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『開幕前夜』第13話「驚くべき恩寵」
27(ふたなな)、
14106(ひとよんひとまるろく)の、
お星様に、
ねがいのことばを、
ささげるきもちを、
たたれた日。
14106は泣きました。
そのつぎの日のこと。
27はとつぜん、14106の敬愛する、
怪物王のおきさき様にえらばれました。
14106は、
ふたたびうれしすぎてかなしすぎて泣きました。
お星様がかがやくのはあたりまえの事。
怪物王はやはりおめがたかい。
14106は鼻がたかい。
たかすぎて、ぽっきりおれそうなくらい。
27はお城へと。
しょうがないよ。
お星様のそばにいられるのはお星様だけなんだから。
お医者様とカレーライスが教えて下さった。
『たるをしること』みのほど。
それはけっして悪い意味なんかじゃない。
でもね?
14106の、ねがいおもいはこう、
………………
…………
……
14106も27がいてくれたらお星様みたいに、
かがやけるんだ。
だから……、
………………
…………
……
でもね?
かがやくとくらくもなるんだよね。
怪物王はもっともっとお辛いにちがいないんだ。
だから、しょうがないよ。
………………
…………
……
奴隷街に怪物王がやってきました。
あいかわらずお美しい。きっとみこころもそうにちがいない。
うん。
「じゃあもう行くね? 14106、よくしてくれてありがとう。でもなんで27なんかが……?」
………………
…………
……
14106、おこるよ? かなしいよ?
14106は、えいえんを27にささげたのに……。
……でも、……これだけだった。
………………
…………
……
「それは、ふたななはお星様だからだよ♪」
怪物王が27のおそばに。
そして、14106に仰った。
「奴隷。連れ添いご苦労だった。消えてよい」
14106はできるだけうやうやしく。
「はっ」
「低い場所はやはり臭くて醜いな。どうだ奴隷。高き城へと連れて行ってやろうか?」
でも……それでも、14106は言いました。
「14106はマルをうえがわからかくくせがあるんです。でもしたがわからかいても、マルはマルですよね? ですから14106はやめておきます。怪物王、みこころ、ありがとうございます」
なんとなく怪物王はゆれて。
お星様とお星様は奴隷街をさっていきました。
………………
…………
……
それから、しばらくの季節が経ち、
14106は少し賢くなれました。
それは……、
やはり敬愛する怪物王が開発された、
『EYESYSTEM(アイシステム)』のお陰なのです。
14106はEYESYSTEMに選ばれ運ばれて。
現在は喫茶店【どんぐりの家】を任されています。
お席は2席だけ、
それが怪物王のお達し。
「奴隷。一期一会。写す鏡を大切……にな」
14106は何故かそのお言葉に、
果てしない怪物王の悲哀を感じ、
生まれて初めて祈りを覚えました。
神様……、
どうかふたつの敬いと愛するお星様に、
必ずの幸せを。
なせばなる、
なさねばならぬなにごとも、
ならぬはひとのなさぬなりけり。