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【小説】エレクトロ・Escape (3話)最終話

(1)前回のあらすじ

島を脱出の為(ため)にロボット同士、協力するカリキュ君とステラ君、最初はお互いぎこちない会話であったが時間が経つにつれてお互い心の中で信頼できる親友となっていった
そしてカリキュ君の提案(ていあん)でステラ君の体の中にあるGPSの記録を調べてその記録を参考にして島を脱出する経路(けいろ)を模索(もさく)しようとしている………

(2)究極(きゅうきょく)の選択

GPSを調べ終えたカリキュ君はそのGPSに記録されている場所を上着に入っているメモ帳に書いていた
本当にどうでもいい話だが、カリキュ君の字はお世辞(せじ)にも読めるものではない…
そしてメモを書き終えるとカリキュ君は自分で書いたメモを見ながらこうつぶやいた

カリキュ「…うん!」

それに対してステラ君はこう聞き返した

ステラ「どう?大丈夫(だいじょうぶ)そう…?」

カリキュ「うん、少し時間は掛(か)かりそうだけどボートさえ用意できれば帰れれるよ!」

それを聞いたステラ君は安心したが、それとは反対に不安な気持ちもこみ上げてきた…

そのあとカリキュ君はこの島にある限られた材料の中から長距離を移動ができるほど丈夫(じょうぶ)な材料を集めるため素材を探しに島中をまわった
最初はカリキュ君1人で探していたが、ある程度動けるまで回復したステラ君も材料を集めるのに一緒に探すようになった。
朝は一緒に材料を探して、日が落ちてからは日替わり定食みたいに焼き魚を食べてお互い馬鹿な話をして盛り上がって、という日常を送っていた

それから3日後

なんとか完成したようだ
やはり、限られた場所にある素材だけでは思った通りの物はできない…

カリキュ(心の声)「よし、なんとかできた。でもこれ以上の物を作りたかったんだけどなぁ…、これで大丈夫だといいけど…」

そこには限られた素材の中から組み立てて作ったボートができていた
見た目としては中古ショップで売られてそうな継(つ)ぎ接(は)ぎ修理されたボートとあまり変わりない見た目だった
カリキュ君の深く物事を考えてしまう性格ゆえに、そう思っている様だがカリキュ君は不安であった…
今の時刻的には大体夜の7時ぐらいだったので空には星が見えている頃であった

カリキュ(心の声)「この感じだと明日の朝焼けふらいに出発かな」

一方ステラ君はこの3日間カリキュ君のお手伝いとしてボートの材料になりそうな素材を集めてで来てくれたり、ボートの中で食べる食料の準備をしてくれた

ステラ「どう…完成した…?」

カリキュ「不安なところはあるけど…、完成したよ」

時間的にも今日は早く寝て明日に備えるべく寝ることにした
カリキュ君は明日のこともあるし今まで休憩をあまり取らずにほぼノンストップで動いていたこともあるので考える間もなく地面に横たわった

カリキュ(心の声)「はぁ…星が綺麗だな…。あいつは今、あの世で何をしているのだろう…、天国は宇宙を越えた先にあると本では言われてたけど本当にあるのかな…、会いたいよ…会いたいよ…、リクイル…。」

カリキュ君は目をつぶりながらそう思った
昔、弟(リクイル)とプリンを一緒に作ってカラメルソースを茶色の油絵具と間違えて味覚が死にかけたという、今となっては良い思い出を思い返しながら寝た。

そして翌朝

カリキュ(心の声)「もう朝か…、今日の天気も問題なさそうかな」

幸運な事にカリキュ君がこの島に来てからは一度も空が曇るような事がなかった絶景の空だった

カリキュ「よいしょっと…」

ステラ君が起きるまでの間カリキュ君はボートを海辺の方に運んで行ったり出発の準備をしていた

ステラ「むにゃむにゃ…ん?」

カリキュ(心の声)「うん、起きたみたい、さてどうするものか…、2度寝すると面倒くさい事になるし、起こしにいってもいいけどいい年した子をわざわざ起こしに行くのも…でもこの島に居るのは僕とステラ君だけだし起こしに行くか…いやだめだ…いやでも…」

