異国の湖畔での小さな冒険 -のんびりとした空気がカギ-
スリランカ、キャンディ。
この街にはお気に入りの場所がいくつかあるけれど、その中でも特に気に入っているのが「BOWATTE」という、めちゃくちゃ品数が豊富なアーユルヴェーダファーマシー(薬局)。今回も張り切ってトゥクトゥクを飛ばして、そのお店を目指した。
しかし到着してみると、なんとお休み。
他に行きたい所もなかったので、かつての王によって人工的に作られたというキャンディ湖のほとりをぶらぶらと歩いてみることに。
しばらく歩くとちょうど良く日陰になった場所があったので、腰を下ろして裸足でくつろぐ。
湖から吹く涼しい風と足元の地面の温もりが心地よく、思わず深呼吸してしまう。
そんなとき、アイスクリームを売り歩くおじさんが話しかけてきた。
「もうすぐキャンディアンダンスが始まるよ。行ってみるといい。」
ああ、必ずキャンディツアーの項目に入っている、観光客向けの伝統ダンスかあ…
とはチラリと思ったものの、特に押し売りするわけでもなく勧めてくれた彼の笑顔で、何の計画もなかった午後に突然、新しい目的地ができたような気持ちになった。
言われた方向へ向かってみると、会場はいくつかあるようだがチケット売り場が分からない。
と、売店が目に入ったのでジュースを買いつつ「ダンスが見たいんだけど、どこでチケット買える?」と聞いてみた。
すると意外にもその売店のおじさんがチケットを売ってくれるという…
いや、絶対にここはチケット売り場ではないだろう?と若干怪しんだが、にらみを効かせつつ購入。
指定された会場へ向かうと、ちゃんと入場できました。
疑ってごめん!
座席を探してきょろきょろしていると、側でニコニコしていた小柄なおじさんが「どこから来たの?」と声をかけてきた。
軽くおしゃべりしているうちに、彼はフランス人観光ツアーのガイドだということが判明。
「前から2列目のフランス人用の席が空いてるから、一緒に座っちゃいなよ!」と案内され、なんともラッキーなことにフランス人のみなさまと共に特等席をゲットしてしまった!
キャンディアンダンスは、期待以上に凝った演出で楽しめた。
特にファイヤーダンスは迫力満点。大きな炎が吹きあがるたびに観客から歓声が上がり、私も手を叩きながらすっかり夢中になってしまった。
小さなおじさんありがとう!
ダンスが終わって外に出ると、夕陽に染まったキャンディ湖が目に飛び込んできた。静かな湖面が美しいピンク色に染まり、息を呑むような光景だった。
前回キャンディを訪れたときは、トゥクトゥクの勧誘や物売りの声に少し疲れてしまい、観光名所を楽しむ気分にはなれなかった。
しかし今回は親切なおじさんたちの後押しもあって、不思議と自然な流れで楽しむことができた。
もちろん、途中で物売りや怪しげな案内人に声をかけられることもあったけれど、「私はあの中国人団体客の一員です」とさらっと受け流す術を身に着けたのも良かった。(この方法はおすすめです)
なんとなく、こちらがのんびりとした気持ちでいると、関わる人たちも自然とそういう雰囲気になるのかもしれない。旅先での空気感って、案外自分の態度次第で変わるものなんだな、と改めて思った。
観光客モードでガツガツして閉じていると、こじ開けようとする輩が寄ってくるし、
旅人としてのほほんと楽しんでいると、すっと優しい誰かが寄り添ってくれたりする。
何も予定せず、ただ湖畔でぼんやり過ごしていただけだったのに、気付けば素敵なダンスを観て、美しい夕陽を眺めることができた一日。
キャンディの街が、また少し特別な場所になった。