しあわせなふたり
12月20日。
お天気はこのうえなく快晴。
大好きなひととデートをした。
師走だなんて思えないぽかぽか陽気で、空には雲ひとつなくて、行きたかった場所、交わしたかった言葉、見たかった笑顔がぜんぶ全部、そこにあった。
まるで、世界に祝福されているような気持ちだった。
最高の、一日だった。
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そのひとと初めて逢えたのは、noハン会当日、受付でのことだった。
エレベーターを降りて、そのひとが柔らかい笑顔で私の前に来た方の受付をしている姿が目に入った。
あ、はるさんだ。
顔を知らなくても、遠目でも、すぐにわかった。
自分の順番が来るまで、ドキドキしながら待った。
初めて声を掛けたとき、そのひとは目を細めながら私に笑いかけてくれた。
なんだか照れくさくって、あんまり目を見れなくて、受付にはお客さんがどんどん来るし、もう何を話したかすらもうろ覚えだけど、逢えたことがとにかく嬉しかった。
noハン会では、私も自分のコーナーを作らせていただいて、たくさんの方とお話したりしていたので、時折会場ですれ違っては短い言葉を交わすものの、はるさんとゆっくり話す時間はなかった。それはもともと想定済みだったし、私の心からの願いは『いつかはるさんとふたりで海を見ながらのんびり話をすること』だったので、noハン会のための関東遠征では難しいだろうと、日程を改めて会えるように、個人的に別日でアポを取らせてもらっていた。
今月後半からしばらく関東滞在が決まっていたため、その日程のどこかで会えたら…と、淡い期待をしていた私に、はるさんから連絡が来た。
20日なら会えるかもしれない、というお返事に、関東行きの日取りをまだ決めていなかった私は、「では19日夜に移動することにします!20日でお願いします!!」と、食い気味に返信した。
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相手に合わせてスケジュールを決めて、密かに候補のデートコースをいそいそと調べて、こんなにもその日を心待ちにするなんて、もう彼女に恋していると言ってもおかしくないくらいの思い入れやん!と、自分でも笑ってしまう。
ご本人にも話したのだけれど、恐らく私は思考回路が男性脳タイプのようで、好きなひとと逢える!となったら、相手が女性の方が、がぜん燃える(笑)
どんな食べ物が好きかな?どんなところに連れて行ってあげたら喜んでもらえるかな?タイムスケジュール的にはここで休憩を挟んで、そのあとはここかここのどっちがいいか選んでもらって、この時間ならロケーションはこんな感じのところへ…と、それはもう、ちょっと押し付けがましいくらいのデートコースを妄想してしまうのだ。
前日までに調べた候補のお店やスポットをリストにしてつらつらとURLを送りつけ、「どこに行きたい?なにが食べたい?気になるところある?」と、怒涛の押し寄せを見せすぎてハッと我に返り、「ヤバい私、相手に引かれているかもしれない(>。<)」となったりすることが、よくある。
そう、私がもし男だったら、完全に藤森慎吾も顔負けのチャラ男になっていただろうなと、確信している。
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今回も前日からもうそわそわ、ワクワクしすぎて、出発の準備もそこそこに私は地元の街を朝から走り回っていた。
お土産はあそこのパンと、それに合うとっておきのジャムがいいかな、甘い物は好きかな?それから珈琲はどこのにしようか?
今回の関東遠征で会える予定の他のひとたちの分もあるから、それぞれの顔を思い浮かべながらあれこれと品物を選ぶのが楽しくて仕方ない。
食いしん坊というのは、とにかく自らを満たすための労力を、惜しまないのだ。
それは、美味しいものが単に胃袋を満たすだけにとどまらず、心までも満たしてくれると知っているから。
ココロとカラダが満たされていたら、ひとにも優しい気持ちでいられる。
それを面倒に感じたり、そこに価値を見い出せないひととは心の距離が縮まる気がしない。だから、周りに集まってくるひとも必然的に食いしん坊ばかりになる。
noteの聖母とみんなから慕われるはるさん、しかも食いしん坊、という共通点を持つ素敵な女性とのデートなのだから、それはもうどんなに楽しみかといったら!
