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患者経験から考える6〜移動の自由とご近所付き合い〜

患者経験から考える第6回
マラソン大会で訪れた地方都市で骨折して入院・手術へ。いよいよ病棟での日常生活がスタートします。

移動の自由を満喫

麻酔が切れた後の激痛の山を越えたら、翌朝には嘘のように痛みは引きました。医師から「足の手術は、直後が一番痛いけど、その後は引きが早い」と言われていたけど、その通りでした。朝の回診で、主治医から受けた術後の説明は以下の通り。

一時血圧が下がったが特に問題なく終わったこと、手術で処置をしていた足首周りの筋肉が発達していたのは、ランナーさんだからでしょうねと。生の筋肉を見ての感想はリアルです。10年走っていたことを認めてもらったようで、誇らしかった。

「で、何針縫ったんですか」と質問すると、「それね。よく聞かれるけど、部位によって縫う目の大きさが違うから、なんとも言えないんですよー」とのこと。「お裁縫みたいですね」と返すと、体育会系の主治医は笑ってくれました。外側は約10センチ、内側は約5センチ切ったそうです。2週間後に抜糸するので、それまでリハビリ頑張ってね、とのこと。

ということで、足の牽引と点滴が外れて、ようやく自由の身になった私。看護師さんに付き添われ、右足を床に付かないよう、ベッドから車椅子に恐る恐る移り、自分で車椅子を漕げた時の喜びと言ったら!  

寝ているしかなかった赤ちゃんが、寝返りから首をもたげ、ハイハイを成功させた時の誇らしげな表情は、もしかしたら、私が今味わっている移動の喜びの原点なのかもしれない。

なかでも嬉しかったのは、トイレに行けるようになったこと。排泄の自律は人間の尊厳と深く関わります。

病室というご近所付き合い

コミュニティにご近所付き合いは付きもの。3日間はベッドに固定されていたので、お向かいさんが車椅子で訪ねてくれていました。

ちょうど家族からみかんの差し入れが届いたので、手土産を持って今度は私が車椅子で移動してカーテンをトントン。病棟コミュニティのご挨拶は、お互いに「ここに来た訳」(病気話)から始まります。

整形外科は、いろいろな方がおられます。
Aさんは若いママさんで、バレーボール中にアキレス腱を切って手術を受けたけど、経過が思わしくなくて長期入院中。子ども2人を置いての入院、かつ面会制限で子ども達にも会えず。スマホでビデオ通話するのが精一杯。辛いですね・・。

Bさんは私が出ようとしていたマラソン大会に参加する予定だったけど、腕を怪我してDNS(スタートせず)。ちゃっかり参加賞のスポーツタオルをもらっていました。「きっと来年、走りましょうね」とお互い励まし合いました。腕の手術をされるそう。

Cさんは、70歳代の元気で明るいお母さん。半年待ちでやっと回ってきた膝の手術。お喋りが大好きで、初対面なのに、病気のことやら家族のことまで、いろいろなお話をしてくださいます。

Dさんは80歳代で一人暮らし。自宅のリビングで転んで腕の骨折。自分で救急車を呼んでここに運ばれて来たそうです。気骨のある生き方が素敵なお母さんです。

みなさんが話す地元の言葉が優しくて。気持ちがホッコリします。バレーボールのママさんから、ご当地のことを色々教えてもらいました。

そして私。自己紹介のフレーズは「県外からこちらのマラソン大会に走りに来て、スタート前に駅の階段で転んで骨折しました。もう笑うしかないです。よろしくお願いします!」。お仲間がいることは心強い。仲良くやっていけそうです。

今回はここまで。
次回は、リハビリスタートについて書いていきます。




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