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brainy_aster530
宝石の夢
私は、夢を買うことにした。
お金で買える、とびっきりの夢だ。
夜空にトパアズの月が浮かび、エメラルド色の妖精が踊る。
紅玉の女王とお茶をしながら、気まぐれなオパールの噂話に花を咲かせる。
ラピスラズリが相変わらずの毒舌を発揮し、クンツァイトがそれをたしなめる。
クリソコラは素知らぬふりで干しなつめをつまむ。
ハーキマーとトルマリンは次の舞台の準備にいとまがない。
スピネルは愛をささやき、その結晶は星屑となり瞳に宿る。
夢はいつか覚め、枕元に宝石だけが残る。
そんな夢も悪くない。
この夜が明けるまで、もう少しだけ、夢を見よう。
どうせ墓場には持っていけないのだから。