そんなわけで、出発ギリギリまであちこち走り回り、パンパンのクールバッグをまるごと無理やり押し込んだスーツケースと、肩に食い込む食料品で満載のIKEAのバッグを両手に持って、私は新幹線に乗り込んだ。
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当日の朝、待ち合わせ場所に30分前に着くよう移動中(誰と待ち合わせしてもいつも遅れる遅刻魔の私が!!)だった私に、はるさんから少し遅れるかも?と連絡が入った。朝早すぎて、お店が開いてなく、はるさんにプレゼントしたかったお花を買えなかった私はピンとひらめいた。
「じゃあ、私も少し遅れていきますが、いいですか?」
実は、はるさんの大好きな珈琲だけは、時間切れで地元で買うことができず、どうしようか…と悩んでいたところだった。
その足で、待ち合わせの駅から数駅のところにある、素敵なマスターがいる珈琲店へ立ち寄ることにした。そこへ行ったら当初の予定より遅れてしまうから迷っていたけど、はるさんも遅れてくるならちょうどいいかも。
そしたら、珈琲店へ向かう乗り換え駅でたまたま花屋さんを見つけた。
なんて素敵な巡り合わせ!
戻ってくるころにはたぶん、開店しているはず。
無事に珈琲豆を受け取って、いざ!とホームを駆け上がったら、目の前に白い帽子をかぶった見事な富士のお山が。
なんと幸先がよいお知らせなの!
これはもう、今日のデートを天も喜んでくれているに違いない♪
いつでも超!プラス思考の私は、朝からずっと佳き予兆しかない気がして、はるさんに逢える前からすでに身体中が多幸感で満たされていた。
そして小さな車両の中に、片手に提げた紙袋から挽きたての珈琲豆の香りをまき散らしながら駅に戻ってきたら、やっぱり私の読み通り、ちゃんと花屋さんが開いていた!バンザーイ(*^^*)
はるさんにはどんな色の、どんなお花が似合うかなぁ…。
うきうきしながらお花を選ぶ。私は自分が花をもらうことにはあまり興味がないが、あげるとなると途端にテンションがあがって嬉しくなる。
やはり、そこも男性的なのだろうか。花はもらうより選ぶ方が断然楽しい。
悩んだ末、片手におさまるサイズの慎ましやかで可憐なイメージの白いブーケを選び、鎌倉駅へと向かった。
(ちょっと!!会うまでですでに2500文字オーバーだよ…どんだけ、はるさんが好きなのよアタシ(笑))
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ようやく駅にたどり着き、待ち合わせ場所へ走って行くとすでにはるさんが待っていてくれた。あんまり嬉しくって、何から話そうか、どこへ行こうかと頭がぐるぐるしはじめた自分を落ち着かせながら、まずは候補のお店や場所をはるさんに提案してみることに。
ところが、テンションが上がりすぎていて、事前に調べておいたはずのリストが見当たらない。あたふたとタブレットを操作する私を、はるさんはあの聖母のような微笑みで優しく見守ってくれていた。
ようやく候補のお店が決まり、はるさんと並んで鎌倉の街並みを歩く。
うわぁー、完全にデートやんな、これ!
私が男やったら絶対、いま手つないでる!!
謎の変態目線で私なりの嬉しさを全開に表現しながら(心の中でだけね!こんなん口に出してたらキモいやん)、あれこれと話していたらすぐ目的のお店に着いた。
早めのランチにしようとは思っていたのだけれど、この『朝食屋』ってコンセプト、良すぎませんか!?
海辺で待ち合わせして、会えたら朝食を一緒に食べる、という非日常感!!
古都鎌倉、最高です。早くもこの地を選んで良かったと感激してしまう私。
そして私たちのチョイスが、こちら。
散々迷ったのだけど、なんと結局同じもの!!
普段、結構無意識にバランスを取るタイプの私は、同行したひととメニューがかぶると、違うのを選んで少しずつ分けっこしたりするのですが、この日はどうしてもコレが食べたかった!そして大好きなはるさんと同じやん♪ということが無性に嬉しくて、わざわざトレーをずらして個別に撮影しておいたにも関わらず、載せるとなったらやっぱりこの画像を選んでしまうという(笑)
そんなこだわりの朝食セットのお味は…
鯖がめちゃくちゃジューシーでふっくらしていて、最高の焼き上がり!
