2021年度高校3年生終講の言葉
毎年の恒例のシリーズの高校3年生版です。昨年までのものもあるので、気に入った方はそちらもご覧になってください。
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今日で、現代文の授業は最後となります。昨年度から続く、災禍の影響で例年通りとはいかない部分もありましたが、最後は対面で授業を終えることができたのはまさに不幸中の幸いというものかもしれません。
長続きする災禍の影響で、人々の生活は大きく変化しました。飲食店を利用することを控え、外出を自粛し、密になる空間は避け、友人との交流も控えるという生活を送った人も多くなりました。一方で、少しでも以前の生活に近づけようとする意識もあります。例えば、密になるという理由で避けられがちだったカラオケも、様々な工夫によりある程度元の形に近づいています。
ところで、皆さんは2020年、2021年のカラオケランキング1位の曲は知っていますか?
皆さんの青春時代に流行った歌と言えなくはないので、知っている人も知らない人も思い出の1ページに刻むのは良いでしょう。まず2020年はOfficial髭男dismのpretenderです。そして、2021年は優里のドライフラワーでした。どちらも本心を隠し、他人の気持ちや状況に譲るという切ないラブソングという点では共通しています。
ただ本心を譲るという点は、どこか皆さんの世代と重なる部分があり、皆さんの青春時代の流行歌としてprentenderやドライフラワーが上がってきたのは何となく偶然の一致以上のものを感じます。
ゆとり世代という言葉は皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、その次の世代、皆さんの少し先輩にあたる世代の人々は何と呼ばれていたか知っていますか??
答えは、さとり世代です。様々なことをさとり、諦める。そんな若々しさのかけらもない世代と揶揄されたのです。そして皆さんはと言えば、さとりのその先の世代と言われ、さとり世代よりもさとる世代。要は、周りを見たり、世間を見たり、客観的なものばかりで判断して主観や自身の感情を軽視してしまう世代と言われています。
より正確には、本心を譲ってしまう世代と言えるかもしれません。まさに、pretenderな世代であり、ドライフラワーのように乾いた世代と言えなくもないのです。別に心がないわけでないのです。2020年に流行った曲にはLiSAの紅蓮花もありました。まさに感情の高まりを歌った曲であり、心がないわけではないのです。
しかし、あのような力強い曲ですら、強くなれる理由は誰かのためであって自分のためでは無いのです。やはり自分のことは譲ってしまうのです。
「譲る」「譲らない」という話で皆さんにとって最も身近な話題は受験ですが、皆さんにとって受験はどうだったでしょう。
すでに終わって安心した人も、これから向かう人もいると思います。
どちらの人も、今日の授業の終わりと共に始まりだという点では同じです。高校3年生の授業が終わるということは高校生の終わりです。
ここからは自分にとって何が必要で、何をすべきかを自らの意思で選択し、未来に突き進まなければなりません。
自分を譲るような生き方をすることは許されない世界と言えます。
いきなりそんなことはできないという人もいれば、そもそも自分を譲っていないという人もいると思います。
ところで志望校を決めるときに偏差値を見ないで受験校を決めたという人はいますか?
多かれ少なかれ見たと思います。むしろ、そちらの方が当たり前だと感じる人も多いと思います。
ただ偏差値を見てしまうと、努力する、その差を埋めてでもその学校に行きたいという気持ちよりも先に、上げられる偏差値はせいぜいこれくらいだからこのくらいの偏差値帯で行きたいところはと、実は視野を狭くされていたという事態が起きてしまうものです。まあ、これについてはよくも悪くもいったもので、必ずしも範囲を狭めているという点は悪いことではないのです。
ただ知らず知らずのうちに、自分の気持ちが作り上げられてしまうこともあるという事実が存在することは知っておいて良いでしょう。
要は、皆さんの世代はさとりのその先の世代と揶揄されていると紹介しましたが、実態を言えば世代の問題ではなくむしろ時代の問題なのです。それが正しいと信じたい、自信を得るために客観的なものに異常なまでにすがってしまう時代なのです。そしてその中には自分の主張のために捻じ曲げたり、逆に自分の考えを強引に捻じ曲げたりする歪な状況が顕在しているのです。
そのような時代に生きているという話をしてしまうと、もっと昔に生まれたかったと思う人もいるかもしれません。実際、バブル崩壊後の世代である私たちの世代もバブル前に生まれたかったという人が居たので、十年以上この発想はあり続けているのでしょう。だからこそせめてそのような時代でも自分を大切に、人を大切にして生きる術のヒントを最後に結として伝えたいと思います。
自分を大切にするとは何でしょう。
正直、ヒントを伝えたいと言ったもののとても難しい問題です。
ただ最近の流行歌からヒントを得るならば、きっと好きになるという気持ちに素直でいることなのかもしれません。
pretenderもドライフラワーも恋の歌だし、紅蓮花も人のために強くなる歌と考えるならば、人を好きになる気持ちは人に譲る時代でも消えない気持ちということになります。それに正直になれないのがpretenderやドライフラワーならばそれとは正反対の行動すれば良いということになります。
3年間皆さんの学年を持って一つ言えるのは、綺麗に収まり過ぎて無駄に規範意識が強すぎる学年だということです。ふざけている生徒ですら、自分がふざけているという自覚があり、簡単に自省できてしまう人が多いのもその特徴が顕著に表れているように思えます。
時代に流されず、自分の気持ちに素直になり、人を大切にする。皆さんに足りない部分は自分の気持ちに素直になること、そしてそれを表現すること、そして、ドライフラワーの花言葉の「永遠の愛」のように永遠(とわ)に揺るぎないものへと変えていくことです。最後の冬休みの宿題を皆さんへの門出の言葉としたいと思います。
高校1年生から健やかに成長していく皆さんの姿を最後まで見届けることができて本当に嬉しく感じます。それでは高校3年生の授業を終わりたいと思います。1年間、いえ皆さんの学年については3年間お疲れ様でした。素敵な未来へと突き進んでいってください。
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