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2018/09|福江島|「かくれキリシタン」を辿る(1日目)

(2018/09/某日)記。

今年の夏は、だいぶ濃いものになりました。

まずは、安定の一人旅に夏は始まります。大学生活を送っている茨城県つくば市から青森県へ北上し、日本海側を南下して九州・佐賀県に旅しながら帰省。その後、福岡に住む幼馴染と島ネコへ会いに「相島」へ。そして車の運転免許を取るために、つい最近まで何故か徳島県にいました(免許合宿の申し込みが遅かったため、目星をつけていた場所はことごとく予約一杯で、残っていたのが徳島県のとある教習所でした)。

なんとか無事に試験は合格し、あとは筆記試験を受けるだけの状態で、一旦帰宅。そこから秋学期が始まるまで残りの夏休みを、佐賀か つくば で過ごすのかと思いきや、夏休み最後に大イベントがありまして。

大学3年生の春学期に受けていた、とある授業(というか教授)がとても面白く、夏休みに長崎で実習があると聞いて即・参加申し込みをしていたのです。・・・悉く、ノープランすぎる。なぜかと言うと、免許合宿が終わる予定日と実習が始まる日の間が2・3日しかなかったので、もしも試験に合格できなかったら免許合宿は延長されます(そして延長料金もかかる)。この実習に参加できなくなる可能性だってあったのです。一発合格を前提にしたスケジューリング…。

とまぁ、自分の無謀さに呆れるのはここまでにして。何が私をその実習に駆り立たせたかというと、ずばり「かくれキリシタン」という言葉です。実習地は、長崎県・五島列島(福江島、久賀島、中通島)と平戸市の根獅子町、生月島周辺。

今年の7月、「長崎と天草地方の潜伏期キリシタン関連遺産」が世界遺産に正式に指定されましたね。主に教会群が世界遺産の対象になっているのですが、ここまで来るのに色々あった模様でした。

・・・世界遺産は、複数の資産が対象となる場合、それらを一つにまとめる全体的テーマが必要であり、そのテーマが当該資産の「普遍的価値」を表現することになる。長崎の場合、当初は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」というテーマで、迫害による潜伏を経てカトリック信仰が「復活」するという物語を軸に、カトリック教会群の価値に焦点を当てていた。しかし、イコモスは、遺産の「普遍的な価値」は明治以降の「復活」にあるのではなく、江戸時代の「潜伏期」にあると勧告し、この物語の再考を迫ったのである。そこで、長崎、熊本両県は、資産構成の一部を削除し、その名称を変更した上で、焦点を「復活」から「潜伏期」に移して、資産全体の名称も「長崎と島原地方の潜伏キリシタン関連遺産」と全面的に一新し、ようやく世界遺産指定を勝ち取ったのである。これによって、相互に相容れない歴史を持つカトリック教会とかくれキリシタンの宗教実践が、歴史的、地域的文脈から離れて「潜伏期」という一つのテーマのもとに世界遺産として表象され、観光のまなざしの中に位置することとなったのである。・・・

山中弘「宗教学実習 於 五島・長崎」しおり より

私の故郷・佐賀県のお隣の県である長崎県は、独特な土地だなぁと、幼いころからちょっと感じていまして。古来より、外国の物珍しいモノや情報や人が入ってくる・交わる、開かれた交流地でありながら、どん詰まりのような閉鎖的な雰囲気も感じられます。「閉鎖的」と聞くと、前時代的で陰湿な、どちらかというとネガティブな印象を抱く人が多いと思いますが、閉鎖性は良くも悪くも、"独特な文化"として熟成されるためには欠かせない要素の一つだとも思います。「かくれキリシタン」の存在が、私が感じてきたその特殊性・独特性に拍車をかけていたような気もしますが、それが「観光地」の名のもとに、白日の下にさらされる(とまでは言い過ぎかもしれませんが)。

・・・今回の実習の問題意識は、今回のテーマの変更が観光の現場でどのような表現をされているのか、また、潜伏期へと焦点の移行に伴って否応なく注目されるようになる「かくれキリシタン」の存在や表象がどのようになっているのか、さらには本格的に観光のまなざしにさらされることになったこれらの地域にどのような変化が生じているのかを実見しようというものである。世界遺産は、過疎化、高齢化に悩まされる長崎県の離島地域の地域振興策の切り札的な意味はもっている。しかし、彼らの生活に埋め込まれ、彼らのアイデンティティの中核に存在していた宗教実践や聖地が、観光の文脈の中に組み込まれることでどのような変化と葛藤を経験しているのかを考えたいと思っている。・・・

山中弘「宗教学実習 於 五島・長崎」しおり より

「なかなか行く機会のない五島列島に行ける!」という実習に関係のない浮足立った感情から始まり、佐賀県にもいたとされる「かくれキリシタン」の歴史を辿ることで、巡り巡って故郷・佐賀のことももっと知りたい、「その前」と「その先」を想像するために「今」を見たい・・・そんな欲望に駆られて、いざ出発。フィールドノートを見ながら、さらっと振り返ってみます。

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2018年09月下旬。飛行機で羽田空港から福岡空港、そしてさらにそこから乗り継いで、「五島福江空港」へ。

2018年09月撮影

レンタカーを借りて、「長崎巡礼センター」のガイドさんと共に巡ります。

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潜伏キリシタン墓石郡

2018年09月撮影

まるで、人の家の畑の中にお邪魔している気分になる、そんな道を歩いて行った先に、ひっそりとあった。元々は藪の中にあったが、キレイに取り払われている。

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堂崎(どうざき)天主堂

キリシタン資料館

禁教令が解かれた後に作られた、五島における最初の天主堂(当時は木造)。現在は資料館として一般公開されている。当時は、舟での移動がメインだったため航路の拠点でもあり、また五島最初の天主堂ということで、「復活」後の活動としても重要な拠点だった。

2018年09月撮影|堂崎天主堂の近くにある公衆トイレ

「堂崎天主堂」の近くにあった公衆トイレ。天主堂を模した立派なつくり。「堂崎天主堂」を"観光地"として機能させるために、周辺施設を整えることに力を入れている印象を受けた。

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楠原(くすはら)教会

長崎県を中心にカトリックの教会堂を多く手掛けた建築家・鉄川与助(1879~1976)によって完成した教会。「ミナ」と呼ばれる貝を砕いて漆喰にし、仏教徒達も加わっての教会作りだった。そのため「自分たちの教会」という意識が非常に高い。

楠原牢屋牢跡

「カトリック」の戦いを後世に伝えるため、牢屋が解体される際に残された材木を使用して「再現」という形で保存した。

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三井楽(みいらく)教会

2018年09月撮影

1971年に現教会に建て替えられた、モザイク模様の壁画が個性的な教会。教会内部のステンドグラスも鮮やかで美しかった。

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椿とカトリック

五島列島といえば椿。椿という花は、花びら一枚一枚が散っていくというより、花自体が「頭ごと落ちる。=信者が首を切られて鮮血が・・・」という連想から、潜伏中はこれらを忘れないよう信仰を守るとされた(諸説あり)。

椿をモチーフにデザインされたステンドグラスをよく見かけるが、椿の花弁を4つにして(基本的に椿の花は5弁)、十字架に見立てているらしい。

そういえば、朧げな記憶だが、椿は家の庭に植えることがあまり好ましくない花だと、祖父母から聞いたことがあった。やっぱりそれも「椿は頭から落ちるから」ということで、あまりいいイメージが無いのだと思う。

◇◇◇

「(2018/09)久賀島・福江島|「かくれキリシタン」を辿る(2日目)」へ続く。

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