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はじめまして、がんセンター

数あるがん専門病院の中から、ひとまず通いやすさで選んでしまった県立がんセンター。
昨日の今日の予約でトントンと来ることができました。

道が混んでいるかもしれないからと、前日から家に泊まりにきてくれていた母に子どもたちを任せ、みんながまだ寝ている間に早めに出発しましたが、案の定到着時間は遅れ、受付時間ギリギリに。

中に入り、受付へ。促されるままに初診窓口へ。
フードコートのベルにメッセージ機能がついたような呼び出しベルが渡されました。検査室や外来に来るよう促されるメッセージが電子音と一緒に流れ、到着したら機械にかざして知らせる仕組みのようで、こういったガジェット好きのわたしたち夫婦は少しテンションが上がります。

外来に着き、あとは医師の診察を待つだけ。
ここまでとてもスムーズで、待つストレスがほとんどありませんでしたが、それ以上に印象的だったのは応対してくださる医療事務の方や看護師の方、医師の方など、この施設に関わる全ての方のホスピタリティの圧倒的な高さでした。
ここは、がんの専門病院。医師からの説明書や同意書などの用紙の類をまとめるための、目立つグリーンのファイルを持った人は全員がん患者。
わたしの見た目が若かったということもあるとは思いますが、ただ案内をする、説明をする、それだけの会話なのに、その口調に乗せて「お大事にしてください」という気持ちが伝わってくるような。マスクで覆われていない目の表情だけで労わるような優しさが伝わってくるような印象を受け、それだけでもだいぶ緊張が緩まりました。

事務的な会話以上に、こちらに寄り添う言葉を積極的にかけてくださる方も多くいました。
言葉をかけると言っても余計な詮索などはせず、とにかく聞き上手で応援上手。不快な気持ちなど微塵も湧きません。
採血をしてくださった方は「お若いわね。応援したくなっちゃう。つらくなったら私にいつでも会いにきてくれていいからね、受け止めるから。私の元気、いっぱいあげるから。」と腕をさすってくれました。
CT検査の技師さんにも甘えさせていただき、手をギュッと握って元気を注入してもらいました。
自分が(ほぼ)がんであることを理解できている脳と、信じたくない感情が頭の中でないまぜになっているわたしは、優しさに触れるたびについ涙をぽろっと流してしまうのですが、どこで泣き出しても必ず一瞬でティッシュの箱を差し出されるので、その迷いのないスピード感に、ここがそういう場所であることを実感したりもしました。

いざ、外来での診察です。
ベルで呼び出され入った部屋では、わたしよりも少し若そうな男性の先生が迎えてくださいました。
「画像データで見る限りやはり悪性と考えていいでしょう。」
「大きさはおよそ4cmほど。この大きさになるには2年ほどかかっているのではないかな?と推測されます。」
「喉頭にもぽこぽこと腫瘍のようなものが見られるけど、見た目的に悪性っぽくはないかなという印象。別物であると考えてよさそうだけど、これも調べましょう。」
といった具合の診察内容でした。
4月1日に次男の入園式には出たいことを伝えると、お子さんはいくつですか?と聞かれたので、5歳と1歳ですと答えると、すぐペンを走らせしっかりとメモを取られていたのが印象的でした。
そうなんです。まだ5歳と1歳なんです。だから、死ぬわけにはいかないんです。と、先生の走るペンに念を押すように気持ちを送ります。

この日はこの後、検尿と採血にX線と心電図、肺活量検査、少し時間をあけておなかを空にしてからCTの検査で終わり。
明後日に胃カメラと大腸カメラをして、その結果をチームで話し合い、ステージの決定とそれに伴う治療方針を決め、その説明を25日にしましょう。というスケジュールに。
結果がわかるまで1週間以上かかってしまう間の不安と、検査の結果が悪かった場合は4月1日の入園式まで治療を待つのは大丈夫なのか、誤差の範囲になるのか?という点が心配要素でしたが、不安についてはデパスの処方があり、入園式ももちろん誤差なので大切なことを優先させましょう!とのことでした。

ここのところ検査続きでほとんど食事をとっていなかったことと、結果を受けてからあまり食欲も出ず積極的にごはんを食べられていなかったのですが、体力作りは大切です!食べられるなら食べて、積極的に歩いて運動して、子どもたちと楽しく、ふつーーーうの生活を送ってくださいね!との言葉を最後にもらい、診察室を後にしました。

その後はすぐに検尿と採血にX線と心電図、肺活量検査へ。
検査、少し待ちまた検査、の合間はずっと診察で先生に言われたことを少しずつ咀嚼していて、わりとぼーっとしてしまっていたり、ふと子どもたちのことを思い出して涙が込み上げたり、を繰り返していました。
過去も全身麻酔下の手術を受けるときに必ずやった肺活量検査では、年齢の平均以上ですね!とほめられました。どんなことでもほめられるって単純にうれしく、それだけでも少し前向きになれるので不思議です。

それが終わると、少し時間をあけておなかを空にしてからCTの検査です。腕から造影剤を入れて撮影するのですが、血管に造影剤が流れていくとその部分がジワッと熱くなるので、身体中の血管の存在と、そこをめぐる血流のあまりの速さを実感する不思議な体験でした。
まずは喉がカッと熱くなりました。その後、特にお股の部分が熱く感じるので、漏らしてしまった感覚があるかもしれませんと言われていましたが、本当にジワッと広がるので、おそるおそる「これは“気がする”だけで本当に漏れてはいないんですよね……?」と確認してしまうほど。
性器の関係なのかな……皮膚が薄くて敏感だとか……?などと冷静に分析などしながら、電子音の女性の声に従い息を吸い、止め、CTの輪をくぐっていました。

以上で本日の検査は終わり。
長かったですが、本当に待つストレスが少なく、また少しでも待たせてしまうようなことがある場合は皆さんが非常に敏感に気づかい働きかけてくださる印象でした。
一分一秒が惜しい人々が集まる場所だもんな……と思い、わたしも今後の結果がどうあれ、意識しなくてはならないことを教えてもらった気がして、何だか少し心の整理のつく思いがしました。

次にここに来るのは明後日、胃カメラと念のための大腸カメラ、またバセドウ病の既往があり甲状腺を全摘していてチラーヂンを飲んでいるので、問診があるそうです。
結果がわかる頃にわたしの誕生日があるので、先生の計らいで当日発表を避けていただきました。
それまでどういう気持ちで過ごせばいいかもわからず、自分の精神状態が心配ですが、とにかく自然と笑えるようなことをなるべくしよう!
そして、どういう治療になるにせよ体力は必要だと先生もおっしゃっていたので、歩き出した次男を連れて積極的に外に出よう!と思い立ち、翌日さっそく散歩に出ると、公園に足を踏み入れたその1歩目でいきなりまさかの大転倒。
抱きかかえていた次男を守るために咄嗟に受身の姿勢が取れたため、幸い次男は無傷でしたが、わたしは右脛を20cmほど派手に擦りむきました。
これが厄落としになったことを願うばかりです。

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