はじめましての一周忌~わたしなりの死生観~★はっぴーの家ろっけん④
昨夜、知らないひとの一周忌のイベントに参加した。オンラインで。
一周忌とかそういうの、生まれてはじめて。
なんでかっていうと、わたしは物心ついてからというもの、母親の宗教の関係でそういった行事に参加することが許されておらず、自分の祖父の葬式すら参列したことがないからだ。
だから親戚づきあいもせず、一般的な葬儀や法事、といったものに参加したことが、一度もない。喪服を着たことも、お焼香をあげたことも。
わたしにとって、それはコンプレックスだった。
一般常識、というものが抜け落ちた自分。
大きな欠損だと感じていた。
もし誰かのお葬式に出ないといけなくなったら。
この歳でお焼香のやり方がわからないなんて、恥ずかしい。
冠婚葬祭のマナー、とは。
出る予定もないのに、図書館で借りたマナー本を読みあさった。
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夫と結婚して、家族が増えた。
新しい家族はとってもフランクにわたしを迎え入れてくれた。
"一般常識"がないんです、と清水の舞台から飛び降りるような気持ちで打ち明けたわたしに、義母となったチョコさんは、あははと笑いながら言った。
「うちはお父さん変わってるからな、親戚づきあいほとんどしてないねん。なーんも気にせんでええでー。」
いやいや、そうは言っても、ある程度はやらないといけないはず。
わたしは勝手にそうとらえていた。
結婚して2年目の夏休み。
わたしは大きなお腹を抱えて、若干緊張しながら神戸にひとりで帰省した。
多忙な夫には夏休みなんて存在しない。
いつも通りわたしだけ帰省して、お盆に義実家に顔を出すことになっていた。
お墓参りに行くと言われていたので、事前にネットや本で冠婚葬祭のマナーについて調べた。周りで一番常識のありそうな友人、にもメールでめっちゃ相談した。
真夏、しかもマタニティ服、1回しか着ないであろうことを考えて価格的にも買いやすく、かつマナーに反しないもの…
ものすごく高いそれらのハードルをクリアして、なんとかそれらしい洋服を揃え、当日の朝、義実家の玄関を入ったわたしは、あぜんとした。
義父よ、あんたまさかの、ジーパンやないか…
そこには普通にそのへんに買い物でも行くような、ラフなポロシャツとジーンズを身につけた義父と、いつものエプロンを外しただけ、みたいな普段着のワンピース姿の義母がいた。
えっ?お墓参りって、そんなんでええの!?
このわたしの悩みに悩んだ1週間を返してくれ!!
「服なんか、なんでもええねんー。気持ちやで、気持ち。」
そう言って笑うチョコさんに、救われた。
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2020年10月4日。
はっぴーの家の一周忌イベント。
参列者の持ち物はひとつだけ。
ワンカップ大関。
ジージが好きだったワンカップ大関を片手に、たくさんの人が集まった。
オンラインで画面越しに、昨年のジージのお葬式の裏話を聞いて、笑いながらみんなで乾杯した。
最高の一周忌だと思った。
そして、それってなんか、2度目の人生の誕生日みたいやんって思った。
ジージがどんなひとか、全然知らんけど。
ジージは死んだからこそ、いろんな人の心の中で、新しい物語を生きはじめる。本人の意思とは無関係に。
そんな死に方が、いや生き方が、できたら。
それってめっちゃ幸せやんな。
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それは、はっぴーの家やからできること。
でも、きっと、本気でやりたい!という思いさえあれば、誰もができること。
語り継ぐ
人と関わって痕跡を残す
干渉し合う
そういう面倒なこと、から生まれるものがきっとある。
タブーとされていることや、マナーとしてすすめられていること、本当にそれでいいの?って、常に問い続けて、自分に合った方法を探すこと。
探していくなかで必ず摩擦が起きるし、たくさんの問題も出てくるけど、周りのひととぶつかって、すり合わせて、意見を言い合って、正解がなくても自分なりの答えを見つけようとすること。
そういう風に歩いていくことが、生きること、なんじゃないのかな。
それをしてないから、生きている実感、がどんどんなくなって淋しいんじゃないのかな。
はっぴーの家は誰もがそんな風に『ただ生きること』ができる場所で、だからみんながなんだか輝いて見えるんじゃないのかな。
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場をつくる、とか、居場所を探す、とか。
ついここに「ないもの」を探しがちなわたしたちだけど、実はもうすでに「あるもの」にこそ、目を向けないといけないような気がしている。
ないない、と「ないもの」に目を向けていると全然見えないけど、実は握りしめた掌に隠れていた、みたいなこと。
まずは自分の中で、当たり前とか、そうでなければならない、と無意識にとらわれていることがないか、立ち止まって考えてみたい。
そうして思い込んで身に着けてきた古いものを捨てて身軽な自分になったら、また新しいなにかを探しにいけるような気がしている。
いま、ここにあるもの、すでに持っているもの、に目を向けて、それを活かせるように生きてみたい。
ジージ、ありがとう。
そして、もう一回目のお誕生日、おめでとう。
※ここだけの話やけど、ワンカップ大関にはあんまりいい想い出ないねん。せやから、わたしだけちょっとズルして、ええカップ酒で乾杯して、ごめんね。
今度、ジージにも、持っていくからね。
おはなしはつづく。