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見つけてくれてありがとうずっと待ってたよ
「死ぬまで一生愛してるよ」なんかじゃ足りないから。「死んでもずっと愛してるよ」。
一人称が「あたし」になったのも、歌詞を大事にして聞くようになったのも、言葉遊びをしちゃうのも、ギターを始めたのも、バンドを始めたのも、クソみたいな元カレってかクソから救ってくれたのも。たくさんあたしに影響を与えてくれた、大大大大大好きなバンドが新アルバムを出したから、朝7時に家を出て、雪の中フラゲしに行った。
フィルムを雑に剥がして、急いでDVDを取り出す。早く観たい。大好きなバンドの最新の音楽を「モノ」として手に入れられたことが何よりも嬉しい。
けど、家のDVDプレーヤーじゃ特典Blu-rayは見れなかった。何度試してもやっぱりダメで。諦めて、トリビュートアルバムの隣におんなじ色した新アルバムを飾ったとき、そんなつもりなかったのに泣いてしまった。まだ曲も聞いてないのになー、なんて思って、CDを取り出した。
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1.ままごと
「それともわたし?っていうかたわし」や、「かわいいままごと ごとままごと」のように、単語自身がもつ楽しさを感じさせる言葉遊びが幼い曲名にぴったり。それに相反するような、疾走感のあるメロディーと尾崎さん(尾崎世界観/Vo.Gt)の高音。歌詞に注目してみると、子どもがままごとをして遊んでいるようにも、大人がのらりくらり生活しているみたいにも取れる。
聞いていて気持ちが良くて、思わず笑っちゃう。アルバムのはじめの曲にはもってこいだ。
しかも、「唇はまだ早いからここにね」なんて、可愛すぎる。
おでこにでもしたのだろうか?
なんとなく、泣いているあたしを慰めてくれているみたいで、ちょっと嬉しかった。
2.人と人と人と人
アルバムが出るなら、流れも楽しみたいなんて思って我慢して聞かずにいた曲。FM802とのコラボなんて悪いはずもないから、めちゃくちゃ聞きたかった。
前回のコラボ曲、『栞』は別れを彷彿とさせる曲だったのに対し、この曲は新たな「出会い」を感じさせる。そして、耳に残る幸慈さん(小川幸慈/Gt.)のギターと、途中で差し込まれるカオさん(長谷川カオナシ/Ba.)の歌声が耳を掴んで離さない。
MVの撮影場所である、大阪駅にある出口を思い出させる歌詞もキーワードみたいで好きだ。
『人と人と人と人』の「人」ってクリープハイプのメンバーのことなんじゃないか、なんて聞きながら考えていた。確かにクリープハイプのメンバーは4人だし!もしかしたらそんな意図はないかもしれないけれど、最後の歌詞は4人にぴったりだなあ、なんて。
3.青梅
真夏にぴったりな酸っぱい恋を描いている曲。「甘酸っぱい」じゃなくて、「酸っぱい」なのが、クリープハイプらしくて大好きだ。イントロからもうすでに拓さん(小泉拓/Dr.)が刻むリズムが心地良いし、この曲での言葉遊びも楽しい。聞いていてとにかく気持ちが良い!「夏をもとめて」と「もう夏をとめて」や、「青いうめぼし」が「赤いうめぼし」になってたり。
こんなに聞いていて気持ちがいいなら、マッチングアプリのCMにも確かにピッタリだ。
あたしも一緒に酸っぱい顔できるような人に出会いたいな。
4.生レバ
ここで急に楽曲の雰囲気が変わる。怪しげなサウンドと気持ちいいリズムによって一瞬で彼らが作り出す世界に引き込まれる。小説『転の声』を思い出させる「ダフ屋になって誰かの利益で楽して生きてたい」という歌詞のように、「欲求」を素直に感じる歌詞に対し、サビは聞き取れそうで聞き取れないむず痒さがある。ちなみにあたしは「怠い」を「だり」って言ってるように聞こえる。意味はないのかもしれないけれど、この素直さとあえてサビに持ってくるむず痒さ、気持ちが良すぎる。
