世界遺産[「~国」「~朝」…編(1)]
世界遺産について調べていると、「~国」「~朝」といったワードがたくさん出てきます。学校の教科書に載っているものもありますが、これまで聞いたこともないような、世界遺産の勉強をして初めて出会うようなものも数多くあります。そうしたものをあわせて取り上げたいと思います。今回は、アジアの「~国」「~朝」です。
なお、可能な限り国名などの後ろに成立年・滅亡年や簡単な解説を載せておりますが、これらには諸説あるものも多く、いまだ確定していないものもありますので、あくまでも参考程度にご覧いただければと思います。
①東アジア
・「殷王朝」(紀元前16世紀頃 - 前1046年)
→考古学的に実在が確認されている中国大陸最古の王朝
→『殷墟』(中華人民共和国)
・「宋」(960年 - 1279年)
→趙匡胤が五代最後の後周から禅譲を受けて建国した中国の王朝
→『泉州:宋・元時代の中国における世界の中心地』(中華人民共和国)
・「南宋」(1127年 - 1279年)
→北宋が女真族の金に華北を奪われた後、南遷して淮河以南の地に再興した王朝
→『杭州にある西湖の文化的景観』(中華人民共和国)
・「元」(1271年 - 1368年)
→中国本土とモンゴル高原を中心としたモンゴル民族による王朝
→『元の上都遺跡』(中華人民共和国)、『泉州:宋・元時代の中国における世界の中心地』(中華人民共和国)
・「明」(1368年 - 1644年)
→朱元璋が元を北へ逐って建国した王朝
→『明・清時代の皇帝陵墓』(中華人民共和国)
・「清」(1636年 - 1912年)
→満洲に建国され、漢民族を征圧し中国本土とモンゴル高原を支配した最後の統一王朝
→『万里の長城』(中華人民共和国)(⇒清は北方民族の一派である女真族の王朝であったため、長城を整備することなく放置した)、『明・清時代の皇帝陵墓』(中華人民共和国)
・「新羅〔シルラ〕」( 紀元前57年 - 後935年)
→古代の朝鮮半島南東部にあった国家
→『慶州〔キョンジュ〕の歴史地区』(大韓民国)
・「高句麗」(紀元前1世紀頃? - 後668年)
→現在の大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国北部から満洲の南部にかけての地域に存在した国家
→『古代高句麗王国の都城と古墳群」(中華人民共和国)、『 高句麗古墳群』(北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国))
・「百済王朝」(4世紀前半? - 660年)
→古代の朝鮮半島西部、および南西部にあった王朝
→『百済〔ペクチェ〕の歴史地区』(大韓民国)
・「高麗王朝」(918年 - 1392年)
→王建(太祖)が建国し、朝鮮半島の統一を成し遂げた後、李氏朝鮮建国まで続いた王朝
→『開城〔ケソン〕歴史遺跡地区』(北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国))
・「李氏朝鮮王朝」(1392年 - 1897年)
→朝鮮半島に存在した王朝で、高麗の次の王朝にあたり、朝鮮における最後の統一王朝
→『朝鮮王朝の王墓群』(大韓民国)
②東南アジア
・「ドヴァラヴァティ王国」(6世紀頃 - 11世紀頃)
→モン族による王国
→『シ・テープの古代都市と関連するドヴァラヴァティ王国の遺跡群』(タイ王国)
・「スコータイ朝」(1238年 - 1583年)
→現在のタイに存在したタイ族最初の王朝
→『スコータイと周辺の歴史地区』(タイ王国)
・「アユタヤ朝」(1351年 - 1767年)
→タイの中部アユタヤを中心に展開したタイ族による王朝
→『アユタヤの歴史都市』(タイ王国)
・「チャンパー王国」(192年 - 1832年)
→中部ベトナムにあった王国
→『ミーソン聖域』(ベトナム社会主義共和国)
・「胡朝〔こちょう〕」(1400年 - 1407年)
→ベトナムの王朝
→『胡朝の要塞』(ベトナム社会主義共和国)
・「グエン朝」(1802年 - 1945年)
→ベトナム最後の王朝
→『フエの歴史的建造物群』(ベトナム社会主義共和国)
・「ランサン王国」(1354年 - 1709年)
→メコン川中流域に展開した王朝
→『古都ルアン・パバン』(ラオス人民民主共和国)
・「真臘〔しんろう〕(チャンラ王国)」(550年 - 802年)
→クメール人の王国
→『サンボー・プレイ・クックの寺院地区:古代イシャナプラの考古遺跡』 (カンボジア王国)
・「アンコール王朝」(802年 - 1431年)
→現在のカンボジアのもととなった国で真臘の流れを受け継ぐクメール人の王国
→『アンコールの遺跡群』(カンボジア王国)
・「パガン朝」(1044年 - 1314年)
→ミャンマーで最初の統一王朝
→『バガン』(ミャンマー連邦共和国)
・「マラッカ王国」(1402年 - 1511年)
→マレー半島南岸に栄えたマレー系イスラム国家
→『メラカとジョージ・タウン:マラッカ海峡の歴史都市』(マレーシア)
・「シャイレンドラ朝」(752年? - 832年?)
