君たちはどう生きるか

今更見た感想というか、考察というか。
あらすじとかは書かないので、そういうのは他の人の解説を読んで。

感想

第一感として、難しいな。って思った。多分みんなそうだと思う。
でも、観終わったほかの人たちが「難しかったね~」とか「よくわかんない~」とか言ってるのを聞いて、なんかこれだけじゃダメだなと思った。
ってことで、いろいろ考えてみることにした。

考察

考察というか、妄想というか。
どうにか解釈しようと頑張った。
多少無理やりな部分があるけれど、そこは目をそらしてください。

ヒミとは何者か

まず最初に疑問に思ったのは、ヒミとは何者なのか。っていうこと。
いやそら、若かりし母ちゃんやろ。って、納得するのは早計だと思う。
だって名前が違う。
少なくともこの時代に、幼名をつけるような文化は無いはず。
アオサギと大叔父は例外として、ヒミ以外のすべてのキャラクターは、現実での名前を異世界でも同じように名乗っている。
ナツコもそうだし、キリコも、眞人も。
ではなぜヒミだけ「ヒサコ」ではなく「ヒミ」なのか。
母親だと思わせないためのミスリード?いやいや、そんなわけがない。
だとするならば、ナツコが早々に「姉」と呼んだりしない。
名前が違う。ということには明確に意味がある。

つまり、ヒサコ≠ヒミなのだ。
では、ヒミとは何者なのか。というのは、少し後回しにする。

なぜナツコは異世界に向かったのか

これも、観ていた時に謎だったポイントだ。
眞人は、アオサギに誘われて、結果としてあの世界に至った。
ではナツコはなぜ?
まあ、再婚した夫が連れてきた子供に愛想をつかされて、心理的に追い詰められていた。というのはあるだろう。でも、本当にそれだけ?
しかも重要なのが、描写的に「誰かに連れ去られ」という感じではなく「自分の足で、自分の意志で」という感じだったのがどうにも気になる。

あの異世界は何か

混沌とした世界だ。
ペリカンがいて、死者の魂っぽい生命体がいて、「わらわら」とかいうよくわからんのがいて。
かと思えば増殖したインコに支配されていて。
そういえば、関東で増殖したインコが枯らすとバトルしてるってニュースを見たような気が……
全く別の二つの側面は、別々で考えた方がよさそう?

まず、わらわらの件。
あれも、作中説明されている「生まれる前の子供」というのは違うと思う。
だって、もしあれが本当に生まれる前の子供なら、あの世界が崩壊して以降、人は生まれないということになってしまう。
でもそうはなっていない。少子化の傾向はあるけれど、いまだに人と人が媾えば子供は生まれる。
じゃあ、あれは何なのか。

もっと言うと、キリコは何者なのか。っていうことにもなる。
眞人と同時にこの世界に来たはずのキリコが、すでにこの世界で重要な役割についている理由は?
仮にあれが、幼きヒサコと共にこの世界に来た若きキリコだったとして、じゃあ彼女がこの世界に来る前は、誰が魚を捌いていたのか。
大叔父自らが?というのも考えにくい。つまり、いろいろと矛盾が生じる。

仮説

この不可解極まる状況を、何とかうまいこと説明できないかな。
と、考えたとき、一つの仮説が思いついた。

この世界はもしかしたら、ナツコによって構築されているのでは?

ということ。
大叔父というのは、ナツコによって役割を与えられただけの存在で。
この世界の本質は、ナツコの妄想というか、現実逃避なのではないか。
そう考えると、なんかピースがうまいことはまる。