本当にしょうもないことで悩んでいるカリキュ君だったが、そうこう考えている間にステラ君は起床(きしょう)した。

カリキュ「えっと…行ける準備ができたら言ってね」

ステラ「もう大丈夫だよ!」

カリキュ「うん、、それじゃあ行こうか」

やはり他人とのコミュニケーションが苦手なカリキュ君…、会話が少しぎこちない部分もあるが、心の中では意思疎通(いしそつう)ができている感じだ

場面は変わり2人はボートのある場所、海沿いにやってきた
ちなみにこの場所はカリキュ君が最初に魚を捕った場所である
この場所は地面と海の境目(さかいめ)が滑らかで場所であった為この場所を選んだのであった

カリキュ(心の声)「うぅぅ…、早起きって大変だな…眠たい…」

何だかんだ色々な事を思っているカリキュ君だが、着々と船を出すための準備が整ってきた

カリキュ「一応いつでも行ける感じだけど忘れ物とかないかな…?」

ステラ「うん…もし何か忘れたらまたどこかで新しいのを買うから大丈夫」

なんとも楽観的な答えだった、正直ステラ君は少し天然なところもあって構文的(こうぶんてき)には少し引っかかる様な言葉遣い(ことばづかい)だったが、カリキュ君にとってはすんなりと言葉の意味を理解していた

カリキュ(心の声)「えへへ…やっぱり一緒に居てくれるだけで毎日が楽しかったな…今まで毎日学校に行って帰ってきてからは家でただゴロゴロしていた生活だったけど、この島にきてからは今までの生活に戻りたくて少し寂しい思いをしたけど、ステラ君と出会ってから…本当に理想に描いた様な生活だったな…」

カリキュ君は心の中で帰れれる事に対しての喜びもあったら、それとは裏側にこの生活が終わることに対しての虚しさが湧いてきた
だがそんな事を思っていたらここまで来たのに前に進めなくなると思ったカリキュ君はそんな迷いも断ち切ってボートに乗ることにした
それに続いてステラ君もボートに乗ったがここである異変が起きていることに2人は気づいた

カリキュ(心の声)「ヘッ!?明らかに浮力(ふりょく)が無さすぎてボートが沈むんだけど…」

状況は突然絶望的な状況になって、なんと2人分の体重では完全に浮ききれない状態であった

カリキュ(心の声)「まずい事になってしまった…、やっとこそ島中を探しまくってギリギリ作れたボートなのに…もうこれ以上の物は作れないよぉ…」

致命的すぎるアクシデントに当たってしまった2人であったが、このままだと全てを失ってしまうと思ったカリキュ君はお互いの事を思ってステラ君にこう言った

カリキュ「ステラ君本当にごめん…僕、一緒に行きたかったけど無理みたい…。だから1人で…このボートを使ってこの島を脱出してくれない…」

(3)ありがとう…

絶望的な状況だったが、試作の段階では1人分の体重なら十分安全に乗れるので、カリキュ君の考えとしてはステラ君だけ島を脱出させて自分だけこの島に残ろうとしているのであった…
それを聞いたステラ君は即答でこう答えた

ステラ「嫌だよ…僕が島に残るからカリキュ君が行ってよ…」

この状況で全然声を出さなかったステラ君だったが
本音をぶつけるようにそう言ってきた
それに対してそう答えると思っていたカリキュ君はなんとか説得するべくこう話した

カリキュ「気持ちは良く分かるし、君がそう思うのも無理はないと思うけど…、この島に来てから今まで支えてきてくれたのは全てステラ君のおかげなんだよ、少し臭い話だけど君が居てくれたからこそ、ここまでやってこれたんだよ…、ありがとう。」

寂しいセリフだが、今まで支えてきてくれたステラ君に対してのお礼の意味も込めて話した
この話をしている途中ステラ君は目から涙がポロポロと流れたいた…
そして続けてカリキュ君は付け足しにこう話した

カリキュ「今まで人生で辛い事が沢山(たくさん)あったと思うけど、今まで苦労した分、幸せになってね…」

そう言うとカリキュ君はまた森の中に帰って行こうとした
戻る途中ステラ君が何かを言っている様だったがステラ君は振り返ろうとは思わなかった…
心の中では1度振り返ってしまうと心の弱いところが出てしまって別れることができなくなってしまうと思ったのと、ステラ君の悲しんでいる姿を見たくなかったのもあった…
最後に年上として何かしてあげたかったのもあるがおよそ3年前、弟にしてもらった優しさを誰かにしてあげたかったのもあった…

