レンタルで借りたので、HELLO WORLDを考察し直してみた

この記事を書いた時点で、HELLO WORLDはAmazonでレンタル可能となっていたのでそれを基に当時見た時の疑問について考えてみました。ちなみに小説は未読なので映画のみから考察しております。
感想としては、とにかく瑠璃が可愛くて面白かったです。
以下に、動画で解説したバージョンを貼っておきます。

公式がそうしてるっぽいので、子供の堅書直美を堅書、大人の方をカタガキと表記します。先生とは、2037年のカタガキです。

・ラストシーンの意味
月面のシーンは、2047年の現実世界である。2047年のカタガキは何らかの理由で脳死している。2037年のカタガキ(先生)を2047年のカタガキにマッチさせるため、瑠璃はヤタガラスの姿で奔走していたわけだ。作中では、使い魔的な存在かと思われたヤタガラスは、実は2027年の世界で先生よりも先に現れている。中盤にヤタガラスは2027年の堅書に対して「ずっと見ていた」と発言するが、確かに前半はたまーにカメラの視点がヤタガラスの視点になっている部分がある。これはただの使い魔ではなく独立して見守っていたとも捉えられる(?)。また、グッドデザイン(ヤタガラス)は2027年に直接干渉することが可能だが先生は直接干渉することは出来ない。つまり、グッドデザインの方が権限が与えられている。だからヤタガラス(瑠璃)は2027年にも2037年にも表れ干渉し、最終的に先生の精神を2047年にマッチさせることができた。

・ヤタガラスは本当に一行瑠璃なのか
ヤタガラスは一行瑠璃である。中盤のシーンで2027年の堅書がヤタガラスと会話するシーンがある(「喋れたんですか」、「喋れます」みたいなやり取り)。ラストの月面のシーンでは、今まで喋っていたヤタガラスの声と一行瑠璃の声がシンクロするシーンがある。これはヤタガラスが瑠璃であることを表している。また、月面のシーンの瑠璃の白衣には金色の羽のピンバッチが付いている。金色の羽は作中で何度も出てきていた、頭頂部が金髪のヤタガラスの羽である。

・月面のシーンは現実世界か、それとも仮想世界か
結論として、これは現実世界である。この答えは作画的に表れている。映画全体を通してキャラクターは3DCGで表現されている(昔のAKIRAのCMみたいな)。その理由として、物語は現実ではなく記憶媒体の世界の話だからということが考えられる。しかし、最後の月面のシーンのみ全編通常のアニメーションで描かれている。これは、月面のシーンは記憶世界ではなくて現実世界であるということを作画で表現している。だから月面のシーンは少なくともこの映画としては現実を表している(SF的にいったら結局それもまた別のコンピュータの世界だったってことは十分ありえますが)
もう1つ理由を挙げるとしたら、アルタラが月面上に描かれているのがかなり現実世界っぽく感じる。2027年と2037年はどちらも記憶世界で、アルタラは京都に存在した。京都にアルタラが存在するということは、アルタラ内の記憶の中にも過去のアルタラが存在する。つまりアルタラの中にアルタラが、そのアルタラの中にアルタラがという風に無限に記憶世界を考えることが出来る。その中から1つの世界をピックアップすると、その世界がアルタラの記憶内の世界である可能性は確率的に高そうに思える。しかし、現実世界では月面上でアルタラ(京都の記憶)を作っている。この月面上のアルタラの中には、京都が記憶されているだけで、月面上のアルタラというものは記憶されていないはずだ。なので、アルタラが月の上にあるというのは内的ループから抜け出しているような感覚がある。(すみません。感覚的に伝わったらいいんですけど。)
全く別件で、シロツメクサ畑のシーン月のカットとかが写ってるんで、そこが伏線になってるだけかもしれない。

・なぜ先生は瑠璃に拒まれたのか
先生は2027年の瑠璃の精神を、2037年の瑠璃の精神に入れた。2037年の瑠璃は意識を取り戻し、落雷で10年間眠って居たことを告げられる。その後に先生は瑠璃にキスをしようとするが、ギリギリのところで拒まれる。瑠璃は2027年の精神を持っているから、キスの相手が堅書ではない(先生である)ことに気づいた。それはなぜか。瑠璃は、キスを拒否する直前に「あの本…」と言う。あの本とは、一度は燃えてしまったけれど堅書が復活させ、貸借カードの1行目に”一行瑠璃”と記入してくれたあの本である。あの本は2027年の堅書が先生の協力のもと復活させた、2027年のオリジナルのもので2037年には存在しない。瑠璃は、あの本のことをおそらく記憶としてではなく直観で覚えていた(記憶は当然なくなっている)。それだけ、あの本は瑠璃にとって重要な本だったのだ(あれだけ素敵なことをやったら、そりゃそうや)。ちなみに、2027年の瑠璃の最終的な精神のマッチ度(カラスのゲージ)は、閾値100を少しだけ超えている。このズレが原因で後々、自動修復の狐も来てしまう(ちなみに、現実世界へと戻っていく2037年の先生の最終的な精神のマッチ度はちょうど100.00であることが月面のシーンでかかれている。つまり、丁度100.00である必要があった)。この2027年と2037年の瑠璃の精神のズレはおそらくあの本が原因だ。古本市の火災事件の後、先生はひたすら瑠璃を励ますことで解決したと話していたが、2027年では本が再生され別の思い出が出来てしまっていたのだ。そして、先生は2037年で復活した瑠璃に対して、「これ覚えている?」みたいな感じで栞を渡す。これは前半で瑠璃がバスの中で落とした栞である。これは落雷時に瑠璃が持っていたこともあるが、おそらく2037年では一番の思い出(出会いの思い出)の品である。しかし、2027年の瑠璃の精神では一番の思い出はあの本のことだった。そこで思い出に齟齬が生じ、瑠璃は直観的に何かが違うと感じたのだと思う。先生が優しさで堅書に協力してしまったばかりに。