村田沙耶香『となりの脳世界』朝日新聞社出版
エッセイ本。「うわ、間違いなく変わってるわ、この人...」と読み始めて思ったけれど、でも実は少しだけ自分にもそんなところがあるな、とも思う。その「変わってる」と「わかる」の2極の間を揺れながら読んだ。ときどき吹き出しながら。
確かにそうだった!と思い出して懐かしくなったのは、「お風呂の中で水を飲むこと」。これはそのまんまの内容で、つまり、子どもの頃にお風呂の中で水道の冷たい水を飲むとやけにおいしかったという話だ。そんなこと、言われるまで完全に忘れていたけど、確かにおいしかった。ごくごく飲んだ、でもいまは全く飲もうとも思わないのはなんでだろうな。
可愛いいぬいぐるみがいるのに、親からプレゼントされたあまり可愛くないぬいぐるみに気を遣ってしまう話。駅で電車に乗るために急いでいるのに、発車前のバスの運転手さんにバスに乗ろうとしているのではと思われたくなくて気を遣う話。人の名前や顔が覚えられず、記憶違いをして呆れられる話。そのあたりは共感する。(わたしも多少は変わっていると自覚している。)でも「コンソメ」を「こそそめ」と大きくなるまで思い込んでいた話はすごいな。逆の正座とか、背泳ぎのように平泳ぎをするとか、だんだん「変わってるなぁ」と思う話も増えて、コンビニにラブレターを書くあたりもすごい。この人、ほんとにコンビニで今でも働いているらしいのだ。このエッセイ本を読んだあとは『コンビニ人間』は自然に生まれた小説なんだなと感じる
最後に、この人は電車に乗っている間、<外を誰かがずっと走っている>と想像するのだけれど、その想像をする人は世の中にちらほらいるらしくて、隣の人の脳の中はほんとによくわからないものだなと思った。
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