思想犯
考えることは最高の贅沢だ、と思う。頭の中では何を考えても許される。
あの子可愛い。抱きたい。あの人お金持ってそう。1億くらいくれないかな。あの人は車内で電話してて煩いから、箪笥の角に小指ぶつけてしまえばいい。
電車の中で、周りの人を見ながら考える。そんな私も、他の人から見ればただの「周りの人」で、やっぱり同じように「ガム踏んじゃえばいい」とか思われているのだろうな。
お金も仕事も、大してない。むしろお金に至っては、びっくりするほど控えめ。夢も希望も、何もない。なのに生きるだけでお金はかかるし、何もしないには暇が多すぎる。
芽依は飽いていた。日常に、人生に。取り立てて可愛くも賢くもなく、一芸も持ち得ない自分の未来に、希望は見出せなかった。
こういう時に人は、犯罪や凶行に駆り出されるのだろうか。
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