四国の山奥からオランダへ!嶺北地域初の海外大学生誕生に迫る
しこくGlobalネットワーク1期生のその後の進路に迫るシリース第1弾。今回は、高知県立嶺北高等学校在学中に1期生として参加した佐藤皓太郎さんです。
高知県立嶺北高等学校を卒業し、この秋からオランダの名門ライデン大学人文学部国際学科へと進学された佐藤さんは、2004年に神奈川県で生まれた。両親の関係でいわゆる転勤族だったため、小学校6年間は北海道、中学校1年生をタイ、中学校2~3年生を福岡、そして高校3年間を高知で過ごした。
「高校進学は、自分で決意しました。嶺北高校は正直なところ、偏差値という点では決して高くありません。いままで自分が生まれ育った価値観や環境と全く異なる場所で、成長できるのでは。そんな理由でこの学校をあえて選びました。」
高知県立嶺北高等学校は2024年度の偏差値が36と高知県最下位。全校生徒100名程度。廃校の危機に一時は直面した四国山地のど真ん中にある学校だ。一方で地域課題と自身の関心を掛け合わせた探究活動が特徴的で、吉野川や早明浦ダムといった環境からカヌーが盛んである。そうした背景から近年は佐藤さんのような意欲的な学生が全国から集まりつつある。
「高校生活を通して、自分の価値観が固まったと思います。常にマイノリティでした。転勤族で常に地元出身者ではないので、学校ではマイノリティ。進学の選択の考え方もマイノリティ。そうした中で、1人であることを怖がらない、他人と違うことを恐れないようになりました。むしろ、異なることの楽しさを感じ、目立ちたがり屋の本領を発揮した高校生活になりました。」
高校では寮長や生徒会長を務めた佐藤さん。探究活動では防災をテーマに、災害時にどうしたらみんなが助かることができるのかを模索。ホームセンターとコラボレーションしたイベントを開催するなど、その活動の様子はNHKにも取り上げられた。そんな中で、次第に海外大学への進学を目指すようになる。
「大学進学もみんなと違う選択肢が面白いんじゃないかと漠然と考えていました。もともと、中学生の時に1年だけタイに住んでいたことや、高校のカヌー部のコーチがハンガリー人だったこともあり、海外は身近な存在でした。大学に進学したら交換留学したいなと思っていた頃、母親からはじめから海外の大学に入学したら?と言われたんです。その手があったかと思いました。高校2年生の頃のことです。」
そこから、インターネットで情報収集を始めた。エージェントの無料相談に参加したり、家族や学校の先生の協力も得ながら海外大学について調べた。そうした中で、オランダの大学に関心を強めていく。タイミング良く、四国地方の高校生の海外進学をサポートするNPO法人みんなの進路委員会が嶺北高校に出張授業等で関わるようになり、実際に海外大学へ進学した先輩の話を聞く機会も増えた。
「実はいとこが自転車選手としてオランダに修行に行っていることがあり、もともとオランダには関心がありました。また、ある時みた動画で、オランダは海抜が低く、地球温暖化による海面上昇が起きると国土が海に沈む可能性があるため、環境問題に積極的に取り組んでいることを知りました。環境問題に関心が高かった私は、オランダの取り組みが日本よりも進んでいると感じ、ぜひオランダで学びたいと思うようになりました。」
他にも、アメリカやイギリスなどと比較すると学費が安価だったことや、非英語圏の中で最も英語力が高い国であったこと。ヨーロッパの主要国への移動距離が短いことなども、オランダへの進学を決意する後押しとなったという。
その後、嶺北高校を卒業した佐藤さんは、卒業後すぐに進学をするのではなく、通称NICと呼ばれる東京にある海外大学進学専門のインターナショナルスクールに1年間通うようになる。
「通い始めて周囲のモチベーションの高さに驚きました。NICには、同じ海外大学を目指す仲間がいました。正直高校のテストはそこまで勉強しなくても成績が簡単に取れていたんです。生徒どうしで学び合い、上には上がいるこの環境で、自分も頑張らなければと火が付きました。」
また、NPO法人みんなの進路委員会が運営する四国地方の高校生の海外進学を支援するコミュニティ「しこくGlobalネットワーク」に参加し、香川県出身でアメリカの大学に在籍している芦田一真さんがメンターとなった。目標設定と毎月の面談で目標に向けた取り組みを確認した。
「自分を律することが苦手だったのですが、芦田さんとの面談を通して、海外進学を目指すモチベーション維持にも繋がり、いま自分がやらないといけないことを一緒に取り組むことができました。とても感謝しています。」
その後、NICのサポートを受け、目標とする大学をライデン大学に決定した。ライデン大学は、オランダ最古の大学で、国際関係学が有名だ。まずは条件付き合格を獲得。さらに、NPO法人みんなの進路委員会と連携したIDP Education Japanのサポートもあり、目標だったIELTS6.0を突破。晴れて進学が確定した。
「いまはもちろん嬉しいですが、決まったからこその緊張感がありますね。俺まじでオランダ行くんだって。最近ちょっと1人になる時間も多くて、ネガティブな思考になることもあります。授業について行けるのかなとか。でも、案外どうにかなるんじゃないかなって思っています。もちろん大変なことはたくさんあると思いますが、いまは自分が学びたい環境で興味のあることをとことん学べることが本当に楽しみです。」
「後輩たちにはまずは自分が大学で頑張ることで、行動で見せたいと思います。そして、嶺北高校からもこんなチャレンジができるんだ、海外大学ってアメリカやイギリスだけじゃないんだってことも知ってもらえるようになると嬉しいですね。いずれは、お世話になった芦田さんのように、しこくGlobalネットワークのメンターや出張授業のゲストスピーカーとして母校や後輩たちのサポートもできたらと思っています。」
取材後、佐藤さんは無事渡航して8月26日からオランダ生活がはじまっている。これからの活躍が楽しみだ。