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チャコさんとチョコさん
わたしには母がふたり、いる。
産みの母がチャコさん、義理の母がチョコさんだ。
名前がたったひと文字違うだけなのだが、それぞれのキャラクターはまるっきり、かけ離れている。
チャコさんは、一見ニコニコした普通のおばさんなのだが、その考え方は常人には理解しがたいほど、ぶっ飛んでいる。
チョコさんは、一見フワフワした普通のおばさんなのだが、その行動は誰にも予測などできないほど、ぶっ飛んでいる。
ふたりを見ていると、どちらも優劣つけ難い、なかなかのぶっ飛びようなのだ。
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幼少の頃より「ぶっ飛んだ母ちゃん」に育てられてきたわたしは、せめて自分だけでも普通の人であろうと必死だった。できるだけ、目立たないよう、みんなと同じように、世間一般とか、いわゆる常識と呼ばれるもの、に従って粛々と生きたかった。それはもう、ものすごい努力を重ねて、いたって普通に見えるよう、なんとか日常を取り繕った。
今思えば、完全に無駄な努力である。
だってわたしの、父はヨウジ、母はチャコさんなのだから。
「普通」であれる、わけがない。
莫大な徒労の日々を経て、わたしは学んだ。
「普通」になんて、なれないのだ。
だってわたしは「普通じゃない家庭」に育ってしまったんだから。
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そうしていつしか大人になり、思いがけず新しい家族ができることになり、少しドキドキしながら、いたって「普通の家庭」だと思って足を踏み入れた夫の実家には、わたしの想像をはるかに超えてくる、チョコさんというひとがいた。
どこんちも、オカンというのは、みんなヤバい存在なのだ!
「普通の家庭」なんて、どこにもありはしない。
それに気づいた時、なんだかするりと気が楽になった。
そんなわたしもやがて母になり、毎日こどもと接するうちにいつのまにかまた、染み付いた古い癖でなんとなくいっぱしの「普通の良い母親」であろうとしていた。
夫を支え、家庭を守り、家事をこなし、こどもの話にちゃんと耳を傾け、いつも笑顔で、優しく、おおらかな存在で…
あれるわけがない。
そう、世の中の母ちゃんはみんな、それなりにヤバい生き物なのだ。それはもう、仕方がないことなのだ。だってにんげんだもの。赤ちゃんと一緒に、だんだん母ちゃんとして育っていくものなのだ。
年月を重ね、ペーペーの新米からそこそこの中堅オカン、くらいのポジションへと進化してきた今、やっと母親としての核、みたいなものがわたしにも備わってきたような気がする。
そっか、わたしもなかなかの、ヤバいオカンになりつつあるんだ。
そう思ったらなんだか無性にワクワクしてきた。
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