「余れば買うし無ければ売って」という歌詞、どうやったら思いつくんだろう。矛盾しているはずなのに聞いていて意味がすっと入ってくる。やっぱり、美味しすぎる。
5.I
去年の9月ごろに出てからずーっと大好きだった曲。パチパチした暖炉みたいな音が耳を惹く。「好き」なんてストレートな歌詞を繰り返されて、ちょろいあたしが好きにならないはずがない。
「空音さんとのコラボ楽曲『どうせ、愛だ』をもとにしている楽曲で、同性愛をテーマにしている」、なんてことを聞いたとき、一気に歌詞の見え方が変わった。「何から何まで違うのに」の重さが全然違う。凄すぎる。好きだ。
心の穴を塞いだのは愛なのに、愛のせいで行き止まりになって、「君じゃないのに君だった」。サビだけでストーリーが見える尾崎さんの詞、やっぱり好きで好きで好きで好きだ。
6.インタビュー
テレビで放送されるインタビューに対して、本当のことなのか?なんて思うことがたくさんある。綺麗ごととまでは言わないけど、前向きなことばかりな気がする。
それに対して、「真実の感情」を描いているような気がして、好きだ。あたし自身がインタビューをされることなんてないけれど、そんなあたしの背中でさえも押してくれる、きっとお守りになってくれるような曲。
ギターソロも印象的で、激しいけど、「激しさ」だけで終わらない、「悔しさ」みたいなものを感じさせるフレーズだった。
最初に聞いた時、「最高です」という歌詞を聞いて、すぐに社会の窓を思い出した。社会の窓では、「今を愛してる」なんて今についてたくさん言ってたのに、「また明日話そう」なんて言われてしまった。今じゃなくて明日に。未来を捉える、時間を感じさせる歌詞がかゆいような、嬉しいような気持ちにさせてくれる。
7.別に有名人でもないのに
タイトルを見たときは有名人ぶってる一般人に対する批判の曲かな、なんて思っていたから、度肝を抜かれた。優しいピアノの音とゆったりしたリズムが心を落ち着かせる。音数が少ないからこそ、目立つ一つ一つの音が好きだ。
「可愛い家と赤いお花」の意味がわからなくて、しばらく考えていた。結局あんまりわからなかったけれど、「好きな人との好きな君」と「可愛い家と赤いお花」、どちらのペアもお似合いだ、けどそれに対して自分と好きなあいつは、ってことなのかもしれないなんて思った。
8.星にでも願ってろ
カオさんの弾き語り曲が、バンドサウンドになって帰ってきた。メロディーはこんなにもキャッチーなのに対して、そこに確実に存在する禍々しいものを感じさせる歌詞がたまらない。
「星に願いを」を思わせるタイトルも、さりげないような口調なのにしっかり芯のある歌詞も、気持ちのいい韻を踏んだ言葉のリズムも変わらないはずなのに、新曲みたいで、なんとなく不思議な気分になった。
「ザ・クリープハイプ」という表現がぴったりで、聞いていてとっても楽しい。
9.dmrks
「こんなことなら」や、「どうしようも」などの歌詞の繰り返しも、途中で差し込まれる鈴のような音も、独特なギターの音色も、楽曲の全てが強く耳に残った。
「ggrks」を思わせるタイトルは、ネット上の事柄がモチーフであることをひしひしと感じさせる。
歌詞はエゴサーチについて書いているから、別に有名人でもないあたしにはわかるはずがないのに、わかってしまう感覚があって、なんか恥ずかしい。
嫌なことがあったら聴いてしまいそうな気がする。けど、毎日が嫌だから、毎日聞いてしまうかもしれない。あたしにとってはダラダラ釘で刺す、藁人形になってくれる曲かも。
10.喉仏
一度でも聞いてしまったら、この曲の虜になってしまうに違いない。アップテンポなリズムは頭から離れてくれやしないし、キャッチーなメロディーを何度でも口ずさんでしまう。歌詞の音の響きも韻も面白いから、何度聴いても新鮮で楽しい。「逃がさない」や、「早く出てこい」、「必ず引きずり出す」、なんて物騒で仕方ないワードばかりなのに、なぜこんなに楽しげに聞こえるんだろう?
