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ヌック管水腫物語前編・オランダの遅さ

ここ2年ほどから右鼠蹊部に変なしこりが出たり入ったりして、そこの痛みが顕著になってきた。位置的にも子宮や卵巣などに近いことからちょっと心配になりコロナ規制が少し落ち着いた2021年に最初の検査を申し込んだ。
場所は当時住んでいたユトレヒトの大病院。
家からも近く自転車で行った。

検査は二つ、子宮内のエコーと外側からのエコー。

んー、何も無いわねー

両方の医者から言われ、家庭医にもその報告がされて次なる手としてなぜかフィジオセラピーへまわされた。
素人目から見ても鼠蹊部にあるしこりはフィジオでは治らないのはわかるのに、これはきっと腸が硬くなっていたりするかもしれないから水をよく飲んで周りの筋肉を動かしてみましょう!と腸周りの筋肉をやわらかくする体操を教えてもらった。

二週間後にまたそのフィジオへ行くが、その体操でしこりは全く変わらないのはいうまでもなく、かろうじて変わったのは排便が良くなったくらいだろう。
アムステルダムへ引っ越すこともありフィジオ通いはそこで辞めた。

引っ越しのバタバタもあり身体が疲れてきた頃にまたしこりが酷く痛み始めた。
痛みが酷い時はベッドに横になっていても痛くて寝ていられないほど。これはユトレヒトの時も何度かすでに経験して一人悶絶していた。

さすがにアムステルダムという大都市ならこの原因を見つけてくれるはず!と引っ越し先の家庭医に相談して近所の大病院へまわしてもらった。
検査はまたユトレヒトと同じ二つ。

んー、何もないねー

結果まで同じだった。

何もないはずない。痛いし、現に手で触ってわかるんですよ?
でもこれ厄介なのが触れるほどわかる時と萎んで全くわからない時の差がものすごく激しい。
だからエコーに映らないのもありえるということ。

それでも訴えてみるが何も異常ないからと言われその次の処置をしてもらえなかった。

そうこうして仕事、健康、諸事情が立て込んであっという間に一年が過ぎて2023年の夏がやってきた。
三年半ぶりに日本へやっと帰ったらこのしこりが激しく腫れて激痛が続いた。丁度子宮がんの検査で産婦人科へ行った際に診てもらうが異常はないという。しかしその先生が近くの外科医に紹介状を書いてくれ、その足で訪ねたらすぐエコーをかけて水腫を発見してくれた。

何かあるので大病院に紹介状書くから行ってください。

エコーにはっきり映る黒い楕円形を見てびっくりした。幸運にも翌日の外来ですぐに外科の先生に診てもらうことができ、エコー画像と先生自らエコーをかけて確認したことで、ヌック管水腫ではないかと診断された。

ヌック管水腫とは、鼠径部(足の付け根)にあるヌック管に液体がたまる病気で、女性の病気です。

男性の場合の精索水腫(精索水瘤)に相当します。
1691年にNuck(ヌック)が最初に報告したので、nuck管水腫と呼ばれています。
鼠径ヘルニアの腸管が脱出する部分に、液体が溜まった袋ができていると考えると理解しやすいです。

https://saitamageka.com/nuck/

聞き慣れないヌック管水腫という言葉に聞き直したほどですが、鼠蹊ヘルニアではないかと知り合いに言われており、やはりヘルニアと似たような種類であることは先生も言っていた。

ヌック管とは、胎児期において、女性の鼠径部にある管状の構造物のことです。

通常は妊娠7ヶ月頃に閉鎖します。
しかし、ヌック管が閉鎖されないまま残ることがあり、そこに液体が溜まってしまうことがヌック管水腫の原因です。

同上

私の場合はこの胎児の時に閉鎖しなかったパターンかと思う。というのも高校の時にやはり同じように膨らみがあって一度検査を受けたが痛みがなければ放置して大丈夫とのことだったからだ。
それからすっかり忘れていたがこの歳になって急に出てきたヌック管。
体重増加もあるのかもしれない。

とにかくお腹に力を入れたら負荷をかけるなと医師から言われ、かつて教えてもらったフィジオなどは絶対にやってはいけないやつとなった。
ダイエットもヌック管が無くならないと出来ない。

誰にでもあるヌック管ということがわかったが実際それを知っている人はほとんどいないと思われる身体の部位を治すことになった。
この水腫を完治させるには手術以外なく、私は選択の余地なく全身麻酔で腹部切開ということ。色んな情報をインターネットで読んで腹腔鏡手術で簡単にできて日帰りもある👍なんてのがあったのに、そんなものは一ミリも提示されることはなかった。

手術かぁ…

人生で初めての体験で、しかも聞き慣れない病名で不安は募った。しかし術式はヘルニアと同じようなものと言われ簡単だから難しいものではないと言われる。いや、ヘルニアの術式とか言われてもわからんから。

とりあえず一旦日本での手術は保留にしてオランダへ持って帰ることに。医師に英語で紹介状を書いてもらい、九月頭にアムステルダムへ戻って家庭医にまた相談した。

すると今度はエコー専門医にまわされ、そこで再度ヌック管のエコー画像を撮ることに。
大病院では見つからなかったものがここでは一発で見つかった。

小さいけどあるね!

知ってるわ
そもそもなんで最初からここに送ってくれんの?
というか、もうこの段階は日本で終わってるんだから次の外科医との面談とか手術への手続きしようよ!
とやきもきしながらエコー画像が送られたアムステルダムの大病院からの連絡を待てども全く来ない。その間に私のヌック管は腫れたり引いたりと痛みを伴いながら頻繁に苦しみを与えてくる。
痺れを切らして十月に大病院へ連絡を取ると、外科医との面談は12月中旬、そこから手術まで8〜9ヶ月かかると言われた。
じょーだんじゃない。
すでにこの2年検査もして何もないと言われ続けてさらにまた一年待つことは出来ない!
日本の病院は今予約入れれば12月中旬に手術ができると言われている。
これまでのノロノロ診断とフィジオなどにまわすオランダの医療不信から日本での手術を即決した。

そこからは早かった。
母に頼んで日本の病院と手術を決める際にビデオ電話で対応してもらったり(深夜3時起き)、飛行機の予約をしたり日本へ帰る準備を着々と進めた。
オランダの医療はレベルは高いし信頼できる、海外からも患者が来るほど安全だから、飛行機代もったいないからオランダでやりなよ!と推していた彼だったが、手術が一年後とわかった瞬間に日本行きに賛同した。
私だって飛行機という長時間フライトや高額チケットなど身体経済共に負担になることは避けたかった。だから少しあがいてオランダでの可能性を探ったが、なんとなくこれはオランダじゃない方がいいのではという最初のカンが当たって日本行きにしたのは良かったと思っている。

オランダの医療が性質が悪いとか言っているのではなく、とにかく遅いのが問題。
たらい回し問題はよく言われてるのだがこうまでも酷いのかと身をもって体験した。

手術という目的はあまり気が進まないが、痛みから解放されるのと日本で美味しいものを食べて家族に看病してもらえるのは楽しみなので、帰国まで不安と期待の半々で毎日を過ごすことになった。

ヌック管水腫物語後編・日本で手術へ続く

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