カリキュ(心の声)「さようなら…ステラ君…。」

(4)あと少しだけの間待っててね

ステラ君と別れたカリキュ君は少し悲しい表情をしながら戻っていた…
でも少しだけ嬉しい気持ちも湧いてきた

カリキュ(心の声)「リクイル…今あの世で僕の事を見ているのかな…、結果的にはこうするしかなかったけど、これで良かったんだよ…。」

ここでおよそ2年前にカリキュ君とその弟であるリクイル君に何があったのかについて簡単に説明しましょう。

一見、この世界では平和で誰もが充実した世の中に見えるが、数年前まではかなり荒れ果てた事が当たり前のようにあった
その1つが常に進化し続ける機械学が原因で起こっていた問題、人間とロボットの関係問題であった…
本来は人間が機械を作り、命令させてそれを機械質が有無(うむ)を言わず働くのが昔までの待遇(たいぐう)だったが、技術の進歩により、ほぼ人間の感情を持った人形のの登場により「人間と同じ感情を持つロボットの上下関係は平等」という言葉が掲(かか)げられ、様々な政治家達(せいじかたち)もそれに賛同(さんどう)してお互い平等な関係で支えられる関係になる…、と思われていたが…
現実的なそう甘くはなかった、
先程も述べた通りその意見に賛成する人も居たが反対する人も居た
賛成派と反対派の割合は賛成派が4割、反対派が6割ぐらいだった
結論的に述べると、ほぼ戦争になりかけるぐらい激しい争いになった…
そしてカリキュ君達、人の感情を持つロボット達は平和な世界を求めて賛成派の人たちと共に訴え続けた
賛成派達は決して戦争をするつもりは全く無くてあくまで言葉の解決を目的として動いていたが反対派の思考があまりにも過激な奴らばっかりで特に残虐非道(ざんぎゃくひどう)だと思う行動としてカリキュ君達、ロボットが視界に入り次第、問答無用(もんどうむよう)で殺害しているのだ…
そしてその手先はカリキュ君達が住んでいる街にまで迫ってきた
このままだとこの町周辺に住んでいるロボ達が危ないと思ったカリキュ君の弟であるリクイル君は捨て身の行動に出ようとしていた…


その前にリクイルがどんな人物なのかについて説明すると、兄のカリキュ君が内向的(ないこうてき)で知的な性格であるのに対し、リクイル君はあまり周りからは信頼されていない部分もあるけど頼りになって人思いな性格であった
そして兄との深い絆で結ばれているほどお互いを信じて共に笑い会える関係であったので兄のカリキュ君からは生前まで「イル」と呼ばれていた

説明が終わったところで話を戻すとある日の夜2人は秘密裏(ひみつり)にこの様な会話をした

カリキュ「ねぇー?イル、話があるってどんな話?」

リクイル「カリキュ…、言いにくいんだけどもう奴らはすぐそこまで来ているらしいんだよ、もしかすると明日には奴らが僕たちを殺しにやってくるかもしれないから今すぐ逃げるべきだと思っているんだけど、この町の子に訳を話して一緒に逃げてくれないか?」

カリキュ「うん、イルがそう言うのならその通りに従うけど…逃げてる途中で見つかったりしないよね…」

リクイル「大丈夫だよ、何故なら僕があいつらの囮(おとり)になるから、その間に避難できればなんの問題もないよ!…まあでも囮という名の逃走経路の確保だけどw、さぁ今のうちに行動に移そ」

カリキュ「うん、分かった。避難が終わったら携帯でそっちに連絡するからそのあと合流しようね」

リクイル「よし、僕も頑張るからそっちも無理をしない程度に頑張ってきてね!」

そのあとカリキュ君は無事に町にいた子達を連れて避難することができた、幸運にも町にいた子達の多くは予め避難していた為、およそ15人程度の規模で避難することができた
しかし、避難を終えたカリキュ君が報告しようと連絡しても返信が帰ってくることはなかった…
その時はまだリクイル君が忙しいだけだと思っていたが…1ヶ月後原型をとどめない程に体がバラバラにされて死んでいるリクイル君の死体が発見された…
それを聞いたカリキュ君はショックでしばらく何もできなくなるほど無気力状態になってしまった、その時救った子達からは「命の恩人」だと言われていたがそんな言葉が頭に入って来ないほど心が沈んでしまった
せめてカリキュ君の心の傷が深くならないように母親がカリキュ君に見せないようにひっそりと遺体を埋葬した
それ以来、カリキュ君はあの時、もう少し慎重になっていれば弟は死なずに済んだと思っている…
そのあとやっと国が動いて反対派の人たちを取り締まるようになり、次第に反対派の勢力は落ち着いて今に至る。