雑穀米も、ちょっと甘めのお野菜たっぷりのお味噌汁も、しっかりした味付けの小鉢も、全部美味しかった。好きなひとと向かい合って、楽しくおしゃべりしながらいただくごはんは、何よりの贅沢だもん。そりゃ最高に決まっている。
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さて、お腹が満たされた私たちは、海まで歩いて行くことにしました。
駅から思っていたより少し遠かったけど、ふたりでいろんなことを話しながらてくてく歩いていたら、目の前に由比ヶ浜の海岸が。
小さなこどもみたいに、うわぁー!と歓声をあげてしまう私たち。
目の前に広がる海は陽の光を浴びてきらきらしていて、どこまでも穏やかで、思っていた通りの景色がそこにありました。
はるさんと見たかった、海。
そう、心に描いていたのはまさに、こういう風景なんだよ。
陽太と詩織が歩いた海は、まさしくここ、鎌倉の海でした。
今回はるさんとお会いするのに、候補地をみなとみらいか鎌倉かと提案した私ですが、改めて読み返してみたらどちらもすでに物語のなかに登場してたということに、今さら気づく(笑)
由比ヶ浜では言葉を交わすよりことよりもそれぞれが思い思いに、自分の好きなシーンを撮りまくることで必死なふたりがいました。
変に相手に気を遣ったりせず、好きな場所で好きなように時間を過ごす、はるさんとはそんなところも同じで笑えるね。
そして、この物語に出てくる景色もきっと、こんな海だったに違いない。
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散々写真を撮りまくって、ようやく満足した私たちは、座って話をしようと場所を探したのだけれど、ちょうどいいスポットを見つけられず、わりと早々に断念してゆっくりできそうなお店を探します。その辺りはお互いそこそこな年齢だけに!無理はしません(笑)
そうして見つけた一軒のカフェ&バー。
ここのロケーションがもう、最高でした!
なにこのカップルシート。どうしたって盛り上がるしかないシチュエーションやん。
張り切ってこちらへ座ってみたものの妙齢の私たちには少し眩しすぎ(笑)、おとなしく手前の日陰の席へ移動。
喉の渇きを癒やしてくれるのは、オトナのチョイスでこんなやつ。
また一緒!!
私たちはこれまでの空白を埋めるようにグラスが空っぽになってもしゃべり続け、夢中でお互いのいままで、やこれから、の話をたくさんしました。
窓の向こうに広がる海にはいろんなひとたちが思い思いにその空間を楽しむ姿が。
時折話をやめてそちらを見ながら思いを馳せたり、見知らぬカップルがいい感じにはしゃぐのを「シルエットだからいいよね!」と言いながら盗撮(笑)!しあったり、静かに心が満たされていく瞬間を共有していたような気がする。
はるさんとは、本当にナチュラルな自分のままお互い過ごすことができるんだよね。
裸足になって海に入ってゆくカップルを見ながら、ああ私の描いた物語のふたりがそこにいる、それを他でもないはるさんと、こうして見れている!という奇跡のような瞬間を、ただただ身体中で受け止めるので精一杯でした。
ねえ、あんな風に誰かと海を楽しめたらいいね。
ね、ほんとに素敵だね。
お互いの胸にそれぞれの誰かを思い描きながら、静かに流れる時間を味わい尽くす海辺の午後。
出逢って間もないのにこんなにも心を開いて話すことができるのが不思議なくらい、一緒にいて同じ重さの時間を感じることができるひとっているんだなって実感しました。
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そこから、最終目的地のカフェまでは江ノ電に乗ってプチトリップ。
可愛らしいレトロな車両が偶然通りかかったのに写真を撮り損ねて騒いだり(あ、これは私だけだった(笑))、お土産の江ノ電グッズを見たりしたあと、鎌倉観光のメインストリートである小町通りを散策。
左右に次々と美味しそうなものが誘惑してくるこの魔の通りを、食べたい衝動を必死でこらえつつ目だけ!で満喫し、私たちはようやくお目当てのカフェまでたどり着きました。
実は私、ここのカフェのモンブランが日本一やと思てます。
小布施の農園から取り寄せた選りすぐりの栗を贅沢に使い、限られた季節にしか味わえない究極のモンブラン。喫茶店のケーキってこんなもんやろっていう想像をはるかに超えてくるそれは、有名パティシエがつくるスイーツのような派手さや可憐な見た目はないけど、ひとくち食べると栗!どこまでも栗!!一瞬で脳内が栗に浸食されるほどの、たっぷりの存在感。
甘味を抑えて栗皮のあの渋さまで表現しつつも、珈琲と対を成すひと皿の芸術として成り立っているようなそんなモンブランは、一度食べたら麻薬のようにまた食べたい!と熱望してしまうほど魅力的。
食いしん坊を名乗るくらいですから、あちこちで美味しいと言われるものは片っ端から試してきた私。けれど、栗の姿を見かける度に毎シーズン「ああ、今年もあのモンブランが食べたい!」と本気で思わせるのはここだけ。
そんな名店のモンブランに出逢えるかどうか、を今日はあえて確認せずに来ました。
大好きなはるさんにあのモンブランを食べてもらえたらめちゃくちゃ嬉しい、でももし出逢えんかってもまあそれはそれでええやん、そんな相反する気持ちを抱えながら席に着き、メニューを開くと…
あった!ありましたよ!奇跡のモンブラン!!
