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色彩の温泉街/金沢旅行記③
山代の泉に遊ぶたのしさをたとへて云えば古九谷の青
土地の色ってなんだろうか。
旅先にいるとき、そんなことを考える。
特色、という言葉があるように
色には個性という意味も含まれている。
その土地の個性、それが現れている色
そういうモノを見つけるのも、旅の楽しみの一つだ。
文人たちの温泉郷
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少しだけ陽が傾き始めていた。
山代温泉に到着したのは午後2時ごろ。
民家や商店が並ぶ通りを歩く。
裏手に山が迫っていた山中温泉と比べて、平地の温泉という印象。
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立派な看板を掲げた店が並ぶ。
かつて山代に滞在した魯山人が彫ったものもあるとか。
1000年以上の歴史がある山代温泉。
与謝野明子や鉄幹など、多くの文人が訪れたという。
電車とバスを乗り継がなければならない場所。
もっと不便な時代に東京から行くほどの魅力があるらしい。
桜舞う温泉寺
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総湯のすぐそば。1300年近い歴史がある。
境内に入ると桜が舞っていた。
静かに散っていく花
見ているのは僕一人だけだ。
なんだか贅沢をした気分に。
そして少し寂しい。
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魯山人寓居跡
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北大路魯山人といえば、気難しい人の代表格じゃなかろうか。
そう思ったきっかけは白洲正子氏の本だ。
確か、あまりにも自分勝手な人なので取引を止めた
などと書かれていたと思う。
白洲次郎の妻にそこまで言われるのだから、相当だったのだろう。
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そんな魯山人だが、芸術家として名を上げる前
この山代温泉に半年ほど滞在していたらしい。
その後も、山代の人に会うたびに
「山代の別荘は、どんな様子かね」
と尋ねていたのだそうだ。
だいぶ気に入っていたのだろう。
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まるで古代遺跡のような
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九谷焼の焼窯跡は古代遺跡のような威厳があった。
この工房から、あの色彩豊かな九谷焼が作られていたのか。
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色彩が染み込む温泉
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北陸の温泉街の特徴として、湯の曲輪、というのがある。
共同浴場を中心に、ロの形で町が形成されている様をそういうらしい。
中心の古総湯は2階建ての古い建物だ。
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「こっちは銭湯じゃないけどええか?」
受付のおばあさんにそういわれた。
とりあえず「大丈夫です」という。
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脱衣所のすぐ目の前に湯船。
「銭湯じゃない」というのは洗い場が無い、という意味のようだ。
隣にある総湯に入ってから、こちらに来るのが定石らしい。
少し罪悪感を感じながらも湯船につかる。
水面にステンドグラスの光が揺れる。
鮮やかな色が湯の中に浸透していく様だ。
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2階の休憩所で寝ながら、熱を覚ます。
赤青のガラスを通った、賑やかな陽気に照らされる。
いつまでもこうしていられそうだ。
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隣には欧米系の旅行客が同じように横になっていた。
この温泉のことをどうやって知ったんだろう。
日本人の僕ですら、つい最近まで知らなかったのに。
紅がらの町
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古総湯を出て、湯の曲輪を歩き回る。
紅がら格子の建物が夕陽に照らされて美しい。
平日の夕方、温泉街は一層静かだ。
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足湯の近くに与謝野鉄幹の歌碑があった。(冒頭の引用)
九谷焼と温泉を見てきた今となっては
「そうだよなぁ…」とうなずける。
この町の色は間違いなく、青だ。
朱に染まる北陸の夕暮れ。
足湯につかりながら、ひとり身震いした。
次回