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DAY2 病院とお見合い?

患者経験から考える 第3回。
マラソン大会に参加しようと出かけた先で足を骨折。「強制終了」されて入院することになった私 。その続きです。 

今日からここが生きる場所

とある地方都市の総合病院に入院した私は、4人部屋の窓側ベッドが割り当てられました。ここが当面私の居場所。

足を牽引しているため、ほとんど身動き取れないけれど、窓越しに外の景色が見えるので、時間の経過と天気が分かります。

病院はコロナ禍以降、原則面会禁止。退院まで家族に会えないことも分かりました。病院の建物は新しく、ベッド回りも小ざっぱり整えられて過ごしやすそうです。

いかんせん初めての病院で、失礼ながら病院の評判も知らなければ、どのような診療科があるのかも知らず(というか、興味が沸かなかった)。

救急外来で「いい感じ」を抱いたものの、病棟はどうか。私はどのように扱われるのだろう。

病棟看護師さんが、たびたびベッドサイトまで来てくれて、処置と看護をしてくれます。それを受動的に受けながら私は、「ここはどんなところなのだろう」「どんな人がいるのだろう」と、この場所の性格を掴むことにエネルギーを注いでいたような気がします。

お互いに見立てる

カウンセリングでは、カウンセラーはクライエントさんとお会いしなが、この方はどんな方かしらと、アセスメントをしています。でも、「実は逆もしかり」と言われています。

クライエントさんは、カウンセラーに悩みを話しながら、このカウンセラーはどんな人なのか?信頼できるか?話を聞いてくれるのか?など、初対面の場面から、一挙手一投足を見ていると。

支援者と被支援者の関係は対等で、お互いがお互いを見ているということ。ケアを受ける側になり、身を持ってその感覚を味わいました。

結果として、私はこの病院が気に入りました。信頼できたと言うべきか。看護師さんは、笑顔で毎回患者の名前を呼んでくれるし、動作がテキパキパキしているし、余計な事は言わないし、根掘り葉掘り聞かない。なんか感じがいいな、心地がいいなという印象。

入院手続き終わった頃に、病棟の看護師長さんが挨拶に来られました。丁寧な病院だなぁという印象とともに、大事にしてもらっているという気持ちに。

ところで、病院の日課って色々あって案外忙しいのです。朝のバイタルチェック、洗顔のタオル配り、主治医の回診、3度の食事、昼のバイタルチェック、患部確認、合間に清掃が入ったり、寝間着やタオルの交換をしてもらうなどなど。

1日の日課を一通り経験したら、 2日目にはベテラン患者さんのように病院生活に慣れていました。切り替えの良さに我ながら驚きます。これも病院スタッフさんのお陰ですね。

妙なテンション

入院当日は、気持ちはふわふわしていて、まだ現実感がなく、興奮気味でした。家族や友達との LINE のやり取りは妙にテンションが高くて。頭の中はクルクル回り、ひと月先までの仕事のキャンセルメール数十通を一晩で打ちました。

今思うと、ややマニック(躁的)だったなと。人は、不安や悲しみ、絶望など、不快な感情を無意識に回避するために、誇大的で高揚した気分になることがあります。心理的メカニズムのひとつで、躁的防衛と言われます 。

災害に遭った時などにも起こる、 人間誰もが持っている心を守るための術です。

でも、自分がそうであったのかもと気づいたのは、もっと日にちが経ってから。この状態は無意識的に起こるので、自分は大丈夫とか、思ったより元気だと思いがち。私もそうでした。 

欲しかった時間は手に入ったけど?

こうなる前日まで、私は回遊魚のように留まることなく動き回り、家にほとんどいない生活をしていました。仕事はもちろん忙しかったですし、同時並行する案件に押しつぶされそうになりながら、かろうじて息をしていたような状態でした。

今回のように、ときどき地方のマラソン大会に「旅ラン」に出かけ、それが貴重な息抜きとなっていたと思います。

怪我をしたことにより、向こう1ヶ月の仕事をキャンセルし、忙しいと嘆いていた日常生活に、突如として、膨大な自由時間が手入りました。

当時は、先に書いた妙なテンションの高さからか、「病院で何しよう~」とちょっとルンルン状態。

しばらく経つと気分も変わるのですが、それはまた後の回で。

説明と同意

入院2日目の朝、主治医が決まり「はじめまして、主治医のAです」と顔合わせと説明に来てくれました。 まだ若い男性医師で、いかにも体育会系の雰囲気(整形外科医に多いかも?)。明るくてテンポが良くて話しやすそう。というのが、患者としての私の印象。

主治医は所見を一通り述べた後、ちょっと厳しい表情になって「この骨折は重傷です」と言いました。

もしこのまま放置すれば確実に歩けなくなる(その選択肢はないです!といいましたが)。手術したとしても、ランナーとしてこれまでと同じには戻らない、と。

他にもネガティブな影響をあれこれ。医師として誠実に向き合ってくれているのだろうけど、一人で聞くには重かった。

で、「明日の夕方に空きが出たので明日手術をしましょう」とのこと。

24時間の冷却で足の腫れは少しはマシに。皮膚の状態もギリギリいけそう(腫れがひどいうちは手術できない)。

牽引で動けないのは拷問のようだし、点滴を付けていると動きが妨げられて不自由なので、早く決まってホッとしました。

手術の方法など説明を受けましたが「もうお任せするしかないのでお任せします」と言って同意のサインをしました。

入院した時点ですでに、主体性がどうのとか、選択権が…とか、そういう次元ではなくなっている。とにかく、折れた足の整復とこの痛みと不快感をなんとかして欲しい、という願いだけです。

今日の21時から絶食、明日の13時から絶飲と言い渡され、いよいよ手術となります。

今日はここまで。
次回は、手術体験を覚えている限り記録しておきたいと思います。


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