どーん。
そびえ立つ栗の山。
ああ、天のめぐみよ。今年もありがとう。
今日出逢えたすべてのものに感謝します。
そして、ふたりとも自然と机の上には心象風景のカバー。
ここにいないけど心の中ではきっと同席してたはずの、Kojiさん。
珈琲とケーキにブックカバーを添えて、写真を撮る、撮る、撮りまくる(笑)
結局最初から最後まで、私たち同じものばっかり食べてたね、はるさん。
ひとと同じものを頼まない私としては、こんなの相当珍しいよ。そしてそれが不思議と心地良いひとも、そうはいない。一緒に過ごせた時間が心地良くて、はるさんとはずっと優しい波に揺られているような気持ちでいられたよ。
ありがとう。出逢ってくれて。
noteの海で出逢えた私たちは、こうして本当の世界でも顔を合わせて、言葉を交わして、お互いに触れることができたよね。
ここにいてくれて、ありがとう。
あなたの照らす光を、これからも感じさせてね。
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お互いにこどもがいて家族がいて、いつでも100%ただの「わたし」だけで生きていくわけにいかない私たち。
現実の世界ではいろいろな葛藤や逡巡、迷わずにいられないあれこれを抱えてはいるけれど。
でも、こうしてひとりとひとりが出逢って話をして、新たな視点に気づいたり励まされたり勇気をもらったり、お互いそっと見守っていることを伝えることで、つながる何かがある。
あの日確かに私たちは深いところでつながっていたね。
言葉にしなくても、伝わるなにか。
言葉にすることで、伝わるなにか。
私はあの日、あなたから大切ななにか、をたくさんもらったよ。
そうして歩いて行く道すがら、出逢える誰かに今度は私が、それをあげられるといいな。あなたのように優しい波で、心地良い温度で、それを伝えることができたら。
心の疵を抱えたまま、それでも一歩ずつ歩いているあなたの姿は、それだけで周りの人に足を踏み出す勇気を与えてくれているんだと思う。
あなたを取り巻くひとたちが優しいのは、あなた自身が優しいからだよ。
いつの日かまた、あのしあわせなふたりに逢えますように。
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はるさんとこんな風に過ごした一日を振り返ってみたら、ふいに昔よく聴いた好きだった曲を思い出した。
きょうもいちにち だいすきだったあなたと
すごせたわたしは とてもうれしそう
この曲のシチュエーションは男女の恋を描いたものだけれど、誰かと同じ景色を見て同じものを食べて同じ時間を過ごすことのできるしあわせは、性別なんて関係なく恋をしたことのあるひとならきっと誰もが頷けるはず。
想いを伝えて、好きなひとに逢いに行く。
とてもシンプルだけど、やらないでいると難しく感じること。
オトナになると、いつの間にかできないと思い込んでしまうこと。
その枠を外せた私は、嬉しいことに毎日を楽しく生きることができている。
私は、これからもそういうしあわせをぐいぐいと、自らの手でつかまえていきたい。
noteの海でも。現実の世界でも。
サポートというかたちの愛が嬉しいです。素直に受け取って、大切なひとや届けたい気持ちのために、循環させてもらいますね。読んでくださったあなたに、幸ありますよう。