→ジャワ島中部に建てられた王朝
→『ボロブドゥールの仏教寺院群』(インドネシア共和国)
③南アジア
・「パッラヴァ朝」(275年 - 897年)
→カーンチープラムを首都として南インド東海岸地方及びセイロン島の一部を支配したタミル系王朝
→『マハーバリプラムの建築と彫刻群』(インド)
・「グプタ朝」(320年 - 550年)
→マウリア朝以来の北インドの統一王朝
→『アジャンターの石窟寺院群』(インド)
・「東ガンガ朝」(5世紀末 - 1434年)
→東インドのオリッサ地方に存在したヒンドゥー王朝
→『コナーラクのスーリヤ寺院 』(インド)
・「チャールキヤ朝」(6世紀 - 13世紀)
→インドのデカン地方、南インドを支配したヒンドゥー王朝
→『パッタダカルの寺院群』(インド)
・「チャウハーン朝」(6世紀中頃 - 1195年頃)
→北インドのラジャスタン地方に存在したヒンドゥー王朝
→『チャンパネール-パーヴァガドゥ遺跡公園』(インド)
・「チャンデーラ朝」(9世紀初頭 - 14世紀初頭)
→インド中部のブンデールカンド地方に存在したヒンドゥー王朝
→『カジュラーホの寺院群』(インド)
・「チョーラ朝」(846年頃 - 1279年)
→南インドを支配したタミル系のヒンドゥー王朝
→『大チョーラ朝寺院群』(インド)
・「アホム王朝」(1226年 - 1826年)
→東インドのアッサム地方に存在したヒンドゥー王朝
→『モイダム:アホム王朝の墳丘墓・埋葬システム』(インド)
・「ヴィジャヤナガル王国」(1336年 - 1649年)
→南インドを支配したヒンドゥー国家
→『ハンピの都市遺跡 』(インド)
・「クシャーン朝」( 1世紀頃? - 375年)
→中央アジアから北インドにかけて栄えたイラン系の王朝
→『タフティ・バヒーの仏教遺跡とサリ・バロールの歴史的都市』(パキスタン・イスラム共和国)
・「パーラ朝」(750年 - 1174年)
→北東インドを支配した仏教王朝
→『パハルプールの仏教遺跡』(バングラデシュ人民共和国)
・「シンハラ王国」(紀元前5世紀頃 - 後1815年)
→2,000年以上続いたスリランカの王国
→『シーギリヤの古代都市』(スリランカ民主社会主義共和国)、『聖地キャンディ』(スリランカ民主社会主義共和国)
・「ゴール朝」(1117年 - 1215年)
→現在のアフガニスタンに興り、北インドに侵攻してインドにおけるムスリムの最初の安定支配を築いたイスラム王朝
→『ジャームのミナレットと考古遺跡群』(アフガニスタン・イスラム共和国)
・「エラム王国」(紀元前3200年頃 - 前539年)
→古代オリエントで栄えた国家
→『古代都市チョガー・ザンビール』(イラン・イスラム共和国)
・「アケメネス朝ペルシア」(紀元前550年 - 前330年)
→古代オリエントのペルシアに存在した王朝
→『ペルシアの隊商宿』(イラン・イスラム共和国)
・「ササン朝ペルシア」(224年 - 651年)
→イラン高原・メソポタミアなどを支配した王朝
→『シューシュタルの歴史的水利システム』(イラン・イスラム共和国)、『ファールス地方にあるササン朝の考古学的景観』(イラン・イスラム共和国)
・「セルジューク朝」(1038年 - 1194年)
→現在のイラン、イラク、トルクメニスタンを中心に存在したイスラム王朝
→『イスファハーンのマスジェデ・ジャーメ(金曜モスク)』(イラン・イスラム共和国)
・「イル・ハン国」(1258年 - 1353年)
→現在のイランを中心に、アムダリヤ川からイラク、アナトリア東部までを支配したモンゴル帝国のハン国の1つ
→『ソルターニーイェ』(イラン・イスラム共和国)
・「サファヴィー朝」(1501年 - 1736年)
→現在のイランを中心とした地域を支配したイスラム王朝
→『イスファハーンのイマーム広場』(イラン・イスラム共和国)
・「カージャール朝」(1785年 - 1925年)
→現在のイランを中心に支配したトゥルクマーン系ガージャール部族連合によるイスラム王朝
→『ゴレスタン宮殿』(イラン・イスラム共和国)
・「パフレヴィー朝」(1925年 - 1979年)
→イラン最後の王朝
→『イラン縦貫鉄道』(イラン・イスラム共和国)
④中央アジア
・「パルティア王国」(紀元前247年頃? - 後224年)
→シリア王国内のペルシア系遊牧民が独立して建国した王国
→『ニサのパルティア王国の要塞』(トルクメニスタン)
・「セルジューク朝」(1038年 - 1194年)(再掲)
→現在のイラン、イラク、トルクメニスタンを中心に存在したイスラム王朝
