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WEリーグ第21節東京ー仙台レビュー(ピックアップチーム:日テレ・東京ヴェルディベレーザ)

ピックアップチームは、日テレ・東京ヴェルディベレーザ

 WEリーグも残り2試合となりました。第21節は、国立で行われた、既に前節で優勝を決めたINAC神戸レオネッサ対皇后杯女王の浦和レッズレディースの試合が1万人以上の観客を集めたことで世間の注目を少し浴びましたが、耳すまでは、ベレーザをピックアップして、マイナビ仙台レディースとの試合をレビューしていきます。
 ベレーザは、女子サッカーを少しでも知っている人なら、誰もが聴いたことのあるような、多くの素晴らしい選手を輩出し、輝かしい成績をおさめ続け、女子サッカー界を長きにわたり牽引し続けてきた老舗クラブです。前身をさかのぼっていけば、1981年に創部、Lリーグやなでしこリーグ時代を含めると唯一2部降格を経験したことがないクラブであり、リーグ優勝17回、全日本女子選手権優勝15回等、主要大会タイトル獲得数は女子サッカー界の中で群を抜いています。一時的に興隆を築くということはあっても、これだけ長い年月をかけて大きく質を落とすことなく高いレベルを維持し続けてきているという事実は、なかなか並大抵のことではないです。

 直近の皇后杯では、下部組織であるメニーナが準決勝まで進むという快挙を成し遂げるなど、育成組織の充実も続いており、歴史があることにおごるところなく、これからも大いに期待でき、女子サッカー界を牽引していく存在であり続けることを予感させるクラブでもあります。

 2021年12月26日、皇后杯第4回戦で後にWEリーグ初代女王となったINAC神戸に勝利したメニーナの試合のハイライトはこちら↓

 偉大な歴史と未来への期待の両方を兼ね備えたベレーザですが、ホームページを観ていてふと印象に残ったのは、サッカーが強いという要素だけではありませんでした。あまり知られていないと思いますが、多岐に渡るファンサービスや社会貢献活動を行っていることが分かりました。

 例えば、2022年3月14日には、元なでしこジャパンとして有名な岩清水選手が、ソーシャルフットボール日本代表ミーティングに参加しています。これは、WEリーグ全クラブが義務付けられている試合の無い節に行われているWE ACTION DAYとは別に、独自で行った活動のようです。ソーシャルフットボールとは、精神障がいのある方によるフットサルのことで、筆者も実は過去に精神疾患に悩まされていた時期があり、長くサッカーをやっていなかった時期があったのすが、ソーシャルフットボールとの出会いを契機としてサッカーと再会したという経緯があり、だからしてソーシャルフットボールの存在をよく知っていたのですが、一般的にはまだ認知されていないというのが現実だと思います。しかし、岩清水選手のような知名度のある選手がソーシャルフットボールと関わりをもっていたということを知り、少し驚きました。まだソーシャルフットボールは日本代表レベルの活動となると男子の方が圧倒的にさかんですが、決して女子選手がいないわけではないようなので、「サッカーを通して精神疾患が寛解していく・回復していく」というプロセスを身をもって体験したことを生かし、耳すまとしても、女子のソーシャルフットボールを何らかの形で応援していくことができたら!と考えています。

 こうした社会貢献活動の他、ベレーザはファンサービスも積極的です。WEリーグ初ゴールを決めた選手の記念グッズを、どうやら毎度受注販売している模様なのです。WEリーグのすべてのクラブがこうしたファンサービスをやっているわけではないです。Twitterなどを見ていても、記念グッズがほしい!という様々なWEリーグクラブのファンの声は度々見受けられるので、そうした潜在的なニーズをしっかりとキャッチできているということはさすがと感じました。直近では藤野選手のWEリーグ初ゴール記念グッズ受注販売のニュースがありました(5月8日で藤野選手の受注販売受付に関しては終わっているようですが)。
 今回ピックアップした試合では、宇津木選手がWEリーグ初ゴールを決めたので、また記念グッズ受注販売のニュースがそのうちあがってくるのではないでしょうか。要チェックです!

