村上春樹『象の消滅:短篇選集1980-1991』新潮社
たまたま『騎士団長殺し』を再読したことから、ここしばらく村上さんを読んできたのだけど、そろそろこの<村上さん再読祭り>も終わりである。今回読んだのは初期の短編集。それもニューヨークで出版された短編を同じようにまとめたもの。しかも中の1篇は英訳されたものを村上本人が再び和訳するという試み(「レーダーホーゼン」)。ほかの短編も初めて出版したオリジナルから手が入って違うバージョンになったものもある。作家としてスタート時の作品ということもあって、修正したり、違うバージョンを書いたりしたくなるのだろう。
わたしは小説を書きたいと思ったことはまったくない。リアリズム小説なら長く生きた分、ネタはあるかもしれないが、きっとおそろしく退屈な小説になるだろうし、村上さんみたいなマジック・リアリズムなんて、全然インスピレーションがわかない。今回読んで、やっぱり感心したのは「納屋を焼く」なんだけど、いったいどうやったらこういうのを思いつくんだろうと思う。すごいねー。と素人まるだしの感想(笑)。
最近の『女のいない男たち』などと比べたら、当然ながら全体に書いた作家自身が若いなぁと感じる。しゃれたアメリカ映画みたいな会話も楽しい。今回の、アメリカで発売したままを日本で読むという企画も面白いと思った。(長い序文で語られる雑誌「ニューヨーカー」への愛もご愛敬である。)で、そろそろ時ならぬ再読祭りは終わりにしたい。またいつか本棚から取り出して再読が始まるときまで、グッドバイ。