→『国立歴史文化公園“メルヴ”』(トルクメニスタン)
・「ホラズム朝」(1077年 - 1231年)
→アム川下流域ホラズムの地方政権として起こり、モンゴル帝国によって滅ぼされるまでに中央アジアからイラン高原に至る広大な領域支配を達成したイスラム王朝
→『クフナ-ウルゲンチ』(トルクメニスタン)
・「サーマーン朝 」(873年 - 999年)
→中央アジア西南部とイラン東部を支配したイラン系のイスラム王朝
→『ブハラの歴史地区』(ウズベキスタン共和国)
・「ヒヴァ・ハン国」(1512年 - 1920年)
→アムダリヤの下流及び中流地域に栄えたテュルク系イスラム王朝
→『ヒヴァのイチャン・カラ』(ウズベキスタン共和国)
⑤西アジア
・「古代フリギア王国」(紀元前12世紀頃 - 前7世紀頃)
→アナトリア中西部の王国
→『ゴルディオン』(トルコ共和国)
・「アッタロス朝(ペルガモン王国)」(紀元前282年 - 前133年)
→アナトリア西部に存在した王国
→『ペルガモンとその周辺:様々な時代からなる文化的景観』(トルコ共和国)、『ヒエラポリスとパムッカレ』(トルコ共和国)
・「コンマゲネ王国」(紀元前162年 - 後72年)
→現在のトルコ南東部、シリアとの国境沿いの古代アルメニアの王国
→『ネムルト・ダーの巨大墳墓』(トルコ共和国)
・「中世アルメニア王国バグラティド朝」(885年 – 1045年)
→バグラトゥニ家のアショト1世によって建設された国家
→『アニの考古遺跡』(トルコ共和国)
・「ルーム・セルジューク朝」(1077年 - 1308年)
→セルジューク朝からアナトリアに移った一派が興したイスラム王朝
→『ディヴリーイの大モスクと病院』(トルコ共和国)
・「オスマン帝国」(1299年 - 1922年)
→アナトリアからバルカン半島、地中海に進出し、中東、東欧、北アフリカを支配下に置いたイスラムの大帝国
→『ブルサとジュマルクズク:オスマン帝国発祥の地』(トルコ共和国)、『イスタンブルの歴史地区』(トルコ共和国)、『エルビル城砦』(イラク共和国)(⇒オスマン帝国時代に整備された)
・「シルヴァン朝」(861年 - 1538年)
→カフカス東部に位置するスンニ派イスラム王朝
→『シルヴァンシャー宮殿と乙女の塔のある城壁都市バクー』(アゼルバイジャン共和国)
・「アッシリア帝国」(紀元前1975 - 前609)
→現在のイラク北部を占める地域に興った王国
→『アッシュル(カラット・シェルカット)』(イラク共和国)、『エルビル城砦』(イラク共和国)
・「新バビロニア」(紀元前626年 - 前539年)
→メソポタミア南部のバビロニアを中心に建国され、アケメネス朝ペルシアに征服されるまで、地中海沿岸地域に至る広大な領土を支配した帝国
→『バビロン』(イラク共和国)
・「パルティア王国」(紀元前247年頃? - 後224年)(再掲)
→イラン系遊牧民がセレウコス朝シリアから自立し、イラン高原に建国した国家
→『円形都市ハトラ』(イラク共和国)
・「ウマイヤ朝」(661年 - 750年)
→イスラム史上最初の世襲イスラム王朝
→『アンジャル』(レバノン共和国)、『ダマスカスの旧市街』(シリア・アラブ共和国)
・「アッバース朝」(750年 - 1258年)
→中東地域を支配したウマイヤ朝に代わり成立したイスラム王朝
→『古代都市サーマッラー』(イラク共和国)
・「古代サバ王国」(紀元前800年頃 - 後275年)
→アラビア半島南部に存在した国家
→『マリブ:古代サバ王国の代表的遺跡群』(イエメン共和国)
・「ハドラマウト王国」(紀元前8世紀 - 後3世紀)
→シバームを王都とするハドラミ人の王国
→『城壁都市シバーム』(イエメン共和国)
・「ナバテア王国」(紀元前168年 – 後106年)
→ペトラを中心に栄えたナバテア人の王国
→『隊商都市ペトラ』(ヨルダン・ハシェミット王国)
・「ローマ帝国アラビア属州」(106年 - 7世紀)
→イスラム教徒に支配されるまで存続したローマ帝国の属州
→『隊商都市ボスラ』(シリア・アラブ共和国)
・「ホルムズ王国」(10世紀 - 17世紀)
→ペルシャ湾に存在した王国
→『カルハットの古代都市』(オマーン国)
・「マムルーク朝」(1250年 - 1517年)
→エジプトを中心にシリア、ヒジャーズまでを支配したスンニ派のイスラム王朝
→『ヘブロン:アル・ハリールの旧市街』(パレスチナ国)
今回は以上ですが、日本の遺産の中にも、『琉球王国のグスク及び関連遺産群』がありますね。
次回は、アジア以外の地域の「~国」「~朝」を取り上げたいと思います。