妄想①

ここからは、ちょっと妄想が混ざるけど、まあ。

この世界にヒミが召喚されたのは、物語当時からちょうど一年前になる。
戦争が始まって3年後、つまりヒサコが火事で命を失った瞬間のこと。
姉を失い、姉の夫であるショウイチと結ばれる。罪悪感と、コンプレックスみたいな感情で、石の世界と『ヒミ』という存在が生まれた。
ヒミが幼い少女の姿なのは、ナツコの記憶にある『ヒサコ』が、まさにその姿だったから。
たぶん、幼いころに都会に出たヒサコの大人の姿を、ナツコは知らない。
だから少女のころのヒサコを『ヒミ』として創造した。同時に、世界がつじつまを合わせるように、ヒサコは一年間消失したという事実が(後付けで)構築され、キリコも巻き込まれてこの世界に漂流した。

つまり
・ヒミ→ナツコによって創造された、架空の存在
・キリコ→その時代にヒサコが消滅した都合で、巻き込まれ召喚された
みたいな?

ナツコにとって『ヒサコ=ヒミ』は火事で命を失った存在だから、ヒミは火炎系の能力を得た。キリコが類似した能力を持っているのも、その影響。

だってそう考えないと、変だよね。
もしヒミが、当時普通に神隠しにあっただけの少女だったなら、その当時のヒサコはまだ火事で命を失ってないじゃん。なのに炎系の能力を使えるのは、なんで? ただのチートスキル? ってなる。
でも、ナツコにとってのイメージが元になっている。となれば、そのあたり説明できるんだよね……

妄想②

ショウイチと正式に結婚し、姉の死から一年が経過したころになって、ナツコの心もだいぶ落ち着いてきていた。
しかしある日、ショウイチとヒサコの息子である眞人と出会って、心境が揺れる。
なんとか眞人の母になろうと努力をするも、自分自身の罪悪感もあり、互いに歩み寄ることができない。
そんな心境を反映してか、世界はアオサギという存在を生み出した。

アオサギは眞人を、ナツコの生み出した異世界へ誘惑する。
それはナツコの「眞人を母に会わせたい」という気持ちと「眞人をこの世界から消してしまいたい」という気持ちが合わさっていた。
眞人が連れ去られそうになっているところに鏑矢を放ち、何とか守り切ることはできたが、それでも受け入れてもらえない事実に、次第に精神が弱まっていく。

そして彼女は、自らが生み出した異世界へと逃げ込むことにした。

補足

テーマの多重性

この話を複雑でわかりにくくしている要素の一つに、テーマの多重性があると思ってる。

少なくともこのお話には
・眞人のテーマ :「君たちはどう生きるか」
・大叔父のテーマ:「継承?」
・ナツコのテーマ:「罪悪感?」
の、三つの重要なテーマが混在している。
他にもあるかも。キリコとか、ヒサコ(ヒミ)とか。

例えば、インコとかペリカンとかが出てくるのは、基本的に大叔父のテーマかと。
なんとなく、天に上る「わらわら」は、作品を見たり観たりした人の素直な感想なのかな。って思った。
美味え作品を食べて素直に「おもしろい」と思える人が、どれだけいるか。
その感情を邪魔するのは、ペリカンみたいな無粋な感想を言う人だったり。
つまり、この作品の感想なんて書いてる私も、まさにペリカンと同じことしてる。でも許して。死んだら墓には埋めてね。

最初に「この塔に積み木を一つ足してくれ」って言ったのは、ジブリ作品という枠を受け継いでくれないか? みたいな提案。
でもそれは無理だなぁ、って思ったから次に提案したのは「材料は用意したから、これで試してみてくれ」みたいな。何とか、自分の作品を継承しようとする。だけどそれも、拒まれる。
拒まれるというか、インコ王という第三者の邪魔が入って、台無しになる。
積み上げてきたものも崩れて、だけど気づく。俺のサポートなんてなくても、こいつらはうまくやるだろうな。ってことに。最後は背中を押してあげる。老兵は死なず只消え去るのみ。

まあでも、なんか欠片の一つでも持ち帰ってくれたらうれしいな。

まとめ

今回のNoteでは、あえて「罪悪感」というテーマに絞ってみたわけです。
私自身結論としては「よくわからない」ってことなので。
こうじゃないか。
みたいな意見とか考えとかある人は、コメントしてくれると嬉しいです。


よろしくお願いします。