とくに、最後の「お前は誰だ」が好きで好きで仕方ない。
11.本屋の
聞いたとき、すぐに『ABCDC』を思い出した。
「モノ」を通して描く曲は大好きだ。
ABCDCでは、「とりあえず」「いい加減な」、なんて言いながらも、曲の構成と、人生と日常とを絡め合わせている曲だった。それに対して、この曲は、ある本屋と、一日一日と日々の流れとをすごく丁寧に描いているような気がする。音楽でも、小説でも真摯に「言葉」に取り組んでいる尾崎さんにしか描けない曲だなと感じた。
てっきりこの曲もゆったりした感じだと思っていたから、なんとなく裏切られた気分で楽しかった。
12.センチメンタルママ
悪寒とおかんをかける時点で、もう大好き。最初に歌詞を見たときは震えてしまいましたよ。
風邪をひいて具合が悪いのに、月曜日だから会社に行かなきゃいけない。けど、会社に「電話してくれるママもいない」から、人肌恋しい。でも、「ねぇいいからしばらくほっといて」なんて全部がどうでも良くなる。「39度」と「氷点下」という言葉の対比にも表れているように、相反しているのに同時に現れる心情を表現してくれる、クリープハイプのそういうところが大好きだ。
13.もうおしまいだよさようなら
曲の始まりなのに、ライブの時の終わり方のようで、心が昂った。こういう始まり方、好き!
安直だけど、ライブの最後に聴きたくなってしまう。
なんとなく、『大丈夫』を思い出した。こんなにさっぱりしている歌詞なのに、確かに奥に存在する、あえてあっさり慰めているような優しさを感じさせる。「会いたくなったらまたおいで」なんて言われて、会いに行かないはずもない。
きっとあたしが寂しくなったらまた聞くだろうな。
14.あと5秒
あと1曲でこのアルバムが終わるときに、この曲を持ってくるところがとてつもなく好きだ。あたしだってあと5曲聴きたい!後ろでずっと鳴っているギターは楽しげだが、歌詞は片想いを感じさせる。『あと5秒』というタイトルは、SNSの広告を思い起こさせる。好きなあの子は、もしかしたら自分のことをあのうざったい広告みたいに思っているのかもしれない。
5秒なんて、結局内容による。ただのCMみたいに長いかもしれないし、泡のように消える短さかもしれない。たった5秒、でも5秒。
15.天の声
過去の楽曲を思い出すような歌詞がたくさん散りばめられていて、トリビュートのときの尾崎さんのコメントを思い出した。あのときも、参加アーティストを思わせる言葉が散らばっていて、楽しすぎた。小説『転の声』を思わせるタイトルも好きだ。ファン心、わかってるねー!
聴いてすぐ、泣き止んだばかりなのに泣いてしまった。光も届かない部屋の隅でうずくまるあたしを「見つけてくれた」ことがなによりも嬉しい。そして、そんなあたしを見つけてくれるのはクリープハイプしかいないし、これからもそうに違いない。クリープハイプはあたしじゃないたくさんのあたしを救うんだろうなー、って思った。
『桜散る』とか歌ってたあの曲とは違って、桜の橋を渡ってしまうようなこのアルバム。『連れて行ってあげる』とか言ってたあの曲のジャケットみたいな色したこのアルバム。
きっとたくさん聞いて、たくさん歌詞を読んで、CDも歌詞カードも擦り切れていくんだろうななんて思う。
息を潜めて泣いてるあたしにとってのお守りで、藁人形で、宝物になるんだろうな。
早くSpotifyのライナーボイスが聴きたいし、みんなのライナーノーツが読みたい。あたしの思っているまんまの感想を書こうと思って、聞かずに我慢していた。きっとあたしのライナーノーツは見当はずれだろうなって思う。
つたない文だし、読みにくい。何回好きって書いたんだろう。
だけど、それでも、あたしはそう思ったんだから公開しちゃおう。そんなあたしのライナーノーツでさえも、見つけてほしい。後悔しない自信があるから。
クリープハイプにも、これを読んでくれたあなたにも。
見つけてくれてありがとう、ずっと待ってたよ。