話は今に戻り、何故カリキュ君はあそこまでしてステラ君を助けたのかは心のどこかで自分の身を犠牲にしてまでの助けてくれた弟へのリスペクトの意味を込めた行動だったのかもしれない…。
彼の表情としても満足そうな顔であった

そのあと12分ぐらい経っただろうか…、カリキュ君は再び元の場所に戻り、朝日にあたりながらほのぼのしていた
その時、なんとステラ君が引き返してきた
ステラ君が引き返してくるや否やカリキュ君はこう聞いた

カリキュ「えっ!?戻ってきたの?」

それに対しステラ君は急いで戻ってくたこともあって息を切らしながら答えた

ステラ「ごめん…どうしても…僕……」

どうやらステラ君はカリキュ君と別れたあと1人で行くことができずに考えた挙げ句、どうしてもカリキュ君に行ってほしいと考えてしまって引き返してきたのであった。
そのあと2人はもう1度深く相談することにした。
相談している中でやっぱりカリキュ君の意見としてはステラ君に行ってもらいたいという考えだったが、ステラ君の意見を聞く感じどうしてもカリキュ君に行ってほしいと言っていたのでカリキュ君はある考えを思いつき彼の意見を承諾することにした

カリキュ「うん、分かった…。僕が島を出る事で良いのならそうするけど、本当にそれで良いの?」

それに対してステラ君は無言で頷(うなず)いた
そして、更にカリキュ君は続けるようにある考えの話をした

カリキュ「あと…その、…いつか、迎えに来るよ。うんー…」

あまり言葉としてまとまらなかったまま話したので少し不格好な喋り方になってしまったが、ある考えというのは…
まずカリキュ君が無事に帰還してから、再びテレポーテーションの装置ができる装置の開発を続けて、欠点であった往復が不可能な部分を往復できるようにして再びこの島に来るという考えであった

ステラ「うん…、でも無理はしないで…」

ステラ君は少し心配そうに答えた
その問いかけに対してカリキュ君はちょっとだけ微笑んだ

数分後2人は再びボートのある海沿いにやってきた

カリキュ「色々とありがとう…!」

ステラ「…。」

本当に最後のお別れとしてカリキュ君は複雑な感謝の気持ちを込めて言葉を交わしたのに対しステラ君は少し涙をこぼしながら感情をグッと抑えていた…。
でも心が綺麗だからこそ最後の最後に無言でお別れするのは後悔すると思ったステラ君は感情を隠さずに本音だけで喋った

ステラ「カリキュ君…。もしまた会える様な事があれば…友達になってく…」

ステラ君は泣きながらこう喋っていたこともあって最後ら辺はすすり泣きで上手く喋れなかったが、その返答としてカリキュ君は

カリキュ「もう僕たちは、友達を超えた親友だよ!

と答えた。
それを聞いたステラ君はその嬉しさと感動のあまり号泣(ごうきゅう)してしまったが、それを包み込むようにカリキュ君はステラ君をハグをした

カリキュ(心の声)「ありがとう…。絶対に帰って来るよ…」

カリキュ君は心の中でそう思いこの島をあとにした…

2人はいつの日かまた再会できると信じて青空を見上げている


エレクトロ・Escape 『完結』



(5)エピローグ

あのあとカリキュ君は無事におよそ2週間の時を経て帰還することができた。
帰還したあと、周りから色々騒がれていたが元々カリキュ君の人脈が少ないこともありそれほど大きな自体にはならずに済んだ

あれから3ヶ月後、春もすっかり終わりすっかり夏の時期になった夜にはカエルが鳴くその夜、カリキュ君はあの約束でもあったテレポーテーションの装置を完全に完成させてステラ君の居たあの島に行くことにした。

カリキュ(心の声)「ステラ君…元気かな」

不安とワクワク感を持ったままカリキュ君はあの島に来た

カリキュ「あの時は、ありがとう…。次こそ一緒に帰ろう…」

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