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kao1248
『開幕前夜』第7話「時をかける少女」
一人称は、映画鑑賞を終えて館内を出た様に、視える。
時は1983年7月の中頃。
一人称は、
三人称の探索を一旦打ち切って静養にまわった様に、視える。
それは功を奏した様に、視える。
良質の作品との邂逅。
スクリーンで再び。
一人称の原点と原典。
この街にはどうやらもう用はなく、視える。
三人称の情報なし。
美術の鑑賞。
一人称の本来あるべき御許へ帰るべきと、
判断した一人称。
三人称の往来多き交差点。
左腕に柘榴石。
右腕に紫水晶。
香るラベンダー・アングスティフォリア。
一人称は意に介さず唱えた様に、視える。
「“式極可変(しぎめかへん)”脳内構成物質、“乙”から“時間跳躍”、“イマジン”開始」
一人称はその場から消えた様に、視える。
三人称は、誰も気にも留めずに。
………………
…………
……
帰還。
時刻確認。
時をさかのぼり4月5日14:06分。
“跳躍”先も悪くない精度に、視える。
一人称は町のビジネスホテルに泊まり。
明日からの入寮の準備。
ホテルロビーに流れる「Someday My Prince Will Come」、
一人称はもう、
その様な夢見る頃合でないかもしれないと……、
少し苦笑して、視える。
笑うのは久方振りに、視える。
それでもいつかを、
信じている。
二人称と一人称が、手を結ぶ日を。
………………
…………
……
一人称は東方、
今まさに季節は春。
世界は不思議に満ち満ちて。
偉大なるキャロル氏へ、礼。
そう、一人称の固有、
「✕✕✕✕✕」。
ときはだれもまってはくれない。
びょうどうにいきて、
びょうどうにしぬ。