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約20年前に男性育休を取った備忘(5)~ごはん~

ぼくが育児休業を取得したのは、今から18年前だ。
曖昧な記憶だが、当時男性で育休を取得したのは、首都圏で労働組合のあるすべての会社で累計で89人しかいなく、ぼくが90人目だった、と記憶している。

今この時代が「こんなに子どもを育てる社会の環境は変わった、良くなった」ということを改めて噛みしめる意味で、18年前の体験を記録しておこうと思う。


育児休業中のごはんについて、最初にぼくが書かなければいけないのは

「和光堂様、ありがとうございます」

というお礼だ。

一人分の離乳食を1日3回用意する、それがこんなに大変で、絶え間なく続くものだとは全く思っていなかった。

朝、大人のご飯と一緒に離乳食を用意する。
てんやわんやで子どもに食べさせる。
子どもに後ろ手で引っ張られながら、後片付けをする。


そしたら、もう昼になっている。
そういう日が毎日だったような気がする。

そうしているうちに、自分自身の食事も変化していった。
段階的に整理したらこんな感じか。

1>

よくイメージする“楽しい食卓”にありがちな「テーブルに向かい合って食べる」ということが不可能なことに気づき、横並びで座るようになる。

2>

「箸やスプーンを利き手だけで持っていたら手の数が足りない」ということに気づく。

利き手(右手)に子どものスプーン、左手一本で自分のご飯を食べられるようにカスタマイズするか、あるいは、もう同じ時間に食事することそのものを諦める。
(ちなみに、カスタマイズといっても具体的に行ったのは『味噌汁にご飯をぶちこむ』『おかずを手づかみで食べる』など)

3>

離乳食の食べ残しを自分の胃袋に捨てているうちに、これはもはや、自分のご飯を用意しなくてもいいのでは?という考えになる。

なんなら、それで痩せられるのでは?と考えるようになる。
このころから、もう椅子に座るのをしなくなる。


4>

離乳食の味が薄いことが気になりだし、わざわざ自分用に離乳食を取り分けて、味変をして食べるようになる。


5>

食事をこういう感じで乗り切るようになって、物足りなくなり、」異常に間食が増える。


育休の間を通して、食事の時間は正直楽しいと思ったことはあまりなかった。

なので、和光堂様に大変お世話になりながらも、「提供すること」そのものは、そこまで手を抜いた感じにはならなかった。


ぼくは、その理由を、子どもの寝顔がぼくにそれを許さなかったからなのだと、今でもはっきり記憶している。


1歳児は午前中にも昼寝をすることがある。

育休に入ったばかりのある日、10時くらいから子どもが眠ってしまい、なんとなく家の中の時間と音が止まったことがあった。

ほっぺたをつぶして眠っている子どもをなんとなく見ていると、急に


「この子は、今ぼくがこの子のことを忘れたら、死ぬんだな」

と思った。

「死ぬ」

ぼくは背筋が冷たくなり、息ができなくなった。

心臓がバクバクしだして、何かしなければ、と思ったんだが、どうしていいかわからず、とりあえず、子どもがちゃんと呼吸していることをしゃにむに確認したような気がする。


この日まで、ぼくは育休のことをけっこう軽く考えていた。

当時の職場がいい加減嫌になっていたこともあって、仕事を合法的に休める、くらいに思っていた。

そんな考えは、この日で終わった。だから覚えている。


女性が、出産した直後に子どもに初めて対面した時「殺しちゃいけない」と思った、というエピソードを聞いたことがある。

男でも育休を取れば、生きるとか死ぬとか、そういうことを嫌でも考えなければいけない、ということなのだ。


デニーズ 様

注文したベビーフードを持ってこられたときに「こちらたいへんお熱くなっておりますので…」と言われ、反射的に「なんでやねん」とツッコんでしまってごめんなさい。






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※今後このへんのエピソードを上げていく予定です。
もしもご興味ありましたらお話もしますので、お声がけくださいませ。


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