『OD!i』第66話「精神への旅路①」
あたしの今の生活には、
土曜日はなくてはならない大切な休日です。
なぜなら、月曜日から金曜日は、
やはり学園生活である事に変わりはありませんし、
日曜日には計画Aが必ず開かれるのですから。
あたしに足りない素養を高めるには、
図書館で勉強する時間が、どうしても欲しいからです。
昨夜から準備をして、今日に備えていました。
ですが今朝支度を整えていると、
学園に入学するまでの、
あたしの浅はかさを思い知らされました。
それは、毎日必要な衣類を洗濯しながら、
その日その日のコーディネートに幅があるかに見せる芸当は、
かなり難しい事がようやく身に染みてきたからです。
まだ一ヶ月すら経たないのに……。
学校の制服には、親や生徒に対する、
そういうご配慮もあるんだろうな……。
落ち込みはしたものの今日を無駄にはできません。
あたしはスカートが苦手な女子ですから、
本日の装いは下からざっと、
色はクリアブラウンの履きやすい管状のスニーカー。
無難に穿きなれたデニムパンツ。
好きなバンドの布教用ロンT。
アウトドア用のジャケット。
頭には当然絹の日の丸鉢巻。
トートバッグにお財布や水筒に、勉強用具と雁野先生から戴いた、
瑞希図書館までの地図のメモ。
お家ランドリーのダイニングは出掛ける頃には、
誰も居なかったけれど、
朝食を欠席する人は今まで誰も居ないのもまた事実。
何度でも刻もう、みんな動き始めている。
立ち止まってばかりいたら、置いていかれても仕方がない。
朝食での有り難いみんなとの時間と空気に……わずかに浸って、思う。
あたしもまた、進むんです!
心配をお伝えする為に管理人室へ行き、
五代様に昼食は弥那町でしたい事をお伝えすると、
「今度は前日までに教えてくださいね」と、
やはりあたしの計画不足を反省してしまう事になります。
ですが続けて五代様はこうも仰いました。
「哀しい事でもありますが、空いている席に座りたいのは、皆同じです。つまり、貴女が空けた穴を埋めてくれる人もいる、そういう喜びにも繋がるのですから、人生はとても面白いものでもあります。早水 捧華さん、心配せずに、いってらっしゃい」
百回に一回の成功率でも、九十九回失敗すれば、光はある。
失敗した時には楽観的になろう。
成功した時にこそ悲観的になろう。
失敗と成功の大小や軽重は御座居ますでしょうが、
あたしは、……いいえ、誰しもが一人では生きてはいけないのですから。
………………
…………
……
あたしの足で瑞希図書館は一時間足らずの場所にありました。
瑞希図書館の西側は遊具のない広い芝生の公園になっています。
ベンチはあるので、もう少し暖かい季節になったら、
ご本をお借りして、ベンチで拝読するのも良いかもしれません。
図書館の入口は南側で…………、
「……うわぁ♪」
たくさんの彩りの綺麗なお花達が咲いています。
お庭の主はカラフルなチューリップ達かしら。
それだけで、あたしの気分を高めて、ハッピーにしてしまう。
今だと二番咲きかしら、三番咲きになるのかしら?
あたしの実家のお母さんの本棚にあった、
花言葉の辞典を思い出してしまいます。
チューリップは童謡にもなる程、日本でも有名なお花ですから、
その花言葉は今も鮮明に憶えています。
チューリップ全般の花言葉は……、
「思いやり」
見蕩れながら図書館までの歩みを、ゆっくりと進めます。
すると入口の前には、仲睦まじい二人の男女の銅像が御座居ました。
男性はお医者さんかしら、白衣らしき出で立ち、
女性は銅像からでさえ、気品が漂っていらっしゃる。
美男美女では御座居ますが、しかし何処かしら儚げなお二人。
そうして、ようやく、
さぁ、着きました…………、
瑞希図書館へ。
きみとまんがきっさへいったね。
ぼくのほんとうにすすめたいまんがはすすめられなかった。
いまきみがよんだらどうおもうかな。