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私は「音派」です!

先日、
三島由紀夫の
『金閣寺』を時間をかけて読みました。

読んだつもりになってた『金閣寺』

若い頃にサラッと触れて、
「あらすじも大体知っているし読んだ気持ち」になっていた本はないですか?
特に名作だと言われている文豪の本は、
私の中でこの傾向が強いです。

年明けに(大人として、これじゃあいけない。一度パパパと読んでおくか)と軽い気持ちで読み始めたら、
決して長くはない、速い人なら1日で、いや数時間で読み終えられそうな『金閣寺』(文庫で330ページ)を読み終えるのに私は1週間もかかってしまいました。

それは、
(こんな表現が!)
(ここの文章すごいなぁ)
(この主人公のセリフ……)と、
いちいち驚きながら読んでいたので、仕方のないことかもしれませんが、
330ページに1週間はちょっと時間をかけ過ぎですよね。

私は小さい頃から本を読むのがとにかく遅くて。
早く読める(速読できる)人の、
おそらく2〜3倍は……
いや、下手したら3〜4倍は時間をかけて読んでいます。

速く読むことができれば、その分、沢山の本が読めますし、それだけの知識が自分の中に入るわけですから、
「速読」というものに、
ずいぶんと憧れて、
「斜め読み」とか
「セリフだけ追う」とか
そういう技術的なことにチャレンジしてみたこともあったのですが無理でした。文字が目に映っても理解が追いつかないので何も頭に入ってこなくて。

だから私にとって「読むスピード」は長年のコンプレックスでした。
そこにもってきて、今回の『金閣寺』
面白かったけど、まぁまぁあらすじを知っている作品にこんなに時間がかかってしまった自分が情けなく感じられて、
年明け早々落ち込んでしまったのです。

そんな状態で次に手にしたのがこの本でした。

いい音がする文章 高橋久美子

著者の高橋久美子さんは、元「チャットモンチー」のドラマー。

私、お恥ずかしながらこの本は
「著者が高橋久美子さん!」
「帯に草野マサムネさん!(神!)」
「タイトルが格好いい!」
「編集者が今野良介さんだったら絶対面白いはず!」
と、いうミーハー心全開で購入したのですが、
最初のページから心をわしづかみされました!

いい文章は「いい音」がする

「いい音がする文章」はじめに

「いい文章はいい音がする」というのはどういうことだろう?
と、読み進めていくと、
第1章の1話目のタイトルが
本を「音」で読む人〉でした。

著者の高橋さんも本を読むのが遅い派で、
速読ができる人を魔法使いのように感じていらっしゃったとのこと。
なぜこんなに読書の速度に違いが出るのかを考えたところ、
読むのが遅い派は、
「頭の中で文字を音に変換してから理解しているようなのだ」ということでした。

この一文を読んで、思わず声が出ました。
「あ、私も同じ!」と。
たしかに私も文章を読むとき、目で文字を追いながら、脳内のもう一人の自分がそれを音読しています。

速読ができる人は文字を視覚でとらえていて、音に変換しなくても内容が頭に入ってくるようなのですが、
私はいったん音に変換していたから倍の時間がかかっていたのだとわかり、読書速度の差の謎がようやく解けました。

高橋さんはこの、音に変換して読む人(読むのが遅い人)のことを「音派」と名付けて呼ばれているのですが、
「音派」って、なんだか格好良くないですか?
響きが格好良い。
私、音痴なんですけどね、
読書のタイプとしては「音派」なんですよ。ふふふ。

この本に出会うまで、この何十年もの間、
「本を読むのが遅い私は情けない。速く読める人が羨ましい」と、ウジウジしてきましたし、
『金閣寺』に1週間かかったことにも大変な落ち込み方をしていたのですが、
音派、だと表現されると急にパアアと視界が開けたといいますか、

「なんだ!それならいいじゃん!」という気分になっております。

音に変換して理解していると、たしかに時間はかかりますけど、
その分、セリフシーンなんて脳内でちょっとしたラジオドラマを作って聴いているようで楽しいですし、
文章のリズムというのでしょうか、その文章の持つ、音の流れにも気づくことができます。

それは自分で文章を書く時も一緒で、
いつも自然と書いたものを脳内で音読していますし、
音読した時に自分が心地よく感じる文章、
ひっかからない文章にしたい、と思いながら書いていることにも気づきました。

「いい音がする文章」は見た目も美しい。文字にも色にもリズムがある気がします。


文字、言葉、文章は「読むもの」という、視覚にだけ関係しているものだと思っていたら、
全部が音につながっていて、聴覚にもうったえかけてくる。
言葉の美しさの一つ一つを音に乗せて味わうのも悪くないですよね。

長年のコンプレックスだった「本を読むのが遅い」は、
「視覚派」ではなく「音派」だっただけで、
それは読書をより楽しませてくれているのだと、この本に教えてもらいました。
「読むこと」で落ち込んでいたというのに、
「読むこと」で救われた気がして、
それがとても嬉しいです。

自分が音派だと気づいたうえでのこれからの読書人生は、
きっとこれまで以上に素敵なものになるはず!!

私と同じ音派の皆さん、もう読むのが遅いなんて気にしなくていいですよ!
これからも時間をかけて本を味わいつくしましょう!

『いい音がする文章』
大大大大!超超超超おすすめです!!


#人生を変えた一冊

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ミーミー
こんなところまで読んでいただきありがとうございます!私に……良いんですか??嬉しくて舞い上がってます!!うひょー!!!