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「顧客の苦難を追体験することに繋がった」ー新規事業育成プログラムを通じて実感した、新規事業を生み出す苦労、そして顧客への向き合い方の変化

みなさんこんにちは。
ミーミルnote編集部の眞下です。

突然ですが、ユーザベースの社内新規事業育成プログラム「think beyond」をご存知でしょうか?(第1回目プレスリリースはこちら

2020年に開始した本プロジェクトですが、2022年6月から2023年6月の約1年間に渡り、第2回目が開催されました。
国内外含め43件のエントリーがあり、そのうち最終審査に通過したのは15件。
その最終プレゼンが先日の7月上旬、豪華セットが組まれた丸の内オフィスで行われました。

今回は、第2回think beyondに挑戦したミーミルの藤田さん(藤田 尚之)と名智さん(名智 伸明)のお二人に、それぞれが新規事業提案に取り組んだきっかけや、約1年のプログラムを通じて得た経験や苦労話など、お話を伺いました。


ユーザベースにいることで、新規事業が身近に感じられた

まずは約1年にも渡る長期プロジェクト、本当にお疲れ様でした!
色々伺ってみたいのですが、まずはお二人がthink beyondに応募した理由について教えてもらえますか?

名智さん
まさにユーザベースにいること自体が、新規事業を始めやすい環境だったと考えています。

僕たちの場合、普段の仕事を通じてSPEEDAやNewsPicksを通しての多様な経済情報や、各領域のエキスパートの知見に触れられる機会が非常に多くあります。
その中で、事業のアイデアとなるような様々な情報のインプットのチャンスが身近にありました。

特にNewsPicksの記事や動画のコンテンツが大好きで、普段からよく観ているんですが、そこからも得られる発見や気付きがたくさんあって、ユーザベース内には知的探究心をくすぐる情報がいっぱいあるんですよね。

そうやって多くの有益な情報や知見に触れていると、自分の中にも新規事業につながるアイデアが生まれてきて、「自分でも新規事業を立ち上げたい」と思うようになったんです。

元々、起業して独立したいという思いもあったので、think beyondで新規事業立ち上げを実際に行えるのは良い機会だと思い、参加することを決めました。

藤田さん
僕の場合は、事業開発や事業経営のスキルを伸ばしていきたいという思いが以前からありました。

前職で、ヨーロッパの脱炭素技術を日本に持ち込む新規事業の立ち上げにアサインされたことがあって、それがめちゃくちゃ面白かったんですよね。

事業開発関連にキャリアを振っていきたいと考えるようになったことが、ミーミルに転職した理由でもあったので、自分で新規事業を起案できるのは良い機会だと思い、参加することにしました。


どんな事業アイデアを提案されましたか?

名智さん
大手企業の企画系の方々をメインのターゲットとし、「中長期視点で取り組むべき課題の解決」に向けたサポートをするサービスを考えました。

重要度は高くても緊急度が低いような企業課題は計画的に着手されない傾向があり、組織として取り組んでいく意思決定がしづらいものであると考えています。
また、日々クライアント企業をご支援させていただく中で、企業の組織や自社の事業からのバイアスを受けずに、新規事業や経営企画系の担当者が「正しい問い」を生み出すこと自体の難しさを感じていました。

そこで、このサービスでは、お客様から自社の中長期課題を提示いただき、第三者の専門家がそれを客観的な視点で紐解いて整理・見える化するサポートを行います。
それによって、中長期の複雑な問題として捉えられていたこともタスクベースに置き換えられ、解決までの筋道を見出すことが可能となります。

また、そうして詳細化された各課題に対しては、適切な形で解決可能なプロダクトやサービスとのマッチングの機能も提供し、ソリューションまで一貫した体験を届ける事業アイデアを考案しました。

藤田さん
僕は転職支援におけるサービスを提案しました。
転職を検討してはいるが、なかなか一歩が踏み出せない大企業に務める若年層をターゲットとし、自分と似たようなキャリアパスを経て成功しているロールモデルに話を聞くことができるという内容です。
この事業アイデアの起点には、自分自身の転職経験から得た気付きがありました。

それは、転職を決意する上で、転職後の成功イメージを掴むことができるかどうかが非常に重要である、ということです。

キャリア形成の観点から転職を考えているものの、転職した後、自分の思い描くキャリアアップやそのための経験を積むことができるのか?と不安に感じ、なかなか次の一歩が踏み出せない転職希望者は多いと感じています。
そういった人々にとって、自分と似たキャリアから実際に転職をし、理想のキャリアを先に歩んでいるロールモデルの話を聞くことは、転職の意思決定において非常に有用だと考え、そのマッチングを生み出すサービスを起案しました。

お二人とも、業務や過去の経験から得た課題感が起点となって、事業アイデアに繋がっていったんですね。主業務と並行してプロジェクトに参加するのは大変だったのではないですか?

