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『OD!i』第33話「ゆっくりと歩く」
「いただきます」と「ごちそうさま」
そして、
自習室にて、
五時間目の、
始まりで御座居ます。
………………
…………
……
早々、雁野先生からお言葉。
「これはおまえ達の一生の財産になると信じられるから、先生として伝えておく。先ずは基礎体力を築け」
基礎体力……漠然としたイメージしか構築できません……、
もっと……具体的な指針を……。
「一人称はお尋ねします。雁野先生はその為に、何が現状の最善とお思いでしょうか?」
杏莉子……有難う。
無駄にせず、傾聴で御座居ます。
「歌坂、有難う。おまえには提案してもらいたいぐらいだがな。オイラが今、より善いと思っているのは、マラニックだ」
マラニック? ……初めて聴くお言葉……。
「先生ちゃん、なんだそれ?」
ご発言の後、恵喜烏帽子氏は雁野先生へお辞儀をしてみえました。
「マラソンとピクニックを足した造語だそうだ。例えば、独りでマラソンの練習をしろ、と言われたらしんどいだろうけどな。マラニックは娯楽性がくっついてくる。ピクニックを前提としてもいいんだ。歩いても走ってもいい。リュックに弁当なんかをつめてな? この町、弥那町(みなまち)にある観光名所なんかを目的地にしてもいい。帰るのがしんどい奴が出たら、交通機関で帰ってくればいい。先に交通機関で目的地へ行き、遊んで学んでから学園まで帰って来てもいいぞ。みんなでマラニック。学園の授業時間内に行えば、色々と都合もいい。天休も神咲も確実に参加できるしな。全身運動を長く続けられる運動能力、全身持久力、と怪我を負うリスクを減らす為に、関節の可動域を増やす柔軟性、ふたつの基礎を磐石にしてほしい。以上です。歌坂、なにかあるかな?」
雁野先生は、お言葉に抑揚をつけてそう仰いました。
「概ね納得はいたしました。しかし、ひとつの疑問。雁野先生は各自の持ち場の筋力トレーニングは必要ないというお考えでしょうか?」
おそらく雁野先生には想定内の質問でしたのでしょう。
流れる様に、
「筋力トレーニングが必要ないとは言わない。その尋ね方から察するに、歌坂はわかっているが、そのスポーツ、そのポジションによって、必要な筋肉は変わってくる。オイラが型を教えるんじゃなく。おまえ達が必要だと判断した時に、自発的に型を学んでくれればいいと思っているんだ」
「よく解りました。雁野先生、有難う御座居ます。それでは、マラニックに必要な物と、目的地、交通機関等の検討に入らせて頂いても宜しいでしょうか?」
打てば響く杏莉子。
まだ……遠いね。
うつむくよりはあおいで、
ニコぱっ☆
「いーなー歌坂。やりやすいわー。観光名所のガイドや地図なんかはあるぞ。二日前までに頼めば、学園が弁当も用意してくれる。絶対にきるくは持って行ってくれ。オイラは見てるが、おまえ達をまず信じて、極力引っ込んでおく事にする。気を付けてな? あとは少しずつみんなで詰めていこう。一生勉強だ。オイラにも、教えてくれよ」
ご指導の、
結局は、
自分で学習する力を持ってもらう事なのでしょう。
だからこその、
「自習室」。
皆様で、六時間目終了まで、
方針についてディスカッション。
マラニックは、
来週の月曜日から開始。
雁野先生は、
川瀬先生に、
頭を下げられてしまいまして、
「Eのきるくもご用意しておきます」
との事で御座居ます。
………………
…………
……
皆様で協力し、
目指すは、およそ10キロ先。
総合公園【世陽緑地(ぜひりょくち)】へと、
相成りました。
あるく? はしる? やすむ?
じぶんをしんじてけつだんする。
ゆっくりとあるく。