【詩】黒薔薇の森へ
勘違いしていた。
私はあなたにとても必要な存在なのだと。
ずっとそばにいて欲しいのだと。
そんなことは、ない。
と、ふいに気がついた。
それならどこか遠くに行こう。
どこに?
そう、黒い猫耳をつけて
黒い薔薇の咲く森の奥へ行こう
静かな心でいられる黒薔薇の森で
うずくまって眠ろう
歌が聴こえる
黒薔薇は暗い森でよく育つ
黒薔薇の魔法は暗い心によく育つ
黒薔薇に光る夜露を髪に
黒薔薇に舞ふ夜揚羽の鱗粉を唇に
黒薔薇の花びらを紅茶に浮かべ飲み干そう
爪も黒薔薇色になったなら
あなたは黒薔薇の魔法使い
そう?
まだ何か足りないでしょう?
ああ、呪文。
特別な私だけの呪文を。
早く唱えて。
黒薔薇色のカラスのがやってくる前に。
猫耳がとれなくなる前に。