『OD!i』第64話「髪型①」
午後十六時半頃、弥那町裏通りにて。
あたしは「理美容室」という言葉を、
初めて知ったものですから、
目的地までの道すがら、
清夜花に説明を求めると、
それは単純に、
ひとつの店舗がふたつに分かれて、
それぞれ一人ずつ、
理容師と美容師が居るという話でした。
そして、
あともうひとつ気になる事が御座居まして……、
………………
…………
……
「清夜花? 法華さんはお元気?」
学園に来てからというもの。
清夜花と法華さんが一緒に居る所を見た事がない為の質問でした。
「あら捧華、法華を心配してくれて有難う。ただ、あの公園での出来事の方が稀なのよ。法華には法華の世界があるの」
それから……と、
清夜花の声音は粛々として、
「担任の川瀬先生から通された。途方もなく偉大なお方様の力で、あたくしと法華の繋がりはさらに強くなったの」
見てて捧華、と。
なんでもない風に立ち止まりもせず。
清夜花が右の掌を、
慈愛さえ込められた様に、
ふわ
と、
上方に捧げると、
その掌には霊鳥ウグイス。
法華さんが非常に軽やかに、
お姿を現していました。
「あたくしの霊格が、川瀬先生との儀式を経て飛躍的に上がった結果、友であり師の法華とは……、……あたくし達は霊的な繋がりで、見えていても見えていなくても、一緒に在る事ができる様になったのよ」
その言葉の結局と同時に、
法華さんは美声をひとつ残して、
お姿を消していた。
法華さんの音楽はやはり……、凄い。
心の中を浄化してもらえた様にも覚える。
「あたくしの担任、川瀬 美夜子先生にあたくしはもう壁を作らず、素直に教えを受けます。その気になれば、程好く砂糖菓子にも手を伸ばしてみましょう」
っ――?
清夜花は、お菓子を普段は食べない人なのかしら?
それとも何かの比喩表現?
それから一分足らずで、
目的地には無事に着けました。
そこには、
赤白青の円柱形の看板が設置されていて、
お店外観の上部の軒先には、
店名が小洒落た感じ。
到着したんです、
ここが、
理美容室【HAIR DO】
しんやをはしる、
あのりょこうのことを、
ぼくはけしてわすれまい。