名刀展と室町将軍展の話
2019年8月13日。夏真っただ中の良く晴れた日。私は太宰府天満宮と九州国立博物館を訪れた。
受験生の夏と言えば家や塾で勉強をするのが普通なのだが、志望校が確定せず気持ちがあまり受験に向かっていなかった私は、のんびりしていた。
私は夏が近くなってもゲーム三昧だったのだが、ある日刀剣乱舞の攻略サイトで夏に蛍丸の写しと大般若長光の展示があることを知った。
夏はおばあちゃんの家に帰るのが毎年恒例だった私は、電車で行ける距離だということを確認した。そして、勉強そっちのけで展示を見に行くことに決めた。
おばあちゃんの家についてすぐ私は1人で太宰府へと出発した。電車をいくつか乗り継ぎ1時間半ほどかけて太宰府駅へと到着した。
夏ということで、多くの風鈴が吊るしてあった。まずは、神様に挨拶をして、一応受験のお願いもして、宝物殿へと向かった。
数本の刀とともに、目的の刀は展示してあった。
阿蘇神社の宝刀「蛍丸」の写し(影打)は、現代が打ったということもありひときわ輝いていた。
刀というのは展示の時に美しくライトアップされている。刀身が光に照らされて、波紋が美しく光るのはどの刀も同じ事。
だが、蛍丸の輝きはほかの刀とは全く違うように思えた。奉納されるために作られた刀。現代に作られたのだから、もちろん人を切ったこともなければ血に塗られたわけでもない。それが他の刀とは違うという感想を持った理由なのではないかと思った。茎がさびていないのも理由の一つかもしれない。
宝物殿ではじっくりと蛍丸などの展示物を見て、グッズをいくつか買って、パネルの写真を撮った。
おひるごはん代わりに梅が枝餅を食べた後、前に来たのは何年前だろうかと思いながら長いエスカレーターを上り九州国立博物館へと向かった。
時間があまりなかったため特別展のみの参加だった。
刀剣乱舞コラボの音声ガイドを借りて中に入った。
室町時代の歴史が初代から順に学べるようになっていて、これはいい日本史の勉強になると思いながら、一つ一つの展示を見て回った。目的の大般若長光のほかにも、いくつかの刀剣が展示されていた。
そして、目的の大般若長光。
刀剣乱舞のキャラクター「大般若長光」として三木眞一郎さんの声で語られる大般若長光の名前の由来やたどってきた歴史。
先に蛍丸の写しを見てきたからだろうか。刀が発する空気が明らかに現代のものではないと、そう感じた。そして、本当に刀剣乱舞のように付喪神が存在するのだとしたら、どのような物語を教えてくれるのだろうか、と思った。
切るため、命を奪うために作られ使われてきた刀という道具に美しさを求めたのはなぜなのだろう。たくさんの血を吸ってきた刀をそれでも美しいと思わせるものは何なのだろうと思った。もしかしたら、血にまみれたからこそ美しいと思うのかもしれない、とも思った。
実はこれが初めてだったりした一人旅。自分で計画を立ててくたくたになるまで歩き回って、自由気ままに参道をうろついて店に入った。行きと帰りで少し違うルートをたどった。
家族と一緒に旅をするのとはまた違った楽しさがあった。
こうして私の初めての本霊参りは幕を閉じた。