
肉球の弾力や
もう触れることはできないんだと思ったら
もうだめ
とめどない涙は頬を伝う
この現象は決して
家の中だけに限ったことではなくて
実は日常のあらゆるところへ見え隠れするので
これまた困ったことでもある
例えば通勤途中の朝のバスの中とか
仕事中、ちょっとした隙間とか
帰り道の月明かりの下とか
外の世界の様々な箇所にさえ
ちょっとしたおじさんの気配が隠れている
それらはあたしにしか見えないもの
幻想の中に
揺蕩うそれらの残像は
普段は透明なのに
突然色を出し
あたしに襲いかかるもんだから
あたしはどうしようもなくなって
残像の色が消えゆく時を待つのだ
おじさんーーー
あんた
強烈すぎるよ
おじさんなのに
クロと白とピンクの鼻はないよ
ピンクは似合わないのに
ピンクの
鼻や
肉球はないよ
可愛さなんて
おじさんには似合わないのに
それなのに
あたしを愛さないでよ
あたしの顔をみて
喜ばないでよ
家中どこでもついてこないでよ
お風呂はいってても
外で待ってないでよ
朝方に腕枕を要求しないでよ
顔をひっつけてこないでよ
悲しみは果てしなくて
とめどなくて
永遠に続くようだ
この悲しみはいつまで続くのだろう