伊藤比呂美『ショローの女』中央公論新社
詩人伊藤比呂美さんの日々をスケッチ風に、というか独り言風につづった連載エッセイをまとめたもの。あっという間に読んだ。
比呂美さんはわたしより1歳年上、ほぼ同い年である。だからわかることも多い。むさくるしい格好で街に出ると、ホームレスに対するような冷たい対応をされること。年寄りは身ぎれいにしないと。大学での講義の奮闘ぶり。学生を思いやって、張り切っちゃうこと。すごくわかる。逆にまだわたしがわからないのは、ひとり暮らしの寂しさや退屈だ。比呂美さんは寂しいとき、生協のネット注文のカタログをじっくり見るという。「料理」する気にならず、単に「自炊」しているだけという。読むだけで侘しくなる。でも、きっと自分もひとり暮らしになったらそうなるのかもしれない。わりとお父さんっ子で、さびしがりやのイメージがある人だが(あくまでわたしの印象)、そういう人がひとりで暮らすのは辛いだろう。自分はどうなるだろう、と想像してしまう。植物や犬や猫たちがいるのはいいことだけど、病気したらとか、家を空けるときのこととか、やはりひとりだと心配なことが多い。
大の親友の枝元なほみさんとの交流が印象的。これはもう、ほんとうに特別な関係だからできることだろうな。そういえば昔このふたりのファックスの往復書簡『なにたべた?』を読んだ。あのころはふたりとも別の種類の悩みが多い年ごろだった。
老いた友人を久しぶりに訪ねたら、家が汚れていることに気づく話など、非常にリアルだ。わたしの家も本人は気づかないが汚れているのかもしれない。けっこう暗くなる。まぁ間違いなく、年を取ることは楽しいことではない。これから何をして本格的な老いの準備をしたらいいかわからないが、ひとりで機嫌よく暮らせることがカギかなと思う。あとは助けたり助けられたりするためのネットワークづくりかな。