舶来品
昭和10年代の私の母は
インポート物を「舶来品」と呼ぶ。
私が海外のブランドのものを持っていると
「それ舶来?」と聞くのだ。
私の娘たちはそれを聞いて
「舶来って死語~」と笑うのだが
私は上品な言葉だなあと思う。
まだまだ海外の情報も品物も簡単には手に入らなかった頃
貴重なありがたいものとして
それらが存在していたのを感じさせる言葉。
母の母、大正元年生まれの私の祖母は
シュミーズ、ズロース、という言葉をよく使っていた。
シュミーズ、シミーズとは今でいうスリップ。
フランス語でchemiseが語源らしい。
肩が紐のワンピース型の下着のこと。
ズロースは、英語でdrawersが語源。
今のパンティより少し丈の長いゆったりしたもの。
着物が日常着だった祖母の口から出るカタカナの外来語が
とても懐かしい。
祖母は、質素な暮らしでも
下着だけは清潔で良いものを着けていると言っていた。
若いころ、出かけるときには
「どこで倒れても大丈夫なようにきれいな下着を着けるように」
と言われていたものだ。
ズロースも和服の裾を気にするあまり
火事で逃げ遅れた人たちがいたことから生まれたものだそう。
電車に乗って娘と隣り合って座ると
「足を閉じなさい」としつけるのに苦労したものだが
生き方や考え方、生活様式もグローバルになり
とても自由だが
いろんな美意識や希少で貴重なものというのが
減っているようなそんな気もしている。
いや、単に私が年を重ねただけなのかもしれない、な。