名智さん

去年の6月からプロジェクトがスタートしていて、最初の3ヶ月くらいは隙間時間を見つけながら進めていました。
9月の二次審査通過後は、業務時間の20%までをthink beyondに使って良いというルールが正式に設けられているので、それ以降はより多くの時間を割くことができましたね。

もちろんメインの仕事がハードだったり、繁忙期を迎えたりすることもありましたが、プロジェクトとの両立を図るためにも主業務の仕事を効率的に行うなど、働き方の工夫も意識することで、結果的に相乗効果があったように思います。

藤田さん
主業務とプロジェクトとの両立は大変で、パツパツになりながらやってましたね(笑)
通常業務が終わった後の時間を使うなどして取り組んでいました。

というのも、僕はこれまでマネジメントにチャレンジしていきたいと言っており、SPEEDAの役員で僕の直属の上司でもある西川さんから、マネージャーロールを徐々に渡してもらえるようになりました。
ミーミルやユーザベースでは、社員のWill(意志)を尊重して支援してくれる環境がありますよね。

そういったこともあって、多くのタスクで日々忙しく過ごしていましたが、think beyondに参加していることとは全く関係なく、本業でも強度高くチャンスを与えてもらえていたのは、自分にとって大変ありがたかったです。


これまでの経験だけでは立ち行かない。新規事業はまるで「総合格闘技」

事業アイデアを創り上げていく過程で苦労したことや悩んだことなどはありましたか?

名智さん
普段の業務は、これまでの経験をベースとしながら推進していくことができますが、ゼロから新規事業を立ち上げるには、そもそもどう進めたら良いかわからないことも多くありました。不足しているスキルや知識も多く、これまでの延長線上では立ち行かないな、と実感しました。

自分の場合、アイデアを出すこと自体は得意でクライアントともよく話が盛り上がったりしますが、具体的な事業アイデアを創っていく過程において、アイデアの発散だけではもちろん前に進みません。

事業を前に進めるためには多様なスキルや知識が必要という観点で「新規事業って、まさに総合格闘技だな」と思ってます。

藤田さん
ミーミルの事業はベースとなるサービスもプロダクトもあるから、それを起点に顧客への価値提供や新たな活用パターンを考えて実行しやすいけど、新規事業の場合はそうは行かないから難しいですよね。

名智さん
また、行動量を増やしてできるだけ色んな人に話を聞いたり壁打ちをしたりして、事業アイデアの精度を高めようとしましたが、話を聞けば聞くほど、多くを取り入れようと考えすぎて、かえって混乱してしまうみたいなこともありました。

普段からクライアントに対して、エキスパート知見を活用する調査の目的や、それに沿ったアジェンダ設計が重要だと説明しているにも関わらず、いざ自分で同じことをやるとなると、それがすごく難しいことだと痛感しました。

藤田さん
僕の場合は、「マネタイズをどうするか」というところが、一番頭を悩ませたポイントでした。

自分と近しいキャリアを歩む人に相談したいという気持ちがあっても、個人がそのサービスに支払える金額は限られますよね。
なかなか良い解決策が生み出せず堂々巡りをしていたんですが、あるとき、「もしかしたら企業の採用に繋げられるんじゃないか?」ということに気付いたんです。

もともとtoCのサービスを検討していましたが、toBの要素も加えることで、採用企業側からの課金の仕組みを組み込むことができました。
そのアイデアに気付いてからは、更に一段とスピード感を持って取り組むことができました。

自分が一番解決したいと思う課題は、絶対にぶらしちゃいけない

反対に、どういうところに意識して取り組まれていましたか?

