ミニラブレター 隼人side



「いらっしゃいませー!」

自動ドアが開き、入ってきたお客さんの方へ顔を向ける。

あ、愛華ちゃんだ!
まぁた不機嫌そうな顔してる……
にこにこしてたらめちゃくちゃかわいいのに、もったいない。
でも、他のヤツに目ぇつけられても困るから、それでいい。
他の誰にも、彼女のよさなんて知られたくない。
それを知ってるのは、僕だけでいい。

愛華はいつものカフェオレとチキンサンドを持って、レジにきた。
これからまた公園で絵を描くはずだ。
それはお昼すぎに仕事の終わる彼女の日課だった。

愛華はじろりと僕の方を見つめた。

う、目つき悪い……でも、それもかわいい。

接客用のスマイルを顔にのせたまま、ビニール袋に慣れた手つきで商品をつめる。
こっそりといつものメモを忍ばせて。

「ありがとうございました!」

ぺこりと一礼すると、愛華はぶっきらぼうに袋を受け取り、コンビニを出ていった。
今日のリクエストは僕の好物のしょうが焼きだ。
思いつきではじめた夕飯のリクエストメモは、毎回希望を叶えてもらっている。
メモについては何も言われないけど、必ずそれを作ってくれる彼女の行為にはちゃんと愛を感じている。
勤務時間が終わり、制服から着替え、寄り道もせずに愛華の待つ家に向かう。
今日も愛情の証をたらふく摂取するために。


#小説 #短編小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?