釈迦の歯を求めて -出会ったのはピュアな憧れ-
スリランカのキャンディと言えば、最も有名なのは仏歯寺である。
キャンディという街自体が、スリランカ仏教の聖地として世界遺産登録されており、その中でも釈迦(ブッダ)の歯が納められている仏歯寺は、国内外の観光客がこぞって訪れる大定番スポット。
先日、コロンボでタクシー運転手と話していた時に「キャンディは行ったことがあるけど、仏歯寺には行っていない」と言ったら、ややキレ気味に「何しにキャンディに行ったんだ、今回は絶対に行くべきだ」くらいの勢いで説得されたので行ってみることにした。
(そのタクシーのダッシュボードには小さなブッダ像が飾ってあったので、かなり熱心な仏教徒だったと思われる)
人気がある場所なだけに混雑するし、ぼったくりがウロウロしていると聞いていたので、あまり気乗りしないままに訪れたが、エントランスを入った途端に広々とした緑あふれる庭園が。
靴を脱いで(お寺では土足NG)中に入ると、かなり見どころがたくさん。
きらびやかに神を祀るいくつもの部屋があり、その中を花のお香の煙が風にのって流れていく。
日本のお寺の線香もこんなに良い香りだったら、もっと通いたくなるかも。
しかし何より興味深かったのは、ありとあらゆる所に象のモチーフがあること。釈迦は白象の姿で母胎に入ったという伝説もあるそうで、とにかく象は神聖視されている。
スリランカの象は、セイロン象という耳のやや小さな絶滅危惧種でもあり、昔も今もとにかく大事にされているのだ。
祭壇の土台には金ぴかの象。
祭壇を囲むのは弓なりに突き出した象牙。
そして突然の象のはく製。
サンフランシスコ講和会議で日本の真の自由と独立の支持を訴え、戦後の各国と日本の国交を救った”故ジャヤワルダナ大統領”の象だそうで「象を飼っていたのかー、さすがスリランカの大統領」と妙に感心してしまった。
そんな感じで仏歯寺を満喫していたのだが、白い制服を着た女学生たちが入れ替わり立ち代わり、話しかけてくる。
※スリランカの学生の制服は衛生上、毎日洗濯させるために敢えて汚れの目立つ「白」と決まっているらしい
みんな、可愛くはにかみながら「Japanese?」「一緒に写真撮って」と集まってくるので、何だかうっかり有名人気分。
この人気ぶりは何なんだと思っていたら、一人の女の子が思い切ったように「Our dream country is Japan!」と。
嬉しいけど、なんで?ときいてみたら、それには答えられないようだった。
とにかく彼女たちの中で日本は夢の国なんだ…
この夏にスリランカを旅した友人も、スリランカの女子から「私は前世で悪いことをしたから、肌も暗くてスリランカに住んでいる。あなたは前世で良いことをしたから、肌も明るくて日本に住んでいられるのね。」と言われたらしい。
私は日本の、細かいルールや謎の常識が張り巡らされた風潮がどうにも苦手ではあったのだけれど、それは効率の良い経済成長を支え、国民の協力体制を築く源であったんだろうなと最近は思うようになった。
ただ、現代を生きる私たちはそのルールや常識を空気のように意識しなくなってしまい、且つ、なくては生きられないほど自分で考えることをしなくなってしまったように感じることもある。
人の足並みを管理するルールと、象を愛するような温情が共存できる世の中になったら良いのかもしれないなあ。
そして豊かな自然とポジティブなエネルギーのあふれるスリランカは、ある意味、私にとっては夢のような国だよ。
18:30から行われた仏歯の開帳時には、激しく人波に揉まれながら拝観しに行ったけれど、歯が入っているというキラキラしたイカついケースしか拝ませてもらえなかった。
なんなの…まだまだミステリアスだな、スリランカ。