なんでもない一日
大好きなひとの唄を聴きに行った。娘と2人で。
屋外で、暑くないといいなぁという願いは叶ったのだけれど、着いてみたら予報通りの雨だった。
そこそこ降られてしっかり濡れて、お腹を空かせて、駅にたどり着いたらサイゼがあった。
見慣れない表紙のメニューブック。
嫌な予感がした。
開いてみるとやっぱり、そこに君はもう、いなかった。
それぞれ食べたことのない新しいメニューを頼み、好きなものを飲んで、いつものように間違い探しをしながら料理が運ばれてくるのを待った。
たくさん食べて、たくさん笑って、いつの間にか髪もTシャツもすっかり乾いていた。
店を出て傘を差しながら手をつなぎ、駅に向かった。
乗り換え駅で見慣れたアイスキャンデーののぼりが目に入った。私はいつものミルク、娘は期間限定のフルーツ味を選んで、ひとくちずつ分けっこした。
ホームに入ってきた電車に慌てながら、残りを急いでほおばって、リスみたいな顔をお互い見合わせて、あんまり口の中が冷たくて笑った。
そうして普通電車に乗り込んで、ゆらり揺られてうちに帰った。
今日もおやすみ。なんにもない、一日。
私はまだベッドでゴロゴロしながら、これを書いている。
あのひとの声を思い出しながら。
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