北大と叩いて被ってじゃんけんぽんをした話
プロレスのリングに、一つの台と、二つずつのピコピコハンマー、ヘルメットが用意され、会場は大いに盛り上がっている。司会の男がマイクを取り出す。
🧔♀️「さぁ始まりました叩いて被ってじゃんけんぽん世界大会、決勝戦! 赤コーナー、前回大会王者、パートグー・チョキスキー!」
会場がわっと湧き立つ。彼の肉体はこの日のために磨き上げられ、かつてない輝きを放っていた。
👨🦱(ふん……どんな相手でもかかってきやがれ)
🧔♀️「対する青コーナー、今大会初出場のダークホース、北大!」
👨🦱「北大!?」
北大が入場してくる。その大きさに会場が一転してどよめく。
❄️「よろしくおねがいします」
👨🦱「あ、あぁ」
👨🦱(まいったな、あまりにもデカすぎる……)
それもそのはず。北海道大学の総面積は660万平方キロメートルで日本最大。その面積は東京23区すらも凌ぐほどだ。そのような圧倒的質量に叩かれてしまえばたとえ「被って」いたとしても命はないだろう──
👨 (勝ち続けるしかねぇ!)
🧔♀️「それではいきましょう──」
🧔♀️「叩いて被って──」
❄️👨🦱「「じゃんけんぽん!」」
❄️✌️ ✊👨🦱
👨🦱「……やった! でも北大のどこを叩けばいいんだ!?」
🧔♀️「北海道大学はかつて札幌農学校としてスタートした……つまり農学部棟こそが北大の心臓であり、頭だ! そこを叩け!」
👨🦱「なるほど! うおおおおおお!」(北大のメインストリートを駆け抜けていく)
👨🦱「くそっ、全然つかねぇ、kksk(高等教育推進機構)の方からじゃ遠すぎる!」
〜数分後〜
👨🦱「はぁ、はぁ。やっと着いた。くそっ、流石にもうヘルメットを被っていやがるか……」
北大農学部棟の上にはさっきまで台の上にあったヘルメットが被せられていた。
🧔♀️「はいじゃあ帰ってきてくださーい」
👨🦱「なっ、これを戻らなきゃいけないのか!?」
🧔♀️「あまりにも遅い場合は遅延行為とみなして失格にします」
👨🦱「くそおおおおお!」ダダダダダ
👨🦱「はぁ、はぁ」(これ、俺が不利すぎないか……?)
こうして叩いて被ってじゃんけんぽんの世界大会、その決勝戦の火蓋が切って落とされたのであった……
🧔♀️「それでは2ラウンド! 叩いて被って──」
👨🦱(くそっ、もう始まるのかよ)
❄️✊ ✋👨🦱「「じゃんけんぽん!」」
👨🦱「ちくしょぉぉぉぉぉ!」(北大のメインストリートを駆け抜けていく)
👨🦱「はぁ、はぁ」(農学部棟につくも、またもや屋上にはヘルメットが被せられている)
👨🦱「うおおおおおお」(全速力でメインストリートを戻っていく)
🧔♀️「それでは3ラウンド! 叩いて被って──」
❄✊ ✋️👨🦱「「じゃんけんぽん!」」
👨🦱「うおおおおおおお」ダダダダダ
❄✋ ✌️️👨🦱「「じゃんけんぽん!」」
👨🦱「うおおおおおおお」ダダダダダ
❄️✌️ ✊👨🦱「「じゃんけんぽん!」」
👨🦱「うおおおおおおお」ダダダダダ
👨🦱「うおおおお……」
🧔♀️「両者一歩も譲らず、ついに90ラウンドに突入だ!!!!!!」
観客「わああああ!」
🧔♀️「それではいきましょう! 叩いて被って──」
❄️✊ ✋👨🦱「じゃんけんぽん!」
👨🦱「うおおおおおおおお」ダダダダダ
🧔♀️「てかあいつ、じゃんけん強くね?」
チョキスキーは北大の中を走っている
👨🦱(どうすればいい? じゃんけんに負けたら即死だ。それだけは避けなければならない。でもじゃんけんに勝っても勝ちようがないじゃないか! 一体どうすれば……)
北大農学部棟の屋上にはヘルメットが被せられている
👨🦱「くそっ、まただめだ。もう90往復めだぞ……」
🧔♀️「はーい、それでは戻ってきてくださーい」
👨🦱(あぁ、本当に限界だ……どうすれば……)
👨🦱(そうだ!)
