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『OD!i』第69話「精神への旅路④」
雁野先生がいなくなった店内であたしがしばらく物思う頃に、
それは訪れました。
……さ……げ……ささ……捧華…達者……か……
やっと……、ようやく……!
……フルドライヴ!?……もう大丈夫なの?……
……いや……もう数日前に……調っておったのだがな……
……?……なんで?……どうして声掛けてくれなかったの?……
……あたしの所為?……
……む……それは……気にするな……
……?……わ……分かった。……
……だがこれだけは伝えておこう……
ど……、どっちなのフルドライヴ……。
……捧華は何故……
……フルドライヴの名と合言葉を……考えてくれなかったのだ……
ぁ……? よ……要するに、あたしの所為……って事……だよね……?
そうしてあたし達は再会したんです。
………………
…………
……
喫茶店でフルドライヴと午後二時が回る頃まで会話し、
あたしには、新たな縁との出会いが御座居ました。
フルドライヴはセーフモード中、
ずっと自身の心の在処と対峙し、
自身が何処から来て何処へ行くのかを、
復調していても、あたしを見ながら考え続けていたそうで。
現在の途中経過の答えをあたしに伝えてくれました。
そこであたしが分かった事は、
フルドライヴは大きな意味では、凛音ちゃんの内で生まれた、
あたしが解放できる能力である事。
宇宙や地球に遍在している偉大な存在のお力を、
あたしはごく微かに行使できるだけだと。
あたしの連なりの鎖の中で、
最もあたしの誕生を望んでいた存在こそがフルドライヴなのだと……。
過去形になってしまうのは、その存在……その人は、
もうこの現世には、肉体を持たない人だからです。
そう、フルドライヴは……あたしの、
………………
…………
……
瑞希図書館に再び戻り、
落ち着きながら地下書庫の目星を付けた書籍を、
メモを元に、先ずは五冊お借りし、
一階の学習スペースへ持ってまいりました。
書籍は大体午前中に考えていた事柄についての関係書籍です。
あたしはフルドライヴの無事が知れただけで、
疾走するつもりはなかったのですが、
フルドライヴは告げました。
……捧華……依存し過ぎてはならぬが……
……現在捧華自身に与えられている能力を尽くさぬ事は……
……仲間達に対しての……失礼と後悔に繋がりかねぬ……
……捧華……最善はなくとも……
……常により良い選択を考え続ける事は……忘れるな……
ですから、足りないあたしは、みんなに追いつき隣を歩ける様に、
覚悟を決めました。
………………
…………
……
肉体を失い、亡くなっても未だなお、
あたし達全ての家族を愛してくれている、
……あたしのフルドライヴへの認証……
……ではゆこう捧華……
……合言葉は、……
……“実(みのるおじいちゃん)、行(どうかよろしく)”!i……
……承認完了(まかせておけ)……
……起動(スタートアップ)“疾走回路(フルドライヴ)”!i……
あたしのお祖父ちゃんと共に!
おとうさん、
ぼくはおやふこうばかりのむすこだったね。
なにかをしてあげたくても、もういないんだね。