名智さん

イノベーションのプロセスに「アウトサイドイン(外から内)」、「インサイドアウト(内から外)」という考え方があります。ユーザーが欲しいと思う機能的な部分と、自分がこだわっているサービスの中心となる部分をいかにバランスよく組み込んでいくかが難しいポイントでもあり、意識していたところです。

さっきもお話ししたように、ヒアリングを重ねるとそれだけ色んな声が入ってきて迷ってしまうんですよね。
顧客ヒアリングって、ある意味占いに近いなと思っていて(笑)相手はこちらのことを思って色々教えてくれるけど、信じるか信じないかは自分次第のような。

「自分だったらどういうサービスにお金を払いたいと思うか」ということや「自分が解決したい課題は何なのか」という前提に立ち返ることはヒアリングを続ける中でもずっと大切にしていました。

そこは、普段クライアントと接するときとは異なる視点であり、学びにもなったと思います。

藤田さん
僕も同じ意見です。
ヒアリングもたくさんして色んな人から意見をもらうことはもちろんやっていたんですけど、はじめに自分が感じていた「解決したい課題」をぶらさずに持っておくこと、そこをぶらして色んな方向にアイデアが発散しすぎないようにすることが、意識すべきポイントだと考えています。

僕の場合、採用企業側への価値も考える必要があったものの、自分が本来やりたいのは、転職希望者にとってのプラットフォームを作り、それによって転職者の意思決定をサポートすることです。
ビジネスモデルを削ぎ落として、シンプルに説明ができるようにすることも心がけました。


多様な視点を取り入れる重要性も再認識した最終プレゼン

緊張感がヒシヒシと伝わってきた当日のプレゼンでしたが、そのときの気持ちを伺っても良いですか?

名智さん
ユーザベースがthink beyondに注ぐ熱量はものすごく高く、会場ではNewsPicksの番組収録のような豪華なセットが組まれており、審査員の様子も含めてピリッとした空気感も漂っていたので、ものすごく緊張しました(笑)
けれど、自分がこれまで取り組んできた集大成を表現する場所だったので、プレゼンが始まればすごく楽しくて、夢中になって話していました。

最終プレゼンの様子

あと、プレゼンでこだわったところとして、最初は絶対笑いを取ろうと思って、ネタを仕込みました(笑)

普段の営業と同じで、急に真面目な話から入っちゃうと空気感が重たくなるなと思ったからなんですけど、滑ってたら逆にやばかったのでウケてよかったです(笑)

(※実際にプレゼンスライドで準備した漫画の一コマ)

藤田さん
僕も当日の現場の雰囲気には圧倒されて、ものすごく緊張しました。
発表が午後からだったので、午前中は主業務のほうの仕事をしようと思っていたんですけど、全然手につかなくて。
なんなら、前日の夕方くらいからはほぼ仕事してないんじゃないかな(笑)

僕も名智くんみたいにアイスブレークを入れたかったんですけど、発表内容を削ることに精一杯で、前日の深夜にようやく初めて規定の制限時間の15分を切りました。

でも、本番はさらに1分くらい残ってしまったんで、相当早口で話したんだろうなと思います。
けれど、社内のメンバーや名智くんが目の前で応援してくれていたので、心強かったです。

ミーミルからの応援団


残念ながらお二人の案は事業化とはなりませんでしたが、審査員からのフィードバックを受けて、その内容についてどう捉えられてますか?

名智さん
僕の起案したサービス内容が、新規事業を推進している担当者個人をターゲットとしていて、その人が抱える課題意識から正しい問いを導くものだったのですが、「我々ユーザベースが運営するFORCAS(150万社以上のオリジナル企業データベースを保有する、B2B事業向け顧客戦略プラットフォーム)を活用し、一社一社の経営課題からブレークダウンして、こちら側で問いを定義してあげるのが良いんじゃないか」というコメントがありました。

元々は個人の内側にある課題意識にフォーカスすることしか考えていなかったので、純粋になるほどなと思いました。
もっと、ユーザベースにすでにあるリソースやソリューションを組み合わせてサービス設計できたら良かったと思いましたし、自分が見えている視野は限られているんだということも、改めて認識しました。

自分の思いももちろん大切だけど、課題の本質を理解していれば、打ち手のアイデアは他にも考えられたのではないかと思います。


藤田さん

僕の場合は、転職者側のユーザーを十分に獲得できるのか?という疑問の声や、そこにおける実際の検証不足を指摘されました。

正直なところ、僕自身が当事者としてターゲットのペインにすごく共感していたし、実際に大企業に勤める方々からスタートアップへの転職に関する相談を受けたりもしたので、転職者を集めてくること自体にそこまで難しさを感じてはいませんでした。
なので、数名へのヒアリングを通じてユーザーの集客については課題視していませんでした。

しかし、グランプリを獲った事業アイデアと何が違うのかというと、納得感のあるロジックや、具体的に「このサービスだったら絶対うまくいくだろう」と想像できるほどのストーリーが作れていなかったということかなと思っています。
今となれば、もう少しやれたことはあった気がするし、いただいたコメントは良い学びになりました。

心が折れそうになっても、ユーザベースの仲間の応援が支えになった

1年という長期間の中で、正直、途中で辞退しようと思ったりはしませんでしたか?

