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『開幕前夜』第12話「友達の詩」
小さき吾(われ)は、
誠に足らぬ誠をもち、
………………
…………
……
吾はいつも独りだ。
“さとり”に目覚めた時から。
………………
…………
……
始めは良い様に行使した。
吾は大きく独りで在れたから。
だから常とは異なる吾の在り様は、
すぐに露呈し、忌避される様になる。
光と闇はうつしかがみ。
だからまことは解らぬが。
吾自身は、この力を悪に染めたつもりは無かった。
忌避と忌避がつながり連鎖していく。
もう家族にも受け入れてもらえない。
しかし、努力はしている。
ひとつ、
考えてみてはもらえないだろうか?
さとりの力の及ぶ範囲内の、
全ての人の思念が突き抜けていく吾の在り方を。
およそ全ての思念なのです。
和楽流れる中洋楽とを、
きちんと調えられると思いますか?
吾には、いまだみえず。
ある一定の精神集中にて。
ようやく固定した人物の思念が、
聴き取れる程度の成長ひとつと、
思念。
“声”の音量を限りなく小さく絞り続ける努力をもうひとつ。
完全に収める事は、未だ叶わず。
荒れる嵐の夜の海の如き吾の心に、
そんな中、
一匹の自由の翼もつ、猫が檻に降りた。
さとりを捨てたいが、
さとりに依存している。
小さき吾。
理由はもう人が怖くて仕方が無いからだ。
自衛の為に、いたし方なし。
どうせで猫を聴く。
だが……、たった11日間の出会いで、
吾は告げてしまった。
「今住むところがないのなら、良かったら、吾と住んでくれないか?」
………………
…………
……
吾の、初めての友だちよ?
吾はいつも泣いている。
だからきっと、
本当は、
このまさらな猫も泣いている。
だからこそ、「有難う」と笑い合う。
猫よ? 自由を鳴き、
自由を泣くのだろう?
相棒が何処で生まれ落ちた者だとしても、
この得難きぬくもりひとつくれるなら、
普通を謳う学びの園で強く在り、
………………
…………
……
まだ生きていようと、吾を諭す。
むれをでていきていけるようになってから、
むれるかどうかをえらびとれたらいいのに。
それでもわれは? それとも?