『初恋は乱れ髪』
差し込む光に起こされ、目覚まし時計を片手で止める。眠い僕の目に映ったのは不確かな世界だ。
白いシャツ、流れる髪、朝7時のコーヒーの匂い。
確かな鏡に映ったのは飾られた今の僕だ。
あの角を曲がり、交差点を渡り、流れる時に体を運ばれてた。風邪に身を任せスカートを操る君はあぁ、綺麗だ。
あなたの指先、視線で、揺れるその髪で僕を華麗に踊らせてよ。目に見えぬ糸で僕に君の世界を見せてよ。
あなたの視線で言葉で、操られる心。どうかその糸を切らないで。舞台の上の操られない人形なんて誰のの目にも止まらないから。
スカートの影をたどり、今日も僕は歩く。ポケットに忍ばせたのは醜い僕の欲望だ。
彼女の後ろを歩くも影を踏むことは出来なくて、
興味本位で読んだ少女漫画も彼女の前じゃなんの役にも立たなくて。
知りすぎた世界戻れない過去に立ち止まり引きずられていく手足。風でなびかれ僕の前で揺れた
君の袖を手でつかんだ。
あなたの瞳に、心に、映っている僕を捕まえてどこか閉じ込めてよ。流れる涙に触れた君のその手は暖かくてずるかった。
まばたきをしても離れていく君のその手。次に目を開く時には抱きしめてた。細い髪の隙間から見えた景色は涙を拭わずとも あぁ、綺麗だ。
僕の体から離れた君は振り返ることはもう無かった。まるで、この先はダメだと優しい目で語るように。
あなたのその手で塞がれた僕の目、次、開いた時にはもう君はいなかった。温かい涙が頬を伝う。今日も僕は踊る。青い空の下で。