名智さん

いや、めちゃめちゃ思いましたよ(笑)後半の方とかずっと辞めようかなと思ってました。

アイデアから事業化まで持っていくのが難しすぎて、途中で色々方向性が変わって全然形にならないまま時間ばかりが過ぎてしまって。
「スケジュールが間に合わない!」みたいな感じでした。

でも辞めなかったのは、やっぱり後悔したくなかったからです。

仮に最終プレゼンで大恥をかいたとしても、そんなに大したことじゃないと思ったし、実際色んな人と会話をする中で、意外とポジティブなコメントをもらえたりもしたんですよね。
「自分が思っているよりも続けてることに意味があるんだな」と思えて、なんとか最後までやり切ることができました。


藤田さん

僕は実際、二次審査で一度落選しています。そのときには辞めようと思いました。

think beyondでは、各起案者に対して一人ずつメンターがついてくれるんですが、そのメンターだった塚谷さんと、think beyond事務局長を務める村樫さん宛に、Slackのプライベートチャンネルで「辞めようと思います」とメッセージを送ったのを覚えています。

すると、「すごく良いアイデアだと思うからもう少しやらない?」と励ましの言葉をもらったんです。
おかげで敗者復活まで頑張る決意をすることができ、最終審査に繋がりました。二人には感謝しています。

0→1も1→10も、向き合うものは結局変わらない

think beyondに参加してみて、改めてどうでしたか?

名智さん

新規事業に自ら取り組んでみることで、見えてくる景色が変わりました。
日々現場でクライアントの支援をしていますが、まるで、顧客の追体験をしたような期間で、事業開発の大変さが身にしみてわかりました。

これからのセールスやカスタマーサクセス活動において、より相手の立場を理解・共感したうえでクライアントに向き合えると思うので、プロジェクトで得た経験や気付きは存分に活かしていきたいです。
 

藤田さん
よく、「ゼロイチ」とか言われたりするじゃないですか。そういう”ピュアなゼロイチの経験”ができる機会は普段ほとんどないと思っています。

ユーザーの課題やサービスのコアの価値にピュアに向き合う経験ができたこと。そして考え抜いた末に、一定の価値を提供できそうなサービスアイデアまでを作り上げられたことは、嬉しく思います。

同時に、ゼロイチの仕事と、1から10を生み出す仕事が全然違うかと言われると、全くそうは思いません。
もちろんフェーズによって顕在化する課題は異なってくるものの、我々がどういう顧客体験を生み出していけば良いのか、その体験価値をより多くの人に届けるためにはどうしていったら良いのかと考え、行動するという側面では似ていると考えています。

ミーミルの事業にも様々な課題があるし、僕の立場からいうとコンサルティングファームのクライアントにエキスパートリサーチの価値を訴求し、活用を促進していく上ではまだまだ多くのハードルがあります。

でも、今回プロジェクトを通じて学んだような、誰に対して何の価値を提供するのかといったことを、シンプルに考え抜きエグゼキューションしていくことは、今後にも絶対活かしていけることだと思っています。


ぜひ今回の経験を糧に、今後の活躍も期待しております!ありがとうございました。



インタビュー後記
プロジェクト中もお二人の頑張りはちょこちょこ拝見していましたが、インタビューを通じて、苦労していたことや、それでも意志を持って最後まで粘り強く取り組んでいたことを知ることができました。
ちなみに、最終審査が金曜日だったこともあり、その週末は久しぶりに羽を伸ばして休暇を満喫したというお二人。

名智さんは、我慢してた漫画(ジョジョシリーズ)を一気読み、藤田さんは新居引越し前の家具爆買い(二人暮らしなのにも関わらず、椅子が5脚もあるらしい笑)を楽しんだそうです。





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