世の中に願うこと
警察官になって、事案対応を重ねていくにつれ、いつも痛切に考えていたことがあります。
それは、「家族は近くにいた方がいい」ということ。
私個人だけの問題だけでなく、世の中全体がそうであってほしい、と今も心から願っています。
なぜそう考えるようになったかというと..
警察官が一般人と関わる場面というのは、だいたい非日常な状況です。
道端で倒れてしまって警察署で保護しました→基本的に24時間以内に家族に引き渡さなければならない決まりがあり、必死で身内を探します。
行方不明になったり家出人が出た時→よっぽどの理由がない限り家族から届け出を受理し、だいたいは見つかったら身元引受人として来てもらいます。
万引きをしてしまった場合→いくら遠くに住んでいても、親族に来てもらわなければ初犯でも逮捕されることもあり得ます。
DVを受けた→近くで支えになってあげられる実家の協力があればこちらも心強いです。
自宅で亡くなりました→やっぱり親族へ連絡し、事情聴取が必要。
どんな事案でも、まずはその人の身近な親族との連携が必要になってくる現実を目の当たりにしてきました。
友達やルームメイト、近所の人は赤の他人で、人間関係が希薄になっているこの世の中、果たして一人の人間にどれくらいのことをしてくれるでしょうか。
と考える以前に、こちら側としても、よくわからない関係の人を身元引受人にできるかどうかといったら怪しいのです。
変な人に渡してしまって、後で殺されていたなんてことになりかねないですからね。
人は心を持っている分、弱い生き物です。
病気や失業など、何かあると、砂山が崩れていくように、すぐに一気に落ちてしまう可能性があります。
それは社会生活を営んでいる以上、皆平等にあり得ることです。
だからこそ助け合って生きていかなければならないのです。
だけど近所付き合いが疎まれて、隣のマンションの住人さえわからない世の中となっている今は、高齢なら尚更、なるべく親や兄弟姉妹が近くにいるべきなのです。
なのに親は子どもを都会の大学に出し、子どもはお金を優先して都会で就職し、田舎には帰ることはない。
そんな核家族世帯が多い現実。
介護制度に任せればいいだろう、税金も払ってるし、なんて言う人も。
それで本当にいいのかな?と思います。
だんだんと変わっていっているところもあるかもしれませんが、社会的弱者と言われる方々と接することの多かった警察官時代には、それはあまり感じられませんでした。
社会の綻びみたいなところが犯罪に結びついていると言いますよね。
これは社会の問題だな、と思うことが他にも多々ありました。
何でも自己責任とされる世の中を感じます。
そして、じゃあ、女性警察官は家族の近くに住めるのか?と考えた時に、そんな事案対応を重ねている上の人も分かりきったこと。
警察社会も鬼ではないので、実家の近くに異動したいと希望をだしたら、なるべく通そうとしてくれます。
特に女性は、長く続けてもらうために、実家の手が空いていれば協力してもらいたい、と組織としても考えています。
せっかく警察官になるのなら、自分や家族のためにも、なるべく実家の近くに住めるよう、地元の都道府県を受けて欲しいと個人的には願います。
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