🧔♀️「チョキスキーさん、どうしました?」
👨🦱「インターバルだ」
🧔♀️「?」
👨🦱「プロレスはラウンドごとに1分の休憩を挟む。なら、俺たちも休憩してもいいんじゃないか? 90分、90ラウンド分だ」
🧔♀️「ふむ……」
ざわつく会場
🗣🧔♀️
🧔♀️「運営から許可が出た! 休憩!」
🧔♀️(ん? 司会の俺は90分会場をもたせなきゃいけないのか……? ていうか叩いて被ってじゃんけんぽんに90分も休憩がいるか……?)
👨🦱「はっはっはっはっ……」(北大の中を走っていく)
〜90分後〜
🧔♀️「ありがとうございました〜」
ワアアアア
🧔♀️(はぁ、やっと終わった……90分間アドリブでショーをし続けるのは辛すぎる。もうボロボロだ……帰りたい……)
🧔♀️「それではチョキスキー選手、入場!」
ザワザワ
🧔♀️(来ないな……逃げたか?)
🧔♀️「チョキスキー選手を棄権とみなし、優勝は──」
👨🦱「待て! まだいるぞ!」
🧔♀️「何っ!?」
湧き立つ会場、チョキスキーの服は膝に穴が開き、至る所に汚れがついている
🧔♀️(お前ももうボロボロじゃねぇか……これ以上戦ってどうするってんだ……)
👨🦱
🧔♀️(いや、それは選手に失礼か。こいつらには負けられない思いがあるんだもんな)
🧔♀️(なら、俺にできるのはこいつらのためにこの会場を全力で盛り上げてやることだ!)
🧔♀️「それでは気を取り直して──みなさんお待たせしました! 叩いて被ってじゃんけんぽん、決勝戦、91ラウンドの開幕だ!」
ワアアアア
🧔♀️「みなさんご一緒に──」
🧔♀️「叩いて被って──」
❄️✊ ✊👨🦱「「じゃんけんぽん!!!!!」」
🧔♀️👨🦱❄️「「「!!!!!」」」
そのとき、はじめてのあいこが起こった。
どうせチョキスキーが勝つのだろうと思っていた観客は目を覚まし、司会と北大は驚き、チョキスキーは「死」がすぐそこに迫っていることを思い出した。
👨🦱(そうだ、俺はここでミスったら死ぬんだ)
❄️👨🦱「あ〜いこで」
❄️✋ ✋👨🦱「「しょ!!!!!」」
❄️👨🦱「あ〜いこで」
❄️✊ ✊👨🦱「「しょ!!!!!」」
👨🦱(でもな、今までだって負けられない戦いを超えてきたんだ。何度も、何度も、何度も、何度も!)
👨🦱(だから、俺は負けねぇ!!!!!)
❄️👨🦱「あ〜いこで」
❄️✋ ✌️👨🦱「「しょ!!!!!!!!」」
ワアアアア
🧔♀️「これはまたもやチョキスキー選手の勝利、だが、どうやって北大の頭を叩くんだ〜っ!?」
👨🦱「いくら北大そのものだからって、ヘルメットを被るのにはタイムラグがあるはずだ! だから、それよりも早く到達する! 叩いて被ってじゃんけんぽんの、基本だ!」(戦闘機に乗りこむ)
🧔♀️「な、何〜っ!?」
👨🦱「90分のインターバルで、俺は工学部に行き学んできたんだ!」
👨🦱「戦闘機の、作り方をなーっ!」バビューン
🧔♀️「なんと! 総合大学であることが仇になったかーっ!?」
🪖三👨🦱三ギュンギュンギュンギュン
🪖
❄️🔨👨🦱ピコ
🧔♀️❄️👨🦱「……」
🧔♀️「ヒ、ヒット! 勝者、パートグー・チョキスキー!!!!!!!」
ワアアアアアアアアアアアアアア…
ワアアアアアアアアアアア…
ワアアアアア…
チョキスキーはこのあと、北大と握手をして死んだ。
おわり