 また、今回調べてみて、ベレーザのホームタウンが、「北区・板橋区・稲城市・日野市・多摩市・立川市」の6つの都市であることも初めて知りました。広範囲でありながらも、決して派手な印象ではない都市が点在したホームタウン設定も非常に印象に残りました。冒頭で取り上げたソーシャルフットボールへの取り組みやWE ACTION DAYの活動に限らず、常日頃から地道に様々なホームタウン活動を実施しているようなので、サッカーの強さだけではない、こうした地域密着的な活動努力やファンサービスの工夫等についても、今後も注目し続けていきたいと思いました。

試合全体の印象と考察

 この試合、最も印象に残った熱いシーンは、交代出場で入った宇津木選手のゴールのシーンである。交代出場してから、決定的なシュートを外してしまったり、味方と嚙み合わなかったり、といったプレーが続いていた中で、そこで諦めずに、最終的に決めたゴールは、宇津木選手の執念のようなものを感じさせた。右サイドの清水の縦パスを藤野が前線で受け、反転してゴール前でシュートを放ち、相手GKがはじいたところを、長距離ランから駆け込んで押しこみ、執念でゴールを決めた。決して、こぼれたボールにたまたま居合わせて詰めた、というゴールではない。遠距離から、「ここにボールがこぼれてくる」という鋭い予測・読みがあったからこそ、肝心なタイミングで猛ダッシュして詰めることができた。ゴールへの執念と言ってしまえば、単なる精神論になってしまうが、ボールがこぼれてくる位置を予測する鋭い読みがあったからこそ生まれたゴールだったということができるだろう。
 試合全体を通しての印象としては、ベレーザの両サイドの仕掛けが非常に脅威になっていたこと、テンポの良いパスワーク、に対して、仙台はGK松本やCB市瀬を中心に堅い守備網を張ることはできていて、緊張感のある試合となった。仙台の攻撃面でも、前節では出場しなかった宮澤選手が前線で躍動したり低い位置まで落ちてきてボールに関与することでチームに落ち着きをもたらしたり、大きなアクセントとなり、決定的なシーンにはほぼ全て絡んでおり、ゴールシーンも本人だった。また、後半頭から交代出場した船木選手も攻守に渡り活躍が目立った。軽率にオフサイドにひっかかってしまうシーンが多かった点は課題である。
 実況解説によると、ベレーザの平均年齢が23歳、仙台の平均年齢が24歳という話も出ており、若いチーム同士の対戦となった。粗削りなプレーもあるが、今後の両チームの更なる発展に期待したい。

先発選手の印象

GK田中 27分、池尻との1対1の決定的な場面でしっかりとブロックした。45分にも決定的なピンチ、長野の枠内シュートを鋭い反応でセーブした。49分には、右サイドの清水に良いタイミングで正確なフィードを送る場面もあった。51分の失点シーンは最終ラインのDFとの連携の問題で、非常に勿体なかった。宮澤が狙ってきていることやセーフティにプレーするコーチングの声を出せていたかどうか。

右SB清水 いつも通り豊富な運動量で攻守に渡り大活躍。他の選手からの清水へのパスは、普通の選手に出すパスよりも「思いっきりスペースに走らせる」というメッセージのあるパスが多く、長い距離を何度も走り続けられる清水の凄さを物語っていた。先制点も、藤野による、清水を走らせるパスにしっかりと余裕で追いつき、クロスをあげたかのようなボールが結果的にゴールに吸い込まれる形となった。リスタートの早いスローインも印象的。

CB土光 54分、左サイドに正確なフィードを供給。

CB村松 5分、左サイドタッチラインで待つ山本に、正確なフィードを送った。24分、鋭い読みで相手の縦パスに反応、攻撃のきっかけとなるインターセプトを見せた。51分、安易なGKへのバックパスを宮澤が逃さず奪われ失点。宮澤の足の速さのリスクを頭に入れ、セーフティな判断をしていれば防げたか。

左SB宮川 攻守に渡り活躍。11分、ラボーナトラップから、浮き球で同サイドに展開する等、しばしばファーストタッチの置き所の巧さを見せつけたり、状況判断でダイレクトパスを選択するなど、クレバーでテクニカルなプレーを連発した。21分には、高い位置でインターセプトし、ゴールに向かって積極的にドリブルで仕掛け、枠内シュートを放った。

インサイドハーフ三浦 19分、ターンしながらインターセプトするという難易度の高いプレーを見せた。32分にはオーバーラップで前線で絡みシュートを放ち相手に当ててCK獲得。54分にも同様にオーバーラップしたのち相手に当ててCK獲得。

