紙コップからどこまで行けるか
羽田空港から島根県の出雲縁結び空港へと向かう機内。
帰省と、ありがたい事に仕事も重なり約3ヶ月振りの島根。
[3ヶ月]と聞くとスパンが短いように感じますが、少し前までは仕事の都合で1ヶ月に1度のペースだったのでそれから比べると飛行機に乗るのも久しぶりです。
当時はコロナ禍で空港ロビーも閑散としていて寂しい印象でしたが、手荷物預けから保安検査場の通過、搭乗までが一息でできてしまうくらい。は大袈裟ですが、とてもスムーズでした。
機内も空席ばかりで搭乗者を数えた方が早い程。
そんなほんの数年前の情景を思い出しながら、ふと目をやると満席の機内。
仕事に観光、出会いに別れ。
様々な背景を持った人たちが放つエネルギーに押されつつ、私も島根の空が待ち遠しくなった。
いい旅になりますように。
こもった様な電子音と共にベルト着用サインが解除される。
羽田から出雲までのフライト時間は1時間25分。
この短い時間にドリンク提供等のサービスをするCAさんの手際の良さは毎回清々しい。いつもありがとうございます。
その清々しさと一緒に手渡されたのが鮮やかな紙コップでした。
春の太陽の暖かさのような色合いと、力強い筆の流れがしっかりとわかるライン。
QRコードを読み取ると[異彩を、放て。]をミッションに掲げるアートエージェンシー[HERALBONY(ヘラルボニー)]とのコラボで生まれたものとのこと。今、写真を見返すだけでも胸が高鳴るデザイン。
なんて美しいんだろう。
調べるとHERALBONYのアートを手掛けるのは知的障害をもつ方たちだそう。
夢中になって紙コップから広がる世界に入っていきました。
ここまで夢中になったのにはこのアートの素晴らしさと、もう一つ理由があります。
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20代半ばでしていた日本一周の旅の途中。
風に流されるままの雨粒にぶつかられながら私は鹿児島県にいました。
事前に調べて気になっていた[しょうぶ学園]。
鹿児島駅からバスで30分程の場所にある施設には知的障がいをもつ利用者さんが手掛けたアートが展示されたギャラリーや、パンや焼き菓子が買えるショップ、レストランがあるそう。HPから伝わる緑が溢れる豊かな村のような雰囲気にすっかり惹かれていました。
特に気になっていたのが施設の職員さんの「縫いたいように縫ってごらん」という想いから始まった
[nui project]
利用者さんが糸と布を使って自由に縫い進めて作られていくアートたち。
同じ場所を何度も何度も重ねて縫う事で大きな隆起ができ、布が寄り合って飛び出しそうになっているもの。
大胆な色使いや大きな絵柄もあれば、信じられないくらい細かく繰り返されているものもある。
ひとつひとつの作品の素晴らしさは言葉にしつくせない。
でも、どの作品からも感じた事がありました。
それは、一針一針へのまなざし。
目の前の一縫いを真っ直ぐ見つめていることが、ひしひしと伝わるエネルギー。
圧倒されて思わずため息が出る。
眩しくて美しすぎて、少し泣きそうになる。
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機内で手渡されたHERALBONYデザインの紙コップに強く惹かれたのは、しょうぶ学園で感じたまなざしを思い出したからかもしれません。
もちろんアートと知的障がいを持つ方の創作、という点だけで全てを同じ括りにするわけではないけれど、きっとキャンバスに向かう真っ直ぐさには通じるものがあったのでは。と、勝手ながら想像を巡らせてみる。
久し振りにしょうぶ学園にも行きたくなったし、岩手に本社を持つHERALBONYは盛岡にアートディレクションを手掛けたホテルがあるし、来年には盛岡の百貨店[川徳]のリニューアルに併せて、以前から出店していたHERALBONYのショップもリニューアルする事になったそうです。カフェやギャラリー、物販が掛け合わさるという事でどんな空間になるのか楽しみです。
このリニューアルに向けたクラウドファンディングに支援しました。
リターンの新しいカフェで使えるコーヒーチケットは有効期限付きだし、盛岡はニューヨークタイムズで「2023年に行くべき52ヵ所」にも選ばれているし、ホテルだって実際に泊まってみて分かる良さも沢山ある。
どうやら行くしかないようです。
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しょうぶ学園で実際に見た作品の写真が無くてすみません。
撮影NGだったか、撮らなかったのかは覚えていないのですがフォルダにありませんでした。
HP等のURL貼っておくので、もしご興味持たれた方はご覧ください。