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『OD!i』第70話「精神への旅路⑤」
「…………、ふぅ……」
疾走回路はなんでも可能にしてくれる能力ではありません。
元々の素養が足りない今のあたしでは、宝の山も持ち腐れです。
つまり、どんなに疾走しても、
あたしの素養から、解に至れない問題は、
取捨選択される中で取り零されて行きます。
今日の休日は、
無駄どころか大いに実りのあるもので御座居ましたが、
あたしのお借りした全ての書籍に対する理解は、
三割が精々でしょう……。
“塵も積もれば山となる”。
一粒でも多く、また迅速に、素養を蓄積させて行く事が、
これからのあたしの人生です。
………………
…………
……
地下一階から地下二階にご本を疾走して丁寧に返却し、
久しぶりの疾走を思い返します。
やはり有ると便利な能力です。
たった二時間で関係書籍五十冊以上を、まだ三割以下とはいえ、
ゆっくりと理解する事ができたのですから。
まだ午後四時を回ったところですし、
護身については、図書館前の公園で疾走し、
会得しておくべきかもしれません。
そう思う頃に、地下書庫の階段に差し掛かり、
ふと、心象に声が響いた気がしました。
そう言えば地下三階はどうなっているんでしょう。
何気なく思考はそう至り、後学の為に見学してゆく事にします。
………………
…………
……
しばらくして地下三階の本棚の樹海は、
まるごと物語ばかりが蔵書されている場所だと分かりました。
あたしのこれまでに知らない物語が溢れている訳です。
ですからもしかしたらと樹海に希望を抱きました。
きるくはまだ午後四時十分頃。
疾走して身体を動かし、
順調に見つけられれば、閉館までにご本を一冊読むなんて、
大した事ではありません。
和歌市なら、有り得ないものが在るかもしれません。
「“実(おじいちゃん)、行(もういっかい)”!i」
そして、希望(それ)は…………、
………………
…………
……
「っ…………あっ、……た」
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OTOIROEHON
おといろえほん
~♪万華鏡雪月花♬~
~♫Kaleidoscope Worlds♪~
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もじ こひなた いろえ じょにー
げんさく みんな
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……
本当にお父さんの本が置いてあるなんて……、
そして今よりもずっと幼かったあたしでは気付けなかった事が今更、
……きちんと装幀されているから……分かる。
謎だった「いろえ」の「じょにー」さんは、
お母さんの事だったんだ……!
このお母さんそのものの悪戯好きの癖に、
純粋無垢な子供みたいな面も感じさせる絵のタッチは、間違いない。
菜楽荘のおうちは、
そのまま二人の、お互いの「君」へ仕える事(ばしょ)だったんだ……。
お母さんもお父さんも極端から極端の人でした。
……お母さんは愛情深いのに、
照れ屋な女性ですから、あたしに言い出しづらかったんでしょう…………。
しみじみ……、しみじみと、あたしはできる限りそっと疾走して、
溢れ出す想いの中、ここではない……、何処か……、
「星の世界の旅行」へと出掛ける。
OD!iをごらんいただき
ありがとうございました
またおあいできたらさいわいです