インサイドハーフ木下 攻守に渡り、高い判断力を感じさせるプレーをしばしば見せた。67分、相手にボールを奪われてしまう場面があったが、その後、しっかりと戻って奪い返した。後半はコーナーキックのキッカーを務めることも。フル出場した。

インサイドハーフ中里 30分、ゴール前で決定的なシュートを放つが、相手GKの好セーブでゴールならず。42-43分、隅田のファーストタッチを鋭い読みで奪うが、奪い返される。49分、素晴らしいボールコントロールから、清水を走らせるパスを供給。

右FW藤野 1試合を通じて、非常に効果的なドリブルの仕掛けから多くの決定的な場面を作り出しており、宇津木のゴールのきっかけとなるシュートも放った。度々センタリングクロスが相手GKにキャッチされるシーンが見受けられた。中央の味方選手が入ってくるタイミングに合わせたクロスボールや、GKやDFがキャッチやカットしにくい質のパスを供給できるようになると、より脅威となるだろう。60分、中盤でインターセプトしてそのままドリブルで駆け上がり、決定的な場面となるが、相手DFのプレッシャーもあり、枠外シュートとなってしまう。

FW山本 藤野同様、積極的な仕掛けのドリブルで相手の脅威となっていた。足の速さも大きな武器。後半からは右サイドでポジショニングすることが増えたが、どちらのサイドでも変わらない高い質の仕掛けるプレーができることを見せつけた。69分、右サイドからの仕掛けから、完璧なクロスを上げるも、宇津木がシュートをふかしてしまう。激しい運動量・ボールに多く関与していたこともあり、83分に足がつってしまうシーンも。しかし、そのシーンの直後に、宇津木のゴールが決まった。

中央FW菅野 5分、前線から山本がインターセプトしてチャンスメイクし、相手のクリアボールに対しダイレクトシュートを放ったが相手GK正面だった。30分、前線で木下と細かい局面で何度もパス交換。前半はコーナーキックのキッカーをつとめ、質の高いキックをみせたが、ゴールにつながることはなかった。49分、前線でボールを奪い、チャンスメイクした。52分、相手に囲まれながらもしっかりと縦パスを受けてなんとか味方につなぐ粘りのあるプレー等、中盤まで落ちてきてポストプレーすることも何度かあった。

交代選手の印象

MF宇津木 62分、菅野に代わって出場。前述した通り、入ってしばらくは精彩を欠くプレーが続いていたが、そこで腐ることなく、鋭い読みと猛ダッシュ・執念・様々な要素が詰まった素晴らしい詰めのゴールを決め、勝利の立役者となった。

MF岩崎 62分、中里に代わって出場。64分、相手に当ててCKを獲得。物怖じせず、パスを要求する姿勢も見られた。87分、木下のコーナーキックに合わせてシュートを放つも弱くゴールならず。

MF木村 85分、足がつった山本に代わって出場。86分、藤野の仕掛けるドリブルが相手に奪われそうになったところを、しっかりとカバーリングし、ボールをつなげるプレーがあり、またその直後にはCKを獲得するプレーもあった。88分、右サイドでボールを受け、相手に当ててスローインを獲得。91分には、藤野と連携して、ボールコントロールに定評のある長野からボール奪取し、前線へドリブルで駆け上がるシーンも。

まとめ

 豊富な運動量、積極的な仕掛け、細かいパスワーク、さりげないファーストタッチの質の高さ等、観るものを惹きつけるサッカーを展開していたベレーザ。欲を言えば、細かいパスはつながるものの、クロスボールの出し手と受け手の呼吸が合わないシーンが多い印象があったため、その点の質が上がると、よりゴールを量産するチームになるのではないかと感じた。ゴールを決めた宇津木選手だけでなく、交代選手も堂々とした活躍を見せた。対する仙台は、後半から入った船木選手が攻守に渡り存在感を放っていて、今後注目したい選手として印象に残った。この試合はフルタイムyoutube配信された。気になる方は是非、観てみてください!

 最終節、ベレーザはレッズレディースと対戦。当サイトのピックアップチームはレッズレディースだが、この試合を観た限り、非常に見応えのある、面白い試合になりそうである。


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