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夢を売る仕事

とあるリストラを経験した中年男の話である。
ある中小企業で経理を担当していた男は、いつも真面目に働いていた。
見た目の特徴は、メガネをかけた痩せ型のいかにも事務職といった感じの目立たないタイプである。

ずぼらな社員たちが持ってくるどう見ても不備の領収書や、ハンコのない資料を持ってきては突き返す。そんな2度手間な作業を繰り返しながら毎日を終えていた。

今時、ハンコとか効力があるのかと疑問に思いながら、昔からのやり方をずっと15年間やってきたし、これからも続くのだろうと思っていた。

本当はこんなはずではなかった。もっと違う何かがしたいとは思うもののこの「何か」がわからない。
何をしたいのだろう。と考えても漠然としていてわからない。
そんな日々を過ごしていた。

最近になってようやくDXというものが会社に導入する計画が出され、経理もDX化する流れになった。

全く知識がなかったので、色々なクラウドの会社に聞いてみる。請求書を集約して適格領収書や請求書かをチェックして、なおかつ仕訳までしてくれるという。

もう話を聞けば聞くほど、自分の今までの仕事はなんだったのだと思う。時代の流れなのはわかる。だけど、今まで地道にチェックして銀行振り込みのため金額を入力して、また同じことをソフトにも打ち込んでといったこの作業はなんだったのか?

そういう事を考えると、自分にしか出来ない仕事に魅力を感じる。

案の定、DX化が進むにつれて仕事が減り、今までの仕事の仕方では通用しなくなった。

自分の居場所がなくなってしまうようで、寂しくもあった。変わる事はいい事だとはわかる。
だけど、その仕事は自分でなくてもいい。

そう思った時に、早期退職のお知らせがきて、今なら退職金は満額もらえるとの事だったので、退職するに至った。

さて、これから何をしよう。
独身で中年男には仕事中心だったために趣味もない。

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