弓道の審査の話
高校2年の3月、2段の審査を受けに行った時のお話。
この日、1年生は無指定の、私は2段の、部長と中学から弓道をしていた後輩君は初段の審査を受けました。
審査結果は何も特別なことはなく、私も初段組もそれぞれの段位に合格したし、1年生もそれなりの級位をもらっていました。
以前の投稿「私は確かに”青春”していた(全5話)」で、ノートに記録をつけていると書いたと思います。
試合や審査の時もルーズリーフをリュックに入れて、引いた後すぐに矢所や引いた時の反省などが書けるようにしていました。
この日も例にもれず坐射が終わった後、ほかの人の坐射を見ながら自分の射の反省を書いていました。初段受験の二人は筆記試験の最中で動画を撮ってもらえなかったこともあり、なるべく自分の言葉を残そうとしていました。
待機所の入り口に近かったことがこの幸運を呼んだのでしょうか。
たまたま審査をする側(運営側)のおじいちゃんが待機所にやってきて、記録をつけていた私に声をかけてくださったのです。
その記録はいつもつけているのか。
そう聞かれた私は「はい」と返事をしました。するとそのおじいちゃんは感心したように私の書いていたものをのぞき込みました。そして、様々な話を聞かせてくれたのです。
矢所の記録を見て、前に飛ぶのは押手がきちんとできていないからだ、とか、2段受験ならそれだけ矢所がまとまっていれば上出来だ、とか。
そのおじいちゃんのいっていることは正しくて、私は押手を後ろに振る癖が昔からありました。記録を見ただけでそういう癖が分かるというのは本当にすごいことです。私はここぞとばかりに、癖になっていてなかなか直らないということを話しアドバイスをもらいました。会の時の上下左右の伸び方、離れのイメージの仕方などすごく丁寧に教えていただけました。
最終的には、2段3段の受験者の坐射をリアルタイムで解説までしてくれました。どう考えても高段位のおじいちゃんが、高校生の私につきっきりでです。十数分だったと思いますが、とても有意義な時間でした。
高段位の方に教えてもらえる機会なんてそうそうありません。自分の小さな積み重ねがこの機会を作ってくれたのです。強くなるためにやってきたことは決して無駄ではなく、その弓道に対する真剣な態度がほかの人に認められたのです。
記録をつけるというのは、そう難しいことではありません。別にわざわざアナログでしなくても、スマホアプリで的中を記録できるものもあります。
記録を取っていれば、同じようなスランプの状態になった時に、前どうやって直したかを参考にすることできます。
この毎日の一つ一つの小さな積み重ねが生んでくれた有意義